補助金

農業はAI導入補助金の対象になるか|条件と使えるソフト

公開: 2026年9月11日執筆: 原口優(代表取締役)読了目安: 8分

本記事は2026年9月時点の情報です|この記事は栽培管理や出荷のソフト導入を補助金で行いたい個人農家・農業法人向けです

農業はAI導入補助金の対象になります。個人農家も農業法人も、中小企業の要件を満たせば申請できます。ただしトラクターなどの農業機械は対象外で、この制度が支援するのはソフトウェアの導入です。機械を買いたい場合は別の制度になります。本記事では、対象になる条件と使えるソフトの種類を整理します。

農業はAI導入補助金の対象になります。個人農家も農業法人も、中小企業の要件を満たせば申請できます。ただしトラクターなどの農業機械は対象外で、この制度が支援するのはソフトウェアの導入です。機械を買いたい場合は別の制度になります。本記事では、対象になる条件と使えるソフトの種類を整理します。

この記事は、栽培管理や出荷のソフト導入を補助金で行いたい個人農家・農業法人の方向けです。

※ 2026年9月時点の情報です。公募回ごとに要件が見直されるため、申請前に最新の公募要領をご確認ください。

この記事でわかること

  • 農業が対象になる条件
  • 対象になるソフトと、ならないもの
  • 個人農家と農業法人での違い
  • 農業機械を買いたい場合の代わりの制度

農業が対象になる条件

業種として農業が除外されることはありません。満たすのは規模と、導入するソフトの2点です。

AI導入補助金とは、正式には「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」といい、旧IT導入補助金の後継にあたる制度です。ソフトウェアの導入費用を補助するもので、機械や設備は対象になりません

事務局が公開している申請要件では、業種ごとの資本金と従業員数の基準が示されています。農業は「その他の業種」として扱われるのが一般的です。

個人農家も対象です。法人でなければ申請できないという制度ではありません。ただし直近の確定申告書類が求められるため、就農して間がない場合は書類が揃いません。

注意: 開業1年未満は書類で止まる
確定申告を一度も行っていないと、事業の実態を示す書類がありません。新規就農の直後は、書類要件で止まることを前提に計画してください。

農業で対象になるソフト3分野

栽培管理・出荷販売・経営会計の3つが中心です。いずれも記録と集計を扱います。

農業で対象になりやすいソフト3分野: 栽培管理は生育記録・作業日誌・圃場ごとの履歴、出荷販売は受注管理・出荷伝票・直売所との連携、経営会計は部門別の収支・作物ごとの原価
農業で対象になりやすいソフト3分野
分野 対象になりやすい例
栽培管理 生育記録、作業日誌、圃場ごとの施肥・防除履歴
出荷・販売 受注管理、出荷伝票の作成、直売所やECとの連携
経営・会計 部門別の収支、作物ごとの原価計算

記録を紙でつけている農家ほど、効果が数字で出せます。作業日誌を手書きし、あとでExcelへ転記している場合、その転記そのものが無くなります。

生育記録は、産地の証明やGAP認証の場面でも使われます。記録を残す作業が、販路の条件を満たす作業と重なります。導入の目的を1つに絞らなくてよいのが、この分野の利点です。

栽培管理ソフトを選ぶときの3つの基準

現場で使えるかどうかが、機能の多さより効きます。

1つ目は、圃場で入力できるかです。事務所に戻ってからまとめて入力する運用だと、紙に書いてから転記する手間が残ります。オフラインで入力できるかを、契約前に確かめてください。

2つ目は、作物と作型に対応しているかです。水稲向けに作られたソフトを施設園芸で使うと、項目が合わずに空欄が並びます。

3つ目は、入力する人が複数いるかです。家族経営でも、作業する人ごとに記録が分かれると集計できません。誰のIDで入力するかを先に決めてください。

私たちが農業法人のご相談を受けたときも、機能を比べて選んだソフトが、現場で電波が届かず使われなくなった例がありました。導入の前に、実際の圃場で試させてもらうのが確実です。

対象にならないもの

農業機械は対象外です。ここが最も誤解される点です。

関連する内容として農業の倉庫投資は建物費NGも公開しています。

対象になるものとならないものの比較: 対象になるのは登録されたソフトの利用料・導入時の初期設定と研修・対象類型でのタブレット・交付決定後に発注したもの。対象にならないのはトラクター等の農業機械・ハウスや倉庫などの建物・自社で作った管理表・交付決定前の発注
対象になる・ならない

トラクター、田植機、コンバイン、選果機。いずれもこの制度では補助されません。ハウスや倉庫といった建物も同様です。

自社で作ったExcelの管理表も対象外です。補助されるのは、事務局に登録された製品だけです。現場で評判のよいソフトでも、登録がなければ1円も出ません。

タブレット端末は、対象ソフトと同時に導入する類型に限って認められます。圃場での入力に使う端末であっても、単体では申請できません。

農業機械を買いたい場合

別の制度を検討してください。設備投資を対象とする補助金があります。

ものづくり補助金(現在は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金)は、機械装置を対象に含みます。精米機や選果ラインなど、専用設備の導入で使われています。

農業での採択事例はものづくり補助金は農業で使える?にまとめています。汎用品は対象外という線引きがあるため、機種選びの前に確認してください。

自社が対象になるか、3分で判定できます。

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補助額と自己負担の目安

補助率は1/2以内が基本です。全額が出る制度ではありません。

50万円の栽培管理ソフトなら、補助されるのは25万円で、残り25万円が自己負担になります。消費税は補助の対象外のため、実際に支払う額はさらに増えます。

項目 金額の例
ソフト利用料(税抜) 50万円
補助額(補助率1/2) 25万円
自己負担(税抜分) 25万円
消費税(自己負担) 5万円
注意: 補助金は後払いです
採択されても、先に全額を支払う必要があります。入金は実績報告の審査が終わってからで、発注から半年以上あくことも珍しくありません。収穫期の入金と重ならないよう、時期を確認してください。

農業は収入の時期が偏る業種です。立て替えの期間に手元資金が薄くなる月を先に洗い出しておくと、無理のない導入時期が見えてきます。

個人農家と農業法人での違い

必要書類が変わります。制度の対象になるかどうかは、どちらも同じです。

項目 個人農家 農業法人
事業の証明 確定申告書の控え 決算書
登記簿謄本 不要 必要
GビズID プライムが必要 プライムが必要
納税証明書 必要 必要

法人成りを予定している場合は、申請の時期に注意が要ります。申請中に法人化すると名義が変わり、手続きをやり直すことになります。

集落営農組織や農事組合法人の場合、法人格の有無で扱いが変わります。自分たちがどの区分に当たるかを、支援事業者に確認してから進めてください

必要書類の詳細はAI導入補助金の必要書類|法人が用意する5点と取得先で確認できます。

申請前に確認する4ステップ

ソフトを先に決めてください。順番を逆にすると手戻りが出ます。

対象か確認する4ステップ: 事業形態を確認する、使いたいソフトの登録を調べる、支援事業者に相談する、GビズIDを取得する
対象か確認する4ステップ
  1. 自分が個人か法人か、要件の区分を確認する
  2. 使いたいソフトが事務局に登録されているか調べる
  3. 登録があれば、そのソフトを扱う支援事業者に相談する
  4. GビズIDプライムを取得する(2〜3週間かかる)

GビズIDだけは今日申請できます。他の準備と並行して進めてください。発行を待つ間に、ソフトの比較と見積の取得が終わります。

私も相談の現場で、申請直前になってGビズIDが未取得だと分かり、公募回を1つ見送った事業者を何度か見てきました。順番の問題で機会を失うのは、もったいない話です。

ここまでの内容が自社に当てはまるか、確認しませんか。

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農繁期を避けて申請する

書類の準備には、まとまった時間が要ります。農業では、これが現実的な制約になります。

事業計画書を書くには、いまの作業時間を把握する必要があります。田植えや収穫の最中に測るのは現実的ではありません。閑散期に測っておき、公募が開いたら提出する段取りが向いています。

注意: 公募期間は短い
公募が開いてから締切まで1か月ほどのことがあります。その期間に書類をゼロから集めるのは困難です。先に準備しておき、公募が開いたら出すだけの状態にしてください。

作業時間の実測は1週間分で足ります。作業日誌をつけるのに毎日何分かかっているかを、ストップウォッチで測るだけです。この数字が事業計画書の説得力を決めます。

測るのは3つで十分です。作業日誌の記入時間、出荷伝票の作成時間、月次の集計にかかる時間。この3つが減れば、導入の効果として説明できます。

家族で分担している場合は、人ごとに測ってください。代表者だけの時間で計算すると、実際の削減量より小さく見積もることになります。配偶者が事務を担っている経営体では、そちらの時間のほうが大きいこともあります。

測った記録は、そのまま計画書の根拠として使えます。手書きのメモで構わないので、日付と時間を残しておいてください。

出荷・販売のソフトで効果が出やすい場面

直売所やECを併用している経営体ほど、導入の効果が数字で出ます。

出荷先が複数あると、どこに何をいくらで出したかの管理が煩雑になります。市場・直売所・ネット販売・契約栽培が混在すると、同じ作物でも単価と伝票の形が変わります。

出荷先 手作業で起きること
市場 伝票の転記と、精算書との突き合わせ
直売所 値付けシールの作成と、売れ残りの回収記録
EC・宅配 注文ごとの送り状作成と、在庫の照合

これらを1つのソフトでまとめると、転記そのものが減ります。事業計画書には「伝票作成に週5時間かかっていたものが2時間になる」のように、削減時間を数字で書いてください。

数字は推計で構いませんが、根拠は書いてください。「直近1か月の伝票枚数から算出」と添えるだけで、審査での見え方が変わります。

経営・会計ソフトは作物別の原価が見える

どの作物が儲かっているかを、感覚ではなく数字で把握できます。

対象になる範囲はAI導入補助金で会計ソフトは対象?で整理しています。

作物ごとに種苗費・肥料費・燃料費・人件費を分けて集計すると、面積あたりの収益が比べられます。作付けの判断材料になるのは、この数字です。

手作業では、資材をまとめ買いした分を作物ごとに按分する作業が発生します。ここが最も時間を取られる部分で、ソフトに任せると按分の計算が自動で終わります

補助金の申請でも、この分野は効果を書きやすい領域です。「月次の集計に8時間かかっていたものが2時間になる」という形で、削減が明確に示せます。

既に会計ソフトを使っている場合は、連携できるかを確認してください。原価管理だけ新しくしても、会計へ手入力で移し替えているなら作業は減りません。いま使っているソフトの名前を伝えて、データを受け渡せるかを聞いてから決めてください。

青色申告の記帳と兼ねられるソフトもあります。申告のための記帳と経営分析が1つにまとまると、期末にまとめて入力する負担が消えます

対象外になりやすい2つのつまずき

発注の時期と、ソフトの登録。この2つで落ちる事業者が最も多くなります。

交付決定より前に発注・契約・支払いをすると、要件を満たしていても対象になりません。「先に導入して、後から申請する」は通りません。

もう1つは、登録されていないソフトを選ぶことです。農業向けの管理ソフトには、地域のJAや農機メーカーが独自に提供しているものもあります。それらが事務局に登録されているとは限りません。

不採択になる理由の全体像はAI導入補助金の不採択理由で整理しています。

自社が補助金の対象になるかどうかは、3分の適性診断(無料・8問)で確かめられます。登録は不要で、その場で点数が出ます。

導入した後に求められること

採択されても、使っていなければ報告が通りません。

実績報告では、契約書・納品書・請求書・振込の控えに加えて、導入したソフトを実際に使っている証拠を求められます。画面の写しや入力の履歴などです。

農業では、繁忙期に入力が止まりがちです。中小企業庁が示す中小企業の定義に当てはまる規模の経営体では、入力を担当する人が限られます。誰がいつ入力するかを決めてから導入してください。

報告書の書き方はAI導入補助金の実績報告の書き方で手順ごとに解説しています。提出期限を過ぎると受給できなくなるため、交付決定の時点で期限を確認しておいてください。

まとめ: ソフトか機械かで、使う制度が変わる

農業がAI導入補助金で失敗する最大の原因は、機械を買おうとして対象外になることです。この制度が支援するのはソフトウェアで、トラクターや選果機は含まれません。

記録と集計をソフトに任せたいなら、この制度が合います。機械を買いたいなら、ものづくり補助金を検討してください。

どちらを使う場合も、GビズIDは共通で必要です。発行に2〜3週間かかるため、制度を決める前に申請しておいて損はありません。

よくある質問

農業はAI導入補助金の対象になりますか?
なります。個人農家も農業法人も、中小企業の要件を満たせば申請できます。
トラクターなどの農業機械は対象ですか?
対象外です。この補助金はソフトウェアの導入を支援する制度です。
個人農家でも申請できますか?
できます。ただし直近の確定申告書類が必要で、開業直後は書類が揃いません。
どんなソフトが使えますか?
栽培管理・出荷販売・経営会計の3分野が中心です。事務局への登録が条件になります。
農業機械を買いたい場合はどうすればよいですか?
ものづくり補助金など、設備投資を対象とする別の制度を検討します。
申請前にまず何をすればよいですか?
GビズIDの取得です。発行に2〜3週間かかり、無いと申請を始められません。

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SUPERVISED BY|この記事の監修者
原口優
原口 優|セブンセンシズ株式会社 代表取締役
大阪・東成区のデジタルマーケティング&AI導入支援会社の代表。IT導入補助金(現・AI導入補助金)の申請支援50社+・採択通過率90%以上(※当社支援実績)。MEO事業「G-ran」運営。AI導入補助金の申請実務・採択ノウハウを毎日発信しています。