ものづくり補助金は農業でも採択事例があり、精米ラインの刷新で売上を2倍にした稲作農家や、ICTによる自動選別で作業負担を86%減らした生産者など、業種を超えた活用が広がっています。対象は倉庫や貯蔵設備だけでなく、環境制御システムや食品加工ラインにも及びます。本記事では、農業の採択事例4パターン、対象になる経費・対象外の経費、3つの申請枠の補助率・上限額を2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。第1回公募の申請受付は2026年8月31日に開始予定です。
この記事でわかること
- 農業の採択事例4パターンと具体的な設備投資の内容
- 売上を2倍にした精米ライン刷新の詳しい事例
- 対象になる経費・対象外になる経費の線引き
- 3つの申請枠の補助率・上限額と申請の流れ
ものづくり補助金は農業の採択事例があるのか
ものづくり補助金は、生産性向上につながる機械装置・システムへの投資を支援する制度で、農業も対象業種に含まれます。製造業向けというイメージを持たれがちですが、実際には稲作・畜産・食品加工まで幅広い採択事例があります。
関連して、事業再構築補助金で農業が使えたのは6次産業化|対象外の境界線もあわせてご確認ください。 関連する内容は、農業機械補助金は4制度|ものづくり補助金では買えない理由で解説しています。
2026年度からは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という名称に変わりました。倉庫関連の投資に絞った内容は農業の倉庫投資は建物費NG|ものづくり補助金の対象は設備費で解説しています。
私たちセブンセンシズ株式会社は、登録支援事業者として補助金の相談を受けています。「農業は対象外だと思っていた」という声を経営者からよく聞きますが、実際には収穫後の加工・選別工程で採択された事例が数多くあります。
中小企業庁が公開した第1回公募要領では、申請受付が2026年8月31日に始まり、締切は2026年9月30日18時と案内されています。中小企業者の判定基準はものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で解説しているので、あわせて確認してください。
農業の採択事例4パターン|精米・環境制御・食品加工・畜産
農業の採択事例は、精米・出荷ライン、環境制御・自動選別、食品加工(6次化)、畜産・資源循環の4パターンに整理できます。同じ設備投資でも、狙う効果は事業内容によって異なります。

中小企業庁の事例紹介ページによると、紫蘇(しそ)の生産・加工を手がける熊本県の企業がICTを活用した圃場管理と収穫後の自動選別システムを導入し、作業負担を86%削減し、作業効率を6.7倍に高めた事例があります。人手に頼っていた選別工程を機械とデータで置き換えた例です。
採択事例をまとめた解説記事では、養鶏農家が卵を使った焼き菓子の製造に乗り出し、大型ミキサー・オーブン・シール機・金属探知機を導入した事例が紹介されています。金属探知機の導入によって検査体制が整い、高級百貨店への販路拡大につながりました。畜産分野では、黒毛牛を飼育する農家が排せつ物の乾燥機を導入し、バイオマス燃料や敷料への再資源化を進めた事例もあります。
同記事では、水田の生育状況を計測するセンサーや、5G通信で自動走行するスマートトラクター、収穫量をカメラで推定するドローン画像認識技術の導入も、スマート農業の採択事例として言及されています。「新しい機械を1台買う」という発想ではなく、圃場のデータを収集する仕組みと、そのデータを使って生産・出荷を判断する仕組みをセットで計画すると、審査で評価されやすい事業計画になります。
精米機を補助金で刷新し売上を2倍にした事例
岐阜県のブランド米生産者は、精米機・色彩センサー・エア吸引式昇降機を含む精米ラインを約3,500万円で刷新し、3年間で売上を2倍に拡大しました。設備投資が品質と販路の両方を押し上げた事例です。
関連して、ものづくり補助金の給与支給総額とは?個人事業主の計算3ステップもあわせてご確認ください。 補助金の活用事例を紹介する記事によると、この生産者は毎年10件以上発生していた品質クレームをほぼゼロにし、超大粒米という新しい商品カテゴリの開発にもつなげています。色彩センサーで異物や着色粒を自動選別できるようになったことが、クレーム減少の直接の要因です。
私も相談の現場で、選別を目視と経験に頼っていて、繁忙期に品質がぶれるという悩みを持つ生産者を見てきました。精米・選果の工程を機械化する投資は、品質のばらつきを抑えると同時に、対外的に説明できる根拠にもなります。機械装置費の考え方そのものは業種を問わず共通するため、ものづくり補助金は製造業でどう使えるのかも参考になります。
汎用品はNG|農業で経費計上できる機械装置の基準
対象になるのは事業計画に紐づく専用の機械装置・システムで、他の用途にも使える汎用のトラクターや農業機械は対象外です。この線引きを誤ると、審査の段階で経費を削られる原因になります。

| 区分 | 対象になる例 | 対象外になる例 |
|---|---|---|
| 機械装置 | 色彩選別機・自動選別システム等 | 他の作業にも使う汎用トラクター |
| システム | 圃場管理・品質検査システムの構築費 | 日常業務で使う汎用パソコン単体 |
| 発注時期 | 交付決定後に発注した経費 | 交付決定前に発注した経費 |
トラクターやビニールハウスなど、他の用途にも使える汎用性の高い設備は対象外です。事業計画で説明する用途に特化した機器かどうかが審査の分かれ目になります。
自社が補助金の対象になるかどうかは、3分の適性診断(無料・8問)で確かめられます。登録は不要で、その場で点数が出ます。
補助率1/2〜2/3|3つの申請枠と上限額の比較
申請枠は3つあり、上限額は2,500万円から最大9,000万円まで幅があります。投資の規模と目的に応じて、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠から選ぶ枠が変わります。
| 申請枠 | 補助率 | 補助上限額 | 実施期間 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 1/2(特例2/3) | 2,500万円(特例3,500万円) | 交付決定から10か月 |
| 新事業進出枠 | 1/2(特例2/3) | 7,000万円(特例9,000万円) | 交付決定から14か月 |
| グローバル枠 | 2/3 | 7,000万円(特例9,000万円) | 交付決定から14か月 |
色彩選別機1台を600万円で導入する場合、補助率1/2なら300万円、特例の2/3が適用されれば400万円が補助される計算です。既存ラインの一部刷新なら革新的新製品・サービス枠が候補になり、加工品の新規販路開拓を伴う投資であれば新事業進出枠のほうが上限額に余裕があります。
海外向けの農産物・加工品を扱う場合は、補助率2/3のグローバル枠も選択肢です。国内向け投資とは補助率の水準が異なるため、輸出計画があるなら先にグローバル枠の対象要件を確認しておくと、枠の選び直しによる手戻りを防げます。
個人農家と農業法人|中小企業者と認められる基準
農業の中小企業者は、資本金3億円以下または従業員300人以下で判定され、小規模事業者は従業員20人以下が目安です。農業法人だけでなく、従業員を雇用する個人農家も対象に含まれます。
| 区分 | 資本金の額 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 中小企業者(農業) | 3億円以下 | 300人以下 |
| 小規模事業者(農業) | — | 20人以下 |
応募時点で常時使用する従業員が1人以上いることが前提条件で、従業員のいない個人農家は全ての申請枠で対象外です。家族経営の場合も、常時雇用の従業員を1人以上確保できているかを先に確認してください。
具体例で考えてみます。出資金2,000万円・従業員15名の農業生産法人を想定します。基準は資本金3億円以下または従業員300人以下です。出資金・従業員数のどちらも基準内のため中小企業者に該当し、従業員20人以下のため小規模事業者向けの優遇措置も対象になります。中小企業者の詳しい考え方はものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で解説しています。
申請受付は8月31日から|準備すべき手続きの順番
第1回公募の申請受付は2026年8月31日に始まり、締切は2026年9月30日18時です。採択はゴールではなく、実績報告を終えて交付額が確定するまでが申請という前提で準備を進める必要があります。

事業計画書の作成には電子申請システム(jGrants)のGビズIDプライムが必須です。取得には郵送で2〜3週間、マイナンバーカードによるオンライン申請なら最短即日〜1週間かかります。何から着手すればよいか迷う場合は、まずGビズIDプライムの取得から始めてください。繁忙期を避けて早めに準備を進めるのが安全策です。
事業計画書では、付加価値額や給与支給総額の伸び率など、数値目標を示す欄があります。過去の生産量・出荷額の記録を手元に用意しておくと、計画書の作成がスムーズに進みます。
農業の申請でつまずきやすい3つの落とし穴
農業でよくある失敗は、汎用設備を対象経費に含めること、従業員0名で申請してしまうこと、交付決定前に発注することの3つです。いずれも準備段階で防げるミスです。
トラクターやビニールハウスなど、他の用途にも使える汎用性の高い設備は対象外です。事業計画の効果に直結しない汎用設備を計上すると、審査で削られる原因になります。設備投資の中身を「誰でも使えるもの」と「この事業計画だからこそ必要なもの」に分けて整理してください。
一人親方に近い形で農業を営む個人事業主が、従業員0名のまま申請しようとする相談も少なくありません。従業員を雇用してから改めて検討する必要があります。申請全体でよくある失敗パターンはAI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策でも整理しているので、あわせて確認してください。
交付決定前の発注も見落とされがちです。色彩選別機や検査システムは納期が長いものも多く、採択発表を待たずに発注してしまう相談を受けたことがあります。設備メーカーとの打ち合わせは早めに進めつつ、正式な発注は交付決定の通知を受け取ってからにしてください。実績報告では、導入した設備が計画どおりに稼働しているかを示す証憑も求められるため、稼働記録は早い段階から残す運用にしておくと安心です。
まとめ: 専用設備への投資が採択の鍵
ものづくり補助金は、精米・環境制御・食品加工・畜産まで、農業の幅広い分野で採択事例がある制度です。岐阜県のブランド米生産者は精米ラインの刷新で売上を2倍にし、熊本県の紫蘇生産者はICT自動選別で作業負担を86%削減しました。汎用設備ではなく、事業計画に紐づく専用の機械装置に投資を絞ることが採択の鍵になります。
申請枠は革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つで、上限額は2,500万円から最大9,000万円まで幅があります。第1回公募の申請受付は2026年8月31日に始まり、締切は9月30日18時です。投資の規模に合う枠を早めに見極めてください。
「農業は対象外」という思い込みのままでは、使える投資機会を見逃してしまいます。自社の設備投資がどの枠に合うか、対象経費の切り分けに迷う場合は無料相談で状況を伝えてください。私たちは登録支援事業者として、対象ツールの選定から採択後の実績報告まで一貫して支援しています。
