不動産会社がAI導入補助金で用意する提出書類は、法人で7点・個人事業主で6点が目安です。宅建業の免許証や宅建士証は提出不要で、建設業許可などと同じく別の制度として扱われます。複数店舗を構えている場合は、労働者名簿の集計方法で迷う担当者が多くいます。本記事では、書類の一覧と揃える順番、差し戻されやすい不備を整理します。
※ 2026年9月時点の情報です。必要書類は公募回ごとに見直されるため、申請前に最新の公募要領をご確認ください。
この記事でわかること
- 法人・個人事業主それぞれの必要書類
- 宅建業の免許証・宅建士証が対象外である理由
- 複数店舗がある場合の書類の扱い
- 差し戻されやすい不備と見積書の区分
当社は登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。本記事の内容も、その支援の現場で実際に不動産会社から受けた相談をもとにまとめています。
提出書類の内訳|法人7点・個人事業主6点
法人と個人事業主で、揃えるものが変わります。共通するのはGビズIDと見積書、事業計画書です。
事務局が公開している制度の案内では、申請に必要な提出物が枠ごとに示されています。不動産会社の場合、通常枠での申請が中心になります。
| 書類 | 法人 | 個人事業主 | 取得先 |
|---|---|---|---|
| GビズIDプライム | ○ | ○ | オンライン申請 |
| 履歴事項全部証明書(登記簿謄本) | ○ | — | 法務局 |
| 納税証明書 | ○ | ○ | 税務署 |
| 直近の決算書 | ○ | — | 自社 |
| 確定申告書の控え | — | ○ | 自社 |
| 見積書 | ○ | ○ | 支援事業者 |
| 事業計画書 | ○ | ○ | 自社で作成 |
| 労働者名簿 | ○ | ○ | 自社 |
| 賃上げの表明書 | 任意 | 任意 | 自社 |
| 加点用の認定書 | 任意 | 任意 | 経済産業局など |
宅地建物取引業の免許証は、原則として提出しません。免許の更新手続きと補助金の申請は、まったく別の制度です。ここを混同して、免許証の写しを探し回る担当者がいます。
宅建業の免許証・宅建士証は提出しません
宅建業の許可書類が無くても、申請そのものは進められます。必要なのは事業の実態を示す書類です。
建設業のAI導入補助金でも、建設業許可証は提出しないのが原則です。業種を問わず、業法上の許可と補助金の申請は切り離されています。
審査で見られるのは、宅建業の資格ではなく、導入するツールが実際の業務にどう使われるかです。物件問い合わせへのAIチャットボット対応や、内見予約の自動化などが典型例になります。「宅建業の免許があるから審査が有利になる」という関係はありません。
私たちが不動産会社のご相談を受けるときも、まず免許証の写しを探そうとする担当者に、それは不要だと伝えるところから始まります。業法の許可書類と、補助金の提出書類は頭の中で分けて整理してください。
自社で出せる書類と、役所での取得に日数がかかる書類
分けて考えないと、最後に足りない書類が出て公募回を逃します。

自社の書棚から出せるのは、決算書・確定申告書・労働者名簿です。これらは当日中に揃います。
時間がかかるのは4つです。GビズIDプライム、納税証明書、登記簿謄本、加点用の認定書。GビズIDの公式サイトでは、プライムアカウントの発行までに2〜3週間程度を見込むよう案内されています。
不動産会社の場合、代表者が内見や商談で外に出ていることが多く、印鑑証明書の取得や押印のタイミングが後ろにずれがちです。GビズIDプライムの申請書は印刷して郵送する手順があるため、社内の段取りを先に決めておく必要があります。
GビズIDの取得手順はAI導入補助金のGビズID取得方法で詳しく解説しています。
納税証明書は種類を確認してから
窓口で「補助金の申請に使う」と伝えれば、該当するものを出してもらえます。税目と年度の指定を確認せずに取りに行くと、取り直しになります。
納税証明書の種類はAI導入補助金の納税証明書はどれ?で、その1とその2の違いを整理しています。
GビズIDから始める、書類準備の5ステップ
GビズIDから始めてください。発行を待つ間に、他の書類を集められます。

- GビズIDプライムを申請する(2〜3週間かかる)
- 税務署で納税証明書を取る(窓口なら半日)
- 法務局で登記簿謄本を取る(オンラインでも可)
- 支援事業者から見積書を受け取る
- 見積書の金額を使って事業計画書を書く
順番を守る理由は5番目にあります。見積書が無いと、事業計画書の数字が組めません。導入費用が決まらないまま計画を書くと、後で全部書き直しになります。
申請全体の流れはAI導入補助金の申請のやり方で5ステップに分けて解説しています。
自社が対象になるか、3分で判定できます。
3分の適性診断(無料・8問)見積書で必ず分けてもらう3区分
支援事業者に依頼するとき、最初に伝えてください。後から内訳を聞き直すと、見積の取り直しになります。

| 区分 | 例 |
|---|---|
| ソフトウェア利用料 | 物件問い合わせ用AIチャットボット、AI査定ツールの年間利用料 |
| 導入関連費 | 初期設定、物件データの移行、操作研修 |
| ハードウェア | 内見予約端末やタブレット(対象になる類型のみ) |
不動産会社でよくあるのが、チャットボットの利用料と内見予約システム、初期設定費が「一式」でまとまった見積書です。この形だと、どこまでが補助の対象か審査側が判断できません。
翌年以降の保守料は対象外になりやすい費用です。月額契約のまま申請すると、対象経費が想定より小さくなることがあります。
私たちがご相談を受けたときも、チャットボットとMEO対策ツールがセット価格になっていて、内訳を出し直してもらった不動産会社がありました。同じ支払額でも、内訳の書き方で対象経費が変わります。
月額と年額で、対象になる期間が変わる
契約の形によって、補助の対象になる期間が変わります。ここで対象経費の合計が動きます。
月額のAIチャットボット利用料を年額契約に切り替えると、まとめて計上できる分だけ対象経費が増えます。ただし補助の対象になる期間には上限があり、何年分でも積めるわけではありません。支援事業者に「何年分まで計上できるか」を必ず確認してください。
途中解約の条件も見ておく必要があります。年額でまとめて支払った後に解約すると、補助の要件を満たさなくなる場合があります。実績報告まで使い続ける前提で契約してください。
複数店舗(支店)を運営している場合の書類
決算書と登記簿謄本は、法人単位で1通です。店舗ごとに用意する必要はありません。
不動産会社は複数の支店を構えているケースが多く、書類の単位を勘違いする担当者が少なくありません。労働者名簿だけは、全店舗分をまとめて1つの名簿にします。
見積書は扱いが異なります。導入するAIチャットボットや査定ツールを本店だけで使うのか、全店舗に展開するのかで、対象経費の合計が変わります。支援事業者には、どの店舗に何を導入するかを最初に伝えてください。
| 書類 | 単位 |
|---|---|
| 決算書・登記簿謄本 | 法人単位で1通 |
| 労働者名簿 | 全店舗分をまとめて1つ |
| 見積書 | 導入対象の店舗ごとに内訳 |
| 事業計画書 | 法人単位(展開先の店舗名を明記) |
私たちが不動産会社の相談を受けた中には、本店名義の見積書しか無く、支店での稼働実態を実績報告で示せなかった会社がありました。導入する店舗名は、事業計画書と見積書の両方に具体的に書いておくと後で困りません。
既存の物件管理システムとの連携も確認する
支店ごとに違う物件管理システムを使っていると、AIツールの導入効果が半減します。申請前に、どのシステムと連携させるかを決めておいてください。
本店だけ最新のシステムで、支店は古いシステムのままというケースは珍しくありません。事業計画書には、支店ごとの現状のシステムと、連携できるかどうかを書いておくと審査で伝わりやすくなります。連携できない支店は、後から個別に相談する形でも構いません。
審査で差し戻される4つの原因
書類が揃っていても、種類や名義が違うと差し戻されます。中身ではなく形式の問題です。
1つ目は、納税証明書の種類です。税目と年度の指定を確認せずに取りに行くと、取り直しになります。
2つ目は、登記簿謄本の日付です。発行から3か月以内が一般的で、以前の手続きで取ったものは使えないことがあります。
3つ目は、見積書の記載です。有効期限と、明細の内訳が無い見積書は差し戻されます。「一式」とだけ書かれた見積書は、対象経費を確認できません。
4つ目は、支店名義の不一致です。登記簿謄本の本店所在地と、見積書や事業計画書の店舗名が食い違っていると、同一事業者かの確認に時間がかかります。
「〇〇不動産△△支店」と「〇〇不動産株式会社」のように書き方が揺れていると、審査側が突き合わせに手間取ります。全書類で、法人の正式名称を統一してください。
仲介専業の個人事業主に必要な書類
法人と違い、登記簿謄本と決算書は不要です。代わりに確定申告書の控えを使います。
確定申告を一度も行っていないと、事業の実態を示す書類がありません。開業直後の申請は、書類要件で止まることを前提に計画してください。
確定申告書の控えは、税務署の受付印か、e-Taxの受信通知があるものを用意します。手元に保管してあるだけの控えは、受け付けられないことがあります。
屋号で事業を行っている個人事業主の場合、確定申告書は個人名、見積書は屋号、という状態だと同一人物かの確認に時間がかかります。見積書を依頼するときに、どちらの名義で統一するかを先に伝えておくと取り直しを避けられます。
個人事業主が対象になる条件は個人事業主のAI導入補助金で確認できます。
中小企業庁が示す中小企業の定義では、不動産業はサービス業の区分にあたり、資本金5,000万円以下または従業員100人以下が基準です。加点の要件も、この区分に沿って判定されます。
採択後、実績報告で求められる書類
申請が通っても、そこで終わりではありません。実績報告を出して初めて振り込まれます。
提出するのは4点です。契約書・納品書・請求書・振込の控え。この4点の日付が、交付決定日より後になっている必要があります。1つでも前の日付が入っていると、その時点で対象外と判断されます。
導入したツールを実際に使っている証拠も求められます。チャットボットの応答ログや、内見予約システムの利用画面など、稼働の実態が分かるものです。契約だけして使っていない状態では、報告が通りません。
実績報告の審査を経て振り込まれるまで、案件によっては半年近くかかることもあります。先に全額を支払う前提で、資金繰りを組んでおいてください。
報告書の書き方はAI導入補助金の実績報告の書き方で手順ごとに解説しています。
自社が補助金の対象になるかどうかは、3分の適性診断(無料・8問)で確かめられます。登録は不要で、その場で点数が出ます。
まとめ: 免許証ではなく、事業の実態を示す書類を揃える
不動産会社の提出書類で特有なのは、宅建業の免許証が不要な点と、複数店舗の集計単位です。決算書と登記簿謄本は法人単位で1通、労働者名簿は全店舗分をまとめます。
まずGビズIDプライムを申請してください。発行に2〜3週間かかるため、申請を決める前でも取っておいて損はありません。
見積書は、導入するツールを店舗ごとにどう展開するかを支援事業者に伝えたうえで依頼してください。内訳が明確な見積書ほど、事業計画書の数字も組みやすくなります。
