介護事業所の電子申請・届出システムは、指定申請や変更届などの手続きをオンラインで提出できる、厚生労働省が運営する仕組みです。紙とハンコで進めてきた申請業務を電子化する動きは、令和8年4月からの原則化を控えて多くの事業所で対応が急がれています。本記事では、対象事業所とサービスの範囲、義務化のスケジュール、gBizIDの取得方法、IT導入補助金が使える範囲を2026年9月時点の情報で整理します。
※ 2026年9月時点の情報です。電子申請届出システムへの対応状況は自治体ごとに異なるため、最新の運用状況は所轄の自治体窓口でご確認ください。
この記事でわかること
- 電子申請・届出システムの対象事業所と申請できる手続き
- 義務化のスケジュールと自治体ごとの違い
- gBizIDの取得方法と取得にかかる期間
- IT導入補助金が使える範囲と使えない範囲
介護事業所の電子申請・届出システムとは?
電子申請・届出システムとは、介護事業所の指定申請や届出をオンラインで行える厚生労働省の仕組みです。全国どの自治体に対しても、同じシステムから手続きを進められます。
実際の進め方は、建設業の電子申請システムを閲覧する2つの方法|JCIPとCIICの違いで解説しています。
対象になる範囲を先に押さえるなら、建設業の電子申請システムはIT導入補助金の対象になる?3つの誤解が参考になります。
北海道が公開している制度案内によると、このシステムは介護保険サービス専用で、障害福祉サービス等の届出には使えません。誤って提出しても受理されないため、対象制度の確認が最初の一歩になります。
私も相談の現場で、紙の申請書式をそのままPDF化してシステムに添付しようとした事業所に出会ったことがあります。電子申請では国が示す標準様式を画面上で直接入力する仕組みのため、紙の書式をそのまま流用する発想では手間が増えてしまいます。

対象となる事業所とサービスの範囲
対象は居宅サービスから地域密着型サービスまで幅広く、窓口が都道府県か市町村かはサービス種別で変わります。同じ介護保険サービスでも、指定権者が異なる点に注意が必要です。
| サービス区分 | 主な窓口 | 備考 |
|---|---|---|
| 居宅サービス・施設サービス | 都道府県 | 訪問介護・通所介護・特養など |
| 地域密着型サービス | 市町村 | 政令市・中核市は市が窓口 |
| 居宅介護支援事業所 | 市町村 | ケアマネジメント事業所 |
自治体によっては、同じ都道府県内でも政令指定都市や中核市が独自の窓口を持ちます。自社の事業所がどの自治体の管轄かを最初に確認しておくと、申請先を間違えるミスを防げます。
複数のサービスを1つの法人で運営している事業所も珍しくありません。訪問介護と通所介護、居宅介護支援を同じ法人が運営している場合、それぞれの窓口が都道府県と市町村に分かれることがあります。窓口が分かれると、同じ内容の届出でも提出先ごとに書式や添付資料の要否が変わることがあるため、サービスごとに管轄を一覧化しておくと申請時の迷いが減ります。
私も相談の現場で、複数サービスの窓口が異なることに気づかず、1か所に問い合わせただけで安心してしまった事業所に出会ったことがあります。指定申請は事業所単位ではなく、サービス単位で管轄が決まる点を先に押さえておく必要があります。
義務化はいつから?運用スケジュールを整理
令和5年3月の施行規則改正で使用が基本原則化され、令和8年4月からは原則として電子申請が必須になります。自治体ごとの受付開始時期には差があります。
埼玉県の案内では令和5年11月20日から原則電子申請での受付が始まった一方、北海道の案内では令和6年10月からの受付開始となっており、同じ制度でも自治体によって半年から1年ほどの時間差があります。

厚生労働省は令和7年度末までに全自治体での対応完了を目指しています。スケジュールの前倒しも今後あり得る話。自社の管轄自治体がまだ紙申請中心なのか、既に電子申請中心なのかは、窓口へ直接問い合わせるのが最も確実です。
gBizIDの取得方法と取得にかかる期間
電子申請・届出システムの利用にはgBizIDが必要で、プライムかメンバーのみ対応しています。無料で作れるエントリーアカウントでは利用できません。
郵送での申請では審査に2週間程度かかる場合があります。オンライン完結ならもっと短時間。直前に慌てないよう早めの取得が推奨されます。
複数のサービスを運営している事業所でも、gBizIDそのものは1つ取得すれば足ります。一方で、申請・届出の手続きはサービスごとに行う必要があるため、gBizIDの数と申請件数を混同しないよう注意してください。
gBizIDの取得手順は、AI導入補助金の申請でも共通する部分が多くあります。詳しい取得ステップはAI導入補助金のGビズID取得方法|プライム取得の5つの手順でも解説しています。
電子申請でできる7つの手続き
電子申請・届出システムでは、指定に関わる主要な手続きをひととおりオンラインで行えます。対象は指定申請から各種届出まで、主要な手続きが中心。紙の窓口対応が必要な場面は限られてきています。
- 新規指定申請
- 指定更新申請
- 変更届
- 加算届
- 廃止・休止届
- 再開届
- 指定辞退届
新宿区が公開している手続き一覧でも、この7種類が電子申請の対象として案内されています。登記事項証明書についても、法人番号の記載があれば添付を省略できる自治体が増えています。添付書類の準備にかかる手間も、紙申請に比べて軽くなる傾向があります。
7つの手続きのうち、日常的に発生しやすいのは変更届と加算届です。変更届は、事業所の所在地・管理者・運営規程などが変わったときに提出します。加算届は、処遇改善加算や特定加算など、報酬に上乗せされる加算を新たに算定するときに必要です。
どちらも紙申請の時代は自治体ごとに書式が微妙に異なっていました。電子申請では国が示す標準様式に統一されているため、複数の自治体で事業を展開する法人ほど恩恵を受けやすくなります。書式の違いを都度確認する手間が減り、担当者の教育コストも下がります。
新規指定申請や指定更新申請は、事業所を開設するとき、または6年ごとの更新時期に発生する手続きです。更新のタイミングを逃すと指定の効力が失われるため、電子申請への移行と合わせてスケジュール管理の仕組みを見直しておくと安心です。
導入前に準備しておきたい3つのこと
電子申請を始める前に、自治体の対応状況・gBizID・書類のデータ化という3つを順番に済ませておく必要があります。準備を後回しにすると、申請直前に慌てることになります。

1つ目は、管轄自治体が電子申請を原則としているか、まだ紙申請も受け付けているかの確認です。2つ目は、gBizIDプライムまたはメンバーの取得です。3つ目は、これまで紙で保管してきた申請書類・登記事項証明書などのデータ化です。
システム障害など、やむを得ない事情があるときはメールや郵送での提出も認められています。電子申請が原則になった後も、緊急時の代替手段が用意されている点は覚えておくと安心です。
IT導入補助金は電子申請対応の費用に使えるのか
電子申請・届出システム自体は無料の行政サービスのため、システムの利用料そのものはIT導入補助金の対象になりません。この点を誤解して相談に来る事業所は少なくありません。
一方で、電子申請への対応をきっかけに、介護記録のICT化や情報連携ソフトの導入を検討する事業所は多くあります。指定申請とは別に、日々の記録・請求業務を効率化するソフトウェアやクラウドサービスの導入費用であれば、IT導入補助金の対象になり得ます。
自社が中小企業者に該当するかどうかは、業種ごとに資本金・従業員数の基準が異なります。詳しい基準はIT導入補助金の中小企業とは?業種別4区分の資本金・従業員数で確認できます。
なお、AI導入補助金など他の補助制度でも電子申請そのものへの対応が前提になっています。補助金の電子申請と、今回扱う介護保険サービスの電子申請届出システムは別のシステムですが、共通点も多いため補助金の電子申請はいつから義務化?中小企業が今やることもあわせて確認してください。
当社はAI導入補助金の登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。介護記録システムやICTツールの導入を補助金と組み合わせて検討したい場合は、無料相談で状況を伝えてください。
補助金を検討する際は、電子申請対応そのものを目的にするのではなく、記録業務や請求業務のどこに負担が集中しているかを先に洗い出す進め方が向いています。夜勤明けの職員が紙の記録を転記している時間、加算算定のために毎月手作業で集計している時間など、具体的な業務を書き出すと、補助金の対象になりやすいツールの種類も見えやすくなります。
導入するツールが記録システムなのか、請求システムなのか、あるいはその両方を連携させる仕組みなのかによって、選べる申請枠も変わってきます。現場の負担を数値で示せると、事業計画書の説得力も上がります。「1日あたり何分の記録時間を削減できるか」を具体的に見積もっておくと、申請書類の作成もスムーズに進みます。
よくある失敗と注意点
電子申請への対応で起きやすい失敗は、制度理解の不足と準備の遅れの2つに集約されます。早めに気づけば、どちらも十分に対処できます。
1つ目は、電子申請届出システムの利用料そのものがIT導入補助金の対象だと誤解してしまうケースです。システムは無料の行政サービスであり、補助対象になるのは周辺のICTツール導入費用です。
2つ目は、自治体の対応状況を確認せず、紙申請前提で準備を進めてしまうケースです。管轄自治体によって電子申請への切り替え時期が異なるため、思い込みで進めると窓口で差し戻されることがあります。原則化が進んだ自治体では、紙申請そのものを受理しなくなる可能性もあるため、早めの移行が無難です。
3つ目は、gBizIDプライムの取得にかかる時間を見込まず、申請期限の直前になって慌てるケースです。郵送での審査には2週間程度かかることがあるため、余裕を持った取得が欠かせません。
私たちは2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点に登録支援事業者として補助金申請の支援に携わってきました。介護事業所のIT化に関する相談も、電子申請への対応を機に増えています。
まとめ: 自治体の状況確認とgBizID取得を先に済ませる
介護事業所の電子申請・届出システムは、指定申請や変更届をオンラインで完結できる厚生労働省の仕組みで、令和8年4月からは原則として電子申請が必須になります。自治体ごとに対応開始の時期が異なるため、まずは管轄自治体への確認が欠かせません。
gBizIDの取得には時間がかかることがあるため、申請期限の直前ではなく早めの取得が安心です。電子申請届出システムの利用料自体はIT導入補助金の対象になりませんが、記録のICT化など周辺のツール導入は対象になり得ます。
制度理解の不足と準備の遅れさえ避ければ、電子申請への移行は決して難しいものではありません。私たちは登録支援事業者として、介護事業所のIT化と補助金活用の両面から相談を受けています。対応の進め方に迷う場合は、無料相談で状況を伝えてください。
