建設業がAI導入補助金の対象になるかは、資本金・従業員数・導入するソフトの3点で決まります。制度の正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」で、旧IT導入補助金の後継にあたります。業種としての建設業が除外されることはありませんが、登録されていないソフトを選ぶと、要件を満たしていても対象外になります。本記事では、5つの要件と確認する順番を整理します。
※ 2026年9月時点の情報です。公募回ごとに要件が見直されるため、申請前に最新の公募要領をご確認ください。
この記事でわかること
- 建設業が対象になる5つの要件
- 資本金と従業員数のどちらを見ればよいか
- 対象外になりやすい2つのつまずき
- 申請前に確認する順番
建設業が対象になる5つの要件
建設業は業種として除外されていません。満たすべきは規模・形態・ソフト・時期・体制の5つです。
対象になる範囲は、動物病院はAI導入補助金の対象になるかで解説しています。
あわせてクリーニング店のAI導入補助金 対象要件もご覧ください。
| 要件 | 建設業での目安 |
|---|---|
| 資本金 | 3億円以下 |
| 従業員数 | 300人以下 |
| 事業形態 | 法人・個人事業主のどちらでも可 |
| ソフト | 事務局に登録された製品であること |
| 発注時期 | 交付決定の後に発注すること |
事務局が公開している申請要件では、製造業を例に「資本金3億円または従業員300人以下」と示されています。建設業も同じ区分です。
資本金と従業員数は、どちらか一方を満たせば足ります。両方を満たす必要はありません。ここを両方必要だと誤解して、申請前に諦めてしまう事業者を何度か見てきました。
従業員数の数え方でつまずく場面
数えるのは「常時使用する従業員」です。役員と、日雇いで期間の定めがある人は含めません。
建設業でよく迷うのが、現場に入る一人親方の扱いです。請負契約であれば自社の従業員ではないため、人数に含めません。雇用契約か請負契約かで判断が変わります。
私も相談の現場で、外注先の職人まで数に入れて「300人を超えるから対象外」と思い込んでいた会社に出会ったことがあります。実際に雇用している従業員は40人ほどで、問題なく対象でした。契約の中身を確認しないまま諦めるのは、もったいない判断です。
パート・アルバイトは、週の所定労働時間が正社員と同程度であれば含めます。判断に迷う場合は、申請前に支援事業者へ確認してください。
資本金を増やす予定がある場合
増資を予定しているなら、申請の時期と順番を確認してください。資本金3億円を超えると、その時点で中小企業の区分から外れます。
申請時点で要件を満たしていれば、その公募回では対象になります。ただし実績報告までの期間に区分が変わると、確認を求められることがあります。増資と申請が重なる年は、どちらを先にするかを決めてから動いてください。
中小企業庁が公開している中小企業の定義では、業種ごとに資本金と従業員数の基準が示されています。建設業は「その他の業種」に含まれ、資本金3億円以下または従業員300人以下が基準です。
一人親方・個人事業主が申請するときの条件
個人事業主も対象ですが、直近の確定申告書類が求められます。開業して間がない場合、この書類が揃わずに足止めされます。
小規模事業者の区分では、製造業その他は従業員20人以下とされています。建設業の一人親方や数名規模の事業者は、この区分に入ることが多くなります。
確定申告を一度も行っていない段階では、事業の実態を示す書類が揃いません。開業直後の申請は、書類要件で止まることを前提に計画してください。
法人成りを予定している場合は、申請の時期に注意が要ります。申請中に法人化すると、申請者の名義が変わって手続きをやり直すことになります。先に法人化を済ませるか、補助金の受給まで待つかを決めてから動いてください。
対象外になりやすい2つのつまずき
建設業で最も多いのは、登録されていないソフトを選んでしまうことです。要件を満たしていても、ここで外れます。

1つ目は、ソフトの選び方です。補助の対象になるのは、事務局に登録された製品だけです。現場で評判のよいソフトでも、登録がなければ1円も出ません。自社で作った管理システムも対象外です。
2つ目は、発注の時期です。交付決定より前に発注・契約・支払いをすると、対象になりません。「先に導入して、後から申請する」は通りません。年度末に急いで発注してしまう例が目立ちます。
申請で落ちる理由の全体像はAI導入補助金の不採択理由にまとめています。建設業に限らず共通する落とし穴です。
建設業で対象になりやすいソフトの種類
施工管理・積算・原価管理の3分野が中心です。いずれも現場と事務所をつなぐ性質を持ちます。
| 分野 | 補助の対象になりやすい例 |
|---|---|
| 施工管理 | 工程管理、写真台帳、日報の電子化 |
| 積算・見積 | 見積作成、歩掛データの管理 |
| 原価管理 | 実行予算、労務費・外注費の集計 |
| 勤怠・労務 | 現場ごとの出面管理、残業時間の把握 |
タブレットなどのハードウェアは、対象ソフトと同時に導入する場合に限って認められる類型があります。単体では申請できません。
建設業での活用の具体例はAI導入補助金は建設業でどう使うかで、工程別に整理しています。
支援事業者はソフトの提供元とは限らない
申請を手伝うのは、事務局に登録された「IT導入支援事業者」です。ソフトを作っている会社が自ら登録している場合もあれば、販売代理店が登録している場合もあります。
同じソフトでも、扱う支援事業者によって提案の丁寧さが変わります。私たちが相談を受けたときも、支援事業者を替えただけで、申請書の完成度が明らかに上がった例がありました。1社で決めず、2社に相談してから選ぶことをおすすめします。
支援事業者は、交付申請から実績報告まで伴走する立場です。申請だけ手伝って、その後の連絡が途絶える相手を選ぶと、実績報告で困ります。契約前に「実績報告まで対応するか」を必ず確認してください。
自社が対象になるか、3分で判定できます。
3分の適性診断(無料・8問)確認する順番|ソフトを決めてから要件を見る
順番を逆にすると手戻りが出ます。先にソフトを決めてください。
- 導入したいソフトの候補を2〜3つ挙げる
- そのソフトが事務局に登録されているかを調べる
- 登録があれば、そのソフトを扱う支援事業者に相談する
- 自社の資本金・従業員数が要件内かを確認する
- GビズIDプライムを取得する
ソフトが決まらないと、支援事業者も補助額も決まりません。要件を先に調べても、使いたいソフトが対象外なら意味がありません。
GビズIDプライムの発行には目安で2〜3週間かかります。私も相談の現場で、申請直前になって未取得だと分かり、公募回を1つ見送った事業者を何度か見てきました。取得だけは先に進めておいてください。
必要書類の詳細はAI導入補助金の必要書類|法人が用意する5点と取得先で確認できます。
電子申請の手続きとは別物です
建設業許可の電子申請(JCIP)とAI導入補助金は、まったく別の制度です。窓口も申請先も違います。
実際の進め方を先に押さえるなら、建設業許可の電子申請が参考になります。
| 建設業許可の電子申請 | AI導入補助金 | |
|---|---|---|
| 目的 | 許可の取得・更新 | ソフト導入費用の補助 |
| 窓口 | 都道府県・国土交通省 | 中小企業基盤整備機構 |
| 共通点 | GビズIDが必要 | GビズIDが必要 |
共通するのはGビズIDだけです。許可の電子申請ができるからといって、補助金の要件を満たしているわけではありません。両方を混同して、許可の窓口に補助金を問い合わせる事業者がいます。
GビズIDは一度取得すれば両方で使えます。許可の更新と補助金の申請が重なる時期なら、まとめて準備すると手間が減ります。
補助額の目安と、自己負担の考え方
補助率は枠によって変わりますが、全額が出る制度ではありません。必ず自己負担が発生します。
枠は通常枠のほか、インボイス対応類型・電子取引類型・セキュリティ対策推進枠・複数者連携枠に分かれます。建設業の施工管理や原価管理のソフトは、通常枠での申請が中心になります。
採択されても、先に全額を支払う必要があります。入金は実績報告の審査が終わってからで、発注から半年以上あくことも珍しくありません。資金繰りを前提に計画してください。
自己負担の試算は単純です。ソフトの総額から補助額を引いた分が、手元から出ていきます。保守費用や初期設定費が補助の対象外になる場合もあるため、見積書の内訳を項目ごとに確認してください。
補助額の枠ごとの目安はAI導入補助金はいくらもらえる?で整理しています。工事規模ごとの考え方も載せています。
複数年で導入を分ける場合、1回の申請でまとめたほうが有利とは限りません。同じ事業者が連続して採択されるとは限らないためです。優先度の高いソフトから順に申請するほうが、確実に進みます。
採択された後に必要になること
交付決定から実績報告までが本番です。ここを軽く見ると、採択されても受給できません。
実績報告では、契約書・納品書・請求書・振込の控えを揃えます。日付の前後関係が合わないと差し戻されます。交付決定日より前の日付が書類に入っていると、その時点で対象外と判断されます。
導入したソフトを実際に使っているかを示す資料も求められます。画面の写しや操作ログなど、稼働の実態が分かるものです。契約だけして使っていない状態では、報告が通りません。
報告書の書き方はAI導入補助金の実績報告の書き方で手順ごとに解説しています。提出期限を過ぎると受給できなくなるため、交付決定の時点で期限を確認しておいてください。
申請前に社内で決めておくこと
誰が担当するかを先に決めてください。申請から実績報告まで、半年以上のやり取りが続きます。
現場を持つ社長が片手間で進めると、交付決定後の実績報告で止まります。補助金は交付決定で終わりではなく、実績報告を出して初めて振り込まれます。ここで書類が揃わず、受給を諦める例があります。
決めておくのは3つです。導入後に誰が使うのか、いつまでに使い始めるのか、報告書類を誰がまとめるのか。この3つが空白のまま申請すると、採択されても運用が始まりません。
担当者は現場に出ない人が向いています。書類のやり取りは平日の日中に集中するためです。事務員が1人しかいない会社では、支援事業者にどこまで任せられるかを契約前に決めておくと、繁忙期と重なっても止まらずに進みます。
自社が補助金の対象になるかどうかは、3分の適性診断(無料・8問)で確かめられます。登録は不要で、その場で点数が出ます。
まとめ: ソフトの登録確認が、要件確認より先
建設業がAI導入補助金で落ちる原因の多くは、要件ではなくソフトの選び方にあります。資本金3億円以下または従業員300人以下という条件は、多くの建設業者が満たしています。
まず使いたいソフトを決め、それが事務局に登録されているかを調べてください。登録がなければ、要件をいくら満たしていても対象になりません。
GビズIDの取得は2〜3週間かかります。ソフトの確認と並行して進めておくと、公募回を逃さずに済みます。
