AI導入補助金のAI活用事例は、経理の自動仕訳・営業の見積書作成支援・AIチャットボットによる顧客対応の3分野に集中しており、いずれも通常枠の対象として補助を受けられます。中小企業庁が公開する公式事例集でも、クラウド会計にAIを組み合わせた自動仕訳や、AI搭載の営業支援ツールによる見積書作成の効率化が紹介されています。本記事では、分野別の具体的な活用事例と、中小企業のAI活用率・効果に関する調査データ、事例を参考にする際の注意点を2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 経理・営業支援・顧客対応の3分野別AI活用事例
- 中小企業のAI導入率・活用効果を示す調査データ
- AI活用事例が対象になる申請枠と補助率
- 事例を参考にするときに失敗しない選び方
AI導入補助金のAI活用事例とは
AI導入補助金のAI活用事例とは、通常枠のITツールにAI機能が組み込まれた具体的な導入例です。専用の「AI枠」が独立してあるわけではありません。
中小企業庁担当者へのインタビュー記事では、AIの活用範囲について文章作成・チャット対応・データ分析・業務予測・書類作成支援などに急速に広がっていると説明されています。会計ソフトや受発注ソフトといった従来からの対象ツールに、AI機能が追加される形で活用が進んでいる状況です。
私たちが申請支援の相談を受ける中でも、「AI活用事例」と聞くと生成AIチャットのような専用ツールを想像する経営者が多いという印象があります。実際には普段使っている会計ソフトや営業支援ツールにAI機能が搭載されているケースが大半で、既存業務の延長線上で導入できる点が特徴です。
【経理・会計】AI活用事例|自動仕訳で処理を効率化
クラウド会計とAIを組み合わせると、仕訳入力にかかる時間を大幅に削減できます。建設業を中心に、経理担当者の負担軽減を目的とした導入が進んでいます。

デジタル化・AI導入補助金2026の公式事例集には、多数の導入企業インタビューが掲載されており、その中でAI活用を明示する事例の一つが、従業員11〜30名の建設業者です。クラウド会計とAIを組み合わせて導入し、AIによる自動仕訳で経理処理の効率化を実現しました。領収書や請求書のデータをAIが自動で読み取り、勘定科目を推定して仕訳を作成する仕組みが中心です。
経理担当者が手入力していた仕訳作業をAIが下書きし、担当者は内容を確認・修正するだけで済むようになります。確認作業に置き換わることで、月次の締め作業にかかる時間そのものを短縮できるのが導入効果です。人手不足に悩む中小企業にとっては、経理担当者を増やさずに業務量の増加へ対応できる点が評価されています。
ただし、AIが提案した仕訳をそのまま鵜呑みにするのは避けたいところです。導入初期はAIの提案精度を人が確認しながら運用する期間を設けることで、誤った勘定科目のまま帳簿が確定してしまうリスクを防げます。ポイントは、精度の見極めと確認体制の両立。
【営業支援】AI活用事例|見積書作成の工数を削減
AI搭載の営業支援ツールは、見積書作成にかかる工数を大きく減らせます。過去の受注データをAIが学習し、類似案件の見積もり作成を支援する仕組みが代表例です。
同じ公式事例集には、従業員1〜5名の住宅関連事業者の事例も紹介されています。住宅営業支援ツールにAI機能を組み合わせた結果、見積書作成に係る工数が大幅に削減されたとのことです。少人数の事業者ほど、営業担当者が見積もりから契約書類の作成まで一人で対応することが多くあります。そのため、AIによる工数削減の効果を実感しやすい傾向があります。
見積もり作成は、過去の類似案件を探して単価を調べ、条件に合わせて金額を調整するという手間のかかる作業です。AIが過去データから近い条件の案件を提示してくれれば、ゼロから金額を組み立てる時間を省けるようになります。鍵を握るのは、蓄積された過去データの量と質。小規模事業者にとっては、限られた人員で受注機会を逃さないための実務的な効果だといえます。
【顧客対応】AIチャットボット活用事例
AIチャットボットを導入すると、人員を増やさずに問い合わせ対応を効率化できます。24時間365日の一次対応をAIが担い、担当者は複雑な問い合わせに集中できる体制を作れます。
中小企業庁担当者へのインタビュー記事でも、AIの活用範囲としてチャット対応が明示的に挙げられています。よくある質問への回答をAIが自動化することで、担当者は個別対応が必要な案件に時間を割けるようになるという構造です。
補助対象になる経費の幅も広い点が特徴です。ソフトウェア購入費だけでなく、最大2年分のクラウド利用料・導入コンサルティング費・社内研修費まで含まれます。
AIチャットボットは、想定外の質問に誤った回答をしてしまう可能性もゼロではありません。「AIで回答できない場合は有人対応に切り替える」導線を用意しておくと、顧客満足度を落とさずに運用できます。重要なのは、AI任せにしない有人対応との併用。導入して終わりではなく、研修費まで補助対象になることで、社内での定着まで見据えた導入がしやすくなっています。
中小企業のAI活用率と効果|調査データで見る実態
中小企業のAI導入率は20.4%で、活用企業の86.7%が業務に効果があったと回答しています。事例だけでなく、統計データからも中小企業のAI活用が着実に広がっている実態が見えます。
中小企業基盤整備機構の実態調査(2026年3月)によると、AIを導入済みの中小企業は20.4%、導入を検討中の企業は18.6%で、合計39.0%が前向きな姿勢を示しています。導入済み企業に限ると、利用しているAIサービスの82.6%が生成AIという結果でした。
| 調査項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 中小企業のAI導入率 | 20.4% | 中小企業基盤整備機構(2026年3月) |
| 導入検討中を含めた合計 | 39.0% | 同上 |
| AI活用企業の「効果あり」割合 | 86.7% | 帝国データバンク(2026年3月) |
| 小規模企業の「大いに効果」割合 | 29.7% | 同上(大企業20.8%を上回る) |
帝国データバンクの企業動向調査では、生成AIを「非常に活用」「やや活用」していると答えた企業が全体の34.5%でした。興味深いのは、「大いに効果」と回答した割合は小規模企業が29.7%と、大企業の20.8%を上回っている点です。規模が小さい事業者ほど、限られた人員でAIの効果を実感しやすい可能性を示しています。
一方で、AI活用の障壁として「成功事例・活用事例の情報不足」を挙げる企業が8割超に上るという調査結果もあります。自社の業種・規模に近い事例を探すこと自体が、AI活用の最初のハードルになっているのが実情です。本記事のような分野別事例が、その手がかりの一つになります。
補助金の申請支援を通じて相談を受けていても、「うちの規模でAIを使っている会社があるとは思わなかった」という反応をよく耳にします。従業員数名の事業者から中堅企業まで、規模を問わず事例が広がっている段階に入ってきたといえます。
AI活用事例が対象になる申請枠と補助率
AI搭載ツールは主に通常枠の対象で、賃上げ要件を満たすと補助率が引き上がります。専用の「AI枠」ではなく、既存の申請枠の中でAI機能の有無を検索できる仕組みです。
| 枠 | AI活用事例の位置づけ | 補助率の目安 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 会計・営業支援・チャットボット等、AI搭載ツール全般が対象 | 1/2以内(賃上げ要件を満たすと2/3以内) |
| インボイス対応類型 | AI搭載の会計・受発注・決済ソフトも対象 | 50万円以下は中小3/4・小規模4/5 |
| 電子取引類型 | AI搭載のクラウド型受発注ソフトも対象 | 中小・小規模事業者2/3以内 |
中小企業庁担当者へのインタビュー記事では、最低賃金近傍の事業者は通常枠の補助率が2/3に引き上げられると説明されています。AI搭載ツールだからといって補助率が特別に優遇されるわけではなく、通常のIT導入と同じ枠組みの中で対象範囲が広がっているというのが正確な理解です。
対象になるかどうかは、事務局のツール検索画面で「生成AI」「生成AI以外のAI」のタグを確認するのが最も確実です。気になるツールが対象ツール一覧に掲載されているか、契約前に必ずチェックしてください。
事例から学ぶ、AI活用で失敗しないための注意点
他社事例をそのまま真似るのではなく、自社の課題に合わせて選ぶことが失敗を避ける近道です。業種や規模が違えば、同じAIツールでも得られる効果は変わります。

AIツールを導入しただけで満足し、実際の作業時間やミスの削減効果を確認しない事業者が少なくありません。導入前後で数値を比較しないと、実績報告や次の投資判断に活かせません。
私も相談の現場で、同業他社の事例をそのまま参考にしてツールを選んだという声を聞くことがあります。ただ、業務フローが違いすぎて使いこなせなかったというケースも見てきました。事例はあくまで参考であり、自社の業務フローに当てはめたときに本当に工数が減るかを、契約前にデモやトライアルで確認することが欠かせません。
導入後の流れも押さえておくと安心です。課題整理からツール調査、IT導入支援事業者への相談、交付申請・導入、効果測定という順に進めるのが基本の流れです。この順序を踏むことで、事例と自社の状況のズレに早い段階で気づけます。

申請段階でつまずきたくない方は、AI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策もあわせて確認してください。導入したいツールが会計・受発注系であれば、AI導入補助金の受発注ソフトとは?対象3枠と補助額を解説が参考になります。
AI活用にかかる費用感を先につかんでおきたい場合は、AI導入の費用相場|中小企業の内訳と抑える3つのコツを確認してください。交付決定後の手続きは、AI導入補助金の実績報告の書き方|必要書類と提出の4ステップで解説しています。
まとめ: AI活用事例は分野別に自社との近さで選ぶ
AI導入補助金のAI活用事例は、経理の自動仕訳・営業の見積書作成支援・AIチャットボットによる顧客対応という3分野に集中しています。いずれも通常枠を中心とした既存の申請枠で対象になり、専用の「AI枠」を探す必要はありません。
中小企業のAI導入率は20.4%、活用企業の86.7%が効果を実感しているというデータがあります。AI活用は一部の先進企業だけの取り組みではなくなりつつあります。事例を選ぶときは、業種・規模が近い事例を探し、契約前にデモで自社の業務フローに合うかを確認してください。
まずは自社の業務のうち、どこに一番時間がかかっているかを整理するところから始めてみてください。経理・営業支援・顧客対応のどこに近いかが見えれば、参考にすべき事例とツールの候補は自然と絞り込めます。
