e-Govは、厚生労働省をはじめ複数の府省が所管する行政手続きをまとめて電子申請できる国のポータルサイトです。個人事業主にとっては、従業員を雇ったときの労働保険の届出で使う場面が中心になり、税務手続きのe-Taxや補助金申請のJグランツとは所管が異なります。本記事では、個人事業主がe-Govを使う場面、他システムとの違い、GビズIDでの始め方4ステップを解説します。
※ 2026年9月時点の情報です。手続きの詳細は必ずe-Gov電子申請の公式サイトでご確認ください。
この記事でわかること
- e-Govという電子申請ポータルの仕組み
- e-Tax・Jグランツとの違い
- 個人事業主がe-Govを使う具体的な場面
- GビズIDでe-Gov電子申請を始める4つの手順
e-Govとは?個人事業主が使う電子申請ポータルの仕組み
e-Govとは、厚生労働省・総務省など複数の府省が所管する行政手続きを、1つの窓口からオンラインで申請できるポータルサイトです。デジタル庁が運営基盤を管理し、各府省が個別のシステムを持たずに済む共通インフラとして機能しています。
個人事業主にとって最も身近な利用場面は、労働者を雇ったときに必要になる労働保険の届出です。従業員のいない個人事業主であれば、e-Govを使う機会自体がほとんどありません。
e-Govという名称自体は、行政手続きのオンライン化が進み始めた2000年代から使われてきました。当時は府省ごとにばらばらだった申請窓口を、少しずつ1つのポータルへ集約してきた経緯があります。現在はデジタル庁が運営基盤を担い、厚生労働省をはじめとする各府省が個別のシステムを持たずに済む仕組みへと発展しています。まずは、似た名前で混同されやすいe-Tax・Jグランツとの違いを整理します。
個人事業主にとってe-Gov・e-Tax・Jグランツの違いは何か
e-Gov・e-Tax・Jグランツは、所管する府省庁と扱う手続きの種類が異なる別々のシステムです。名前が似ているため混同されがちですが、個人事業主が使う場面はそれぞれ独立しています。
| システム | 所管 | 個人事業主が使う主な場面 | ログイン方法 |
|---|---|---|---|
| e-Gov | 厚生労働省など各府省 | 従業員を雇ったときの労働保険・社会保険手続き | GビズID・電子証明書 |
| e-Tax | 国税庁 | 開業届・確定申告などの税務手続き | マイナンバーカード |
| Jグランツ | デジタル庁・中小企業庁系 | AI導入補助金・IT導入補助金の申請 | GビズID |
開業届の電子申請そのものは開業届の電子申請|個人事業主がe-Taxで出す5ステップで詳しく解説しています。表の3つのうち、GビズIDでログインできるのはe-GovとJグランツの2つです。e-Taxだけはマイナンバーカードによる電子署名が必要な、独立した仕組みになっています。
補助金の電子申請とGビズIDの関係については、補助金の電子申請はいつから義務化?で制度側の背景を解説しました。同じGビズIDでも、e-GovとJグランツでは申請先の府省庁も審査の流れも別物という点を押さえておいてください。
個人事業主がe-Govを使う場面は?従業員を雇ったときが分岐点
個人事業主がe-Govを使う最大の分岐点は、従業員を1人でも雇うかどうかです。雇用が発生した時点で、労働保険関係の届出義務がe-Gov経由の手続き対象になります。
関連する内容として補助金でAIチャットボット導入|対象条件と申請の流れも公開しています。
労働者を1人でも雇用すれば、労災保険と雇用保険をあわせた労働保険への加入手続きが必要です。群馬労働局の案内によると、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署またはハローワークへ提出する必要があります。
社会保険(健康保険・厚生年金)については扱いが異なります。個人事業主は社会保険の電子申請義務化の対象外で、資本金1億円超の法人など一部にのみ義務が課されています。詳しい条件は社会保険の電子申請義務化で解説しています。義務でなくても、e-Govを使えば窓口往復なしで届出を完結できます。
たとえば、AI導入補助金でチャットボットを導入し、その運用を任せるスタッフを新しく1人雇ったとします。この時点で雇用契約書とは別に、労働保険の加入手続きが発生します。「補助金の申請さえ終われば手続きは完了」と考えている個人事業主の方は少なくありませんが、採択後にスタッフを雇い入れる段階で必要になるのは、書類の追加提出ではなく雇用に伴う届出。手続きの種類が違う点を、早めに押さえておいてください。
家族だけで営む個人事業主はe-Gov電子申請が不要なケース
生計を一にする親族のみで事業を運営している個人事業主は、労働保険の適用対象外で、e-Gov電子申請は原則不要です。この点は見落としやすいので、判断の目安を整理します。

配偶者や子どもだけを手伝わせている段階では、労働保険の適用事業には該当しません。この段階でe-Gov電子申請を焦って準備する必要はありません。事業が拡大し、親族以外のスタッフを1人でも雇い入れた瞬間に、状況が切り替わります。
判断に迷う場合は、雇う予定の人が「生計を一にする親族かどうか」だけを確認してください。それ以外の従業員を1人でも雇う予定があるなら、雇用日が決まった時点でGビズIDの準備を始めておくと、10日の期限に余裕を持って対応できます。
個人事業主がe-Govで電子申請する4つの手順
個人事業主がe-Govで労働保険の電子申請をする流れは、GビズID取得・保険関係成立届の提出・概算保険料の申告・受付番号の保存という4ステップです。
関連する内容を先に押さえるなら、社労士事務所のAI導入補助金が参考になります。

ステップ1: GビズIDプライムを取得する
e-Govへのログインには、GビズIDプライムアカウントが使えます。GビズID公式サイトによると、マイナンバーカードを使ったオンライン申請なら最短即日で発行されます。既にAI導入補助金の申請でGビズIDを持っている場合は、そのまま流用できます。
ステップ2: 保険関係成立届を提出する
雇用が発生した翌日から10日以内に、e-Gov電子申請システムから「保険関係成立届」を送信します。GビズIDプライムでログインすれば、電子証明書の添付なしで申請できます。
ステップ3: 概算保険料を申告する
保険関係成立届とあわせて、その年度に見込まれる賃金総額から労働保険料を試算し、「概算保険料申告書」を提出します。金額は年度末の確定保険料申告で精算されます。
ステップ4: 受付番号を保存する
送信後にマイページへ表示される受付番号・公文書が提出の証拠になります。紙の収受印がない分、この控えの保存だけは忘れないでください。
GビズIDでログインした個人事業主の情報はどう扱われるか
GビズIDでe-Govにログインした個人事業主は、システム上「法人」区分として扱われ、個人事業主管理番号が法人番号、屋号が法人名として初期設定されます。これはあまり知られていない、e-Gov特有の仕様です。
e-Gov電子申請のヘルプページによると、GビズIDで個人事業主がログインした場合、GビズIDにおいて付番される8桁の個人事業主管理番号を「法人番号」として、開業時に届け出た屋号を「法人名」として初期設定する仕組みになっています。実際の13桁の法人番号を持たない個人事業主でも、システム上はこの形で処理されます。
屋号を登録していない個人事業主の場合、法人名の欄が空欄のまま表示されることがあります。申請時にこの欄でつまずいた場合は、入力エラーではなく仕様だと理解しておけば、無駄な問い合わせを減らせます。私たちが登録支援事業者として相談を受ける中でも、この初期設定の違いに戸惑う個人事業主の方に何度か出会ってきました。
金融機関へ提出する書類にe-Govの申請控えを添付する場合も、この表示のまま出して問題ありません。「法人」と表示されているからといって、法人登記が必要になるわけではありません。あくまでシステム上の内部処理であり、事業の法的な形態が変わるわけではない点を、相談の現場でも合わせて説明しています。
e-Gov電子申請でつまずきやすい3つの注意点
e-Gov電子申請でつまずきやすいのは、提出期限の超過、GビズID再登録後のログイン不可、対象外なのに手続きを進めてしまう3パターンです。

注意点1: 雇用後10日の提出期限を超過する。雇用契約を結んだ日ではなく、実際に働き始めた日が起算日になる点を見落としがちです。採用が決まったら、初出勤日をカレンダーに書き込んでおくと安全です。
注意点2: GビズID再登録後にログインできなくなる。代表者変更やメールアドレス変更でGビズIDを再登録すると、その後のe-Govログインで不整合が起きることがあります。再登録は電子申請の予定がない時期に済ませるのはNGです。届出の直前を避けてください。
注意点3: 対象外なのに手続きを進めてしまう。家族のみの事業のままGビズIDだけ取得し、使わない状態で放置しているケースも見かけます。実際に従業員を雇うタイミングまで、無理に手続きを急ぐ必要はありません。
先に取得しておくこと自体は無駄にはなりませんが、有効期限や再登録の管理が余計に増える点は理解しておいてください。雇用の予定が具体的に見えてから動き出すほうが、結果的に管理の手間は少なくなります。
自社が補助金の対象になるかどうかは、3分の適性診断(無料・8問)で確かめられます。登録は不要で、その場で点数が出ます。
個人事業主がAI導入補助金を申請する際、e-Govはどう関わるか
AI導入補助金の申請そのものはJグランツで完結し、e-Govを直接使う場面はありません。ただし、補助金を使ってAIツールを導入し、運用担当のスタッフを雇う段階になると、e-Govでの労働保険手続きが必要になります。
私たちはAI導入補助金の登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。申請の相談の中で「AIツールの運用を任せる人を雇いたい」という話に発展することも珍しくなく、その場合はGビズIDを軸にJグランツとe-Govの両方を案内しています。
GビズIDの取得手順そのものはAI導入補助金のGビズID取得方法にまとめています。
個人事業主がAI導入補助金の対象になる条件は個人事業主のAI導入補助金で解説しているので、あわせて確認してください。
まとめ: e-Govは従業員を雇う段階で向き合う手続きの入口
e-Govは、労働保険をはじめとする複数府省の行政手続きを1つの窓口でオンライン完結できるポータルです。個人事業主にとっては、家族以外の従業員を雇った瞬間から向き合う手続きの入口になります。e-Tax・Jグランツとは所管も用途も別物ですが、GビズIDというログイン基盤は共通しています。
従業員の雇用予定があるなら、雇用日が決まった時点でGビズIDプライムの取得から始めてください。10日という提出期限は短く、直前の駆け込みでは間に合わないことがあります。電子申請でつまずく原因の多くは、書類の中身ではなく期限の見落とし。AI導入補助金を使った採用・体制強化まで見据えている場合は、電子申請の準備段階から一緒に整理していくことをおすすめします。
