※ 補助率・上限額・対象ツールは公募回ごとに変わるため、最新情報は事務局の公式サイトで確認してください。
この記事でわかること
- 社労士事務所がAI導入補助金の対象になるか
- 労務業務のどこが対象になるかの線引き
- 枠ごとの補助率と上限額
- 申請の5つの手順とつまずきやすい点
社労士事務所はAI導入補助金の対象になるか
社労士事務所は、中小企業・小規模事業者の要件を満たせばAI導入補助金の対象になります。士業を除外する規定はなく、法人でも個人事業でも申請できます。
あわせて事業承継の補助金は個人事業主も対象もご覧ください。
近い論点を社会保険の電子申請義務化で扱っています。
判定の基準になるのは資本金と従業員数です。サービス業に区分される社労士事務所の場合、資本金5,000万円以下または従業員100人以下であれば中小企業者に当たります。従業員5人以下であれば小規模事業者として、より有利な補助率が使える枠もあります。
一人で営んでいる事務所でも申請できます。従業員がいないことは要件の欠格事由ではありません。個人事業としての開業年数や確定申告の実績については、個人事業主のAI導入補助金で条件を整理しています。
私は登録支援事業者として申請支援に携わっていますが、士業の方から「うちは製造業じゃないから対象外では」と聞かれることが何度もありました。対象を決めるのは業種ではなく、資本金・従業員数とツールの使い道の2つです。
労務のどの業務がAI導入補助金の対象になるか
AI導入補助金の対象になるのは、給与計算・社会保険手続き・労働保険の年度更新といった、事務所の定型業務を担うソフトの費用です。属人的に手作業でこなしている工程ほど、効果を数字で示しやすくなります。
あわせて補助金の電子申請はいつから義務化?もご覧ください。
あわせてe-Gov電子申請とはもご覧ください。
社労士事務所の業務のうち、補助対象として説明しやすいのは次のような工程です。いずれも毎年・毎月の繰り返しが発生し、時間の削減量を測れます。
| 労務の業務 | 手作業での負担 | ソフト化で減る工程 |
|---|---|---|
| 労働保険の年度更新 | 前年度の賃金総額を給与明細から集計 | 月次データの自動合算と申告書の自動作成 |
| 月次の給与計算 | 勤怠の集計と控除額の手計算 | 勤怠データの取り込みと税額の自動計算 |
| 社会保険の資格取得・喪失 | 届出書の都度作成と窓口提出 | 従業員情報からの自動生成と電子申請 |
| 顧問先とのやり取り | メールと紙での資料受け渡し | 共有画面での収集と進捗の可視化 |
年度更新は毎年6月1日から7月10日までが申告期間です。e-Gov電子申請の公式案内でも、この期間に受け付ける旨が明記されています。1か月余りの期間に顧問先の分がまとまって集中するため、社労士事務所にとっては年間で最も工数が跳ね上がる時期です。
ここを手作業のまま抱えていると、繁忙期の残業で人を消耗させます。集計をソフト側に持たせれば、担当者は確認と例外処理だけに集中できます。
社労士事務所はいくらもらえるか
通常枠は補助率1/2以内で上限450万円、インボイス対応類型は上限350万円が補助されます。契約金額と選ぶ枠の組み合わせで、最終的な補助額が決まります。
事務局の通常枠ページによると、通常枠の上限額は導入するツールが担う業務プロセスの数で段階的に上がり、1プロセス以上で5万円〜150万円未満、4プロセス以上で150万円〜450万円以下と定められています。
| 申請枠 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 1/2以内(賃上げ要件達成で2/3以内) | 5万円〜450万円 |
| インボイス対応類型 | 50万円以下は中小3/4・小規模4/5、超過分は2/3 | 350万円以下 |
| 電子取引類型 | 中小・小規模2/3以内、その他1/2以内 | 350万円以下 |
社労士事務所が導入するクラウド労務ソフトは、年額で数万円から数十万円という価格帯が中心です。この規模であれば上限額に届くことはまれで、実際には補助率のほうが補助額を左右します。小規模事業者としてインボイス対応類型の4/5が使えるかどうかで、自己負担は大きく変わります。
枠ごとの詳しい試算方法はAI導入補助金はいくらもらえる?で解説しています。契約額が固まってきた段階で、どの枠が有利かを比べてみてください。
対象になるツールと対象外の線引き
補助対象になるのは事務局に登録されたソフトウェアとその導入関連費で、自事務所が使わないものや汎用の事務用品は対象外です。この線引きを誤ると、申請そのものが通りません。
対象と対象外の境目は、次の3点で判断できます。
| 判断軸 | 対象になる | 対象外になる |
|---|---|---|
| 登録の有無 | 事務局に登録されたツール | 未登録の自社開発・海外サービス |
| 使う主体 | 自事務所が契約し自事務所で使う | 顧問先が使う分の費用 |
| 費用の種類 | ソフト利用料・導入設定費・研修費 | 事務所の家賃・一般的な文具 |
パソコンやタブレットは、特定の枠でハードウェアとして対象になる場合があります。ただし上限が別に設けられており、ソフトとセットでの導入が前提です。対象ツールの分類はAI導入補助金の対象ツール6分野|対象外との見分け方で6分野に整理しています。
顧問先向けのライセンスを自事務所名義でまとめて申請するのはNGです。補助の対象はあくまで申請者自身が使う費用に限られます。顧問先に導入させたい場合は、顧問先それぞれが申請者になります。
社労士事務所がAI導入補助金を申請する5つの手順
申請はGビズIDの取得から始まり、交付決定後の実績報告までの5つの手順で進みます。順番を飛ばすと、支払った費用が対象外になることがあります。

最初にGビズIDプライムを取得します。発行までに数日かかるため、公募の締切が見えてから動くと間に合いません。取得の流れはAI導入補助金のGビズID取得方法で解説しています。
次に登録支援事業者を決め、導入するツールを選びます。そのうえで自事務所の業務プロセスを洗い出し、どの工程をソフトに置き換えるのかを整理します。ここまで固まったら申請マイページで交付申請を行い、交付決定を待ちます。
交付決定の前に契約しないこと
決定通知より前に結んだ契約や支払った費用は、補助の対象になりません。「早く始めたいから先に導入した」という理由は認められません。私が見てきた中でも、この順番の誤りは取り返しがつかない失敗の筆頭です。
導入後は実績報告を提出します。支払の証拠書類とツールの稼働が確認できて初めて、補助金が支払われます。申請全体の流れはAI導入補助金の申請のやり方で通して確認できます。
申請前に準備するもの3点
申請の前に、GビズIDプライム、直近の確定申告書または決算書、業務時間の実測メモの3点を用意してください。この3つがそろえば、申請書の作成は短時間で進みます。

確定申告書や決算書は、中小企業・小規模事業者の要件を満たすことを示す書類です。個人事業の事務所であれば、確定申告書の控えを用意します。書類の全体像はAI導入補助金の必要書類一覧と準備の順番で確認できます。
3つ目の業務時間の実測は、見落とされがちですが審査に直結します。測るのは3つで十分です。年度更新の賃金集計にかかる時間、月次給与計算の時間、顧問先とのやり取りに費やす時間。この3つが減ることを数字で示せれば、事業計画書の説得力が変わります。
実測は1週間分で足ります。担当者ごとにストップウォッチで測り、日付と時間を紙に残しておくだけです。見込みの数字で書いた計画は、審査で根拠を問われたときに答えられません。
士業の申請でつまずきやすい注意点
士業の申請でのつまずきは、契約のタイミングと申請名義の2点に集中しています。制度が複雑だからではなく、順番と範囲の確認不足が主な原因です。
関連する内容としてAI導入補助金の不採択理由7つと再申請までにやるべき対策も公開しています。

私が相談を受けた中で多いのが、「顧問先にも同じソフトを入れるので、まとめて申請したい」というものです。気持ちは分かりますが、補助の対象は申請者自身が使う費用だけ。顧問先の分は、顧問先が申請者になって別に手続きします。
見込みの数字で計画を書くのも避けてください。年度更新の集計に何時間かかっているかを測らずに「大幅に削減」と書くと、審査で根拠を示せません。不採択になりやすい書き方はAI導入補助金の不採択理由で6つに整理しています。
もう1つ、導入したツールを実際に使っていない状態は避けてください。実績報告では稼働の確認が求められます。補助金を受け取った後も、一定期間の事業報告の義務が続きます。
自事務所が補助金の対象になるかどうかは、3分の適性診断(無料・8問)で確かめられます。登録は不要で、その場で点数が出ます。
顧問先にAI導入補助金を勧めるときに押さえること
顧問先に勧める場合は、申請者が顧問先自身になること、交付決定前の契約が対象外になることの2点を最初に伝えてください。この2点の説明漏れが、後のトラブルにつながります。
社労士事務所にとって、AI導入補助金は顧問先への提案材料にもなります。労務ソフトを入れれば、顧問先から受け取るデータの形がそろい、事務所側の作業も減ります。顧問先と事務所の双方で工数が減るため、提案の理由を説明しやすい制度です。
当社は登録支援事業者として、対象ツールの選定から、申請に向けた相談・助言、採択後の実績報告まで一貫して支援しています(申請書類はお客様が作成し、当社は内容の確認と助言を行います)。2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点にMEO運用サービス「G-ran」を含むAIO・SEO・MEOの支援で累計3,200件以上(うちMEO 2,000件以上)を運用してきた経験を、補助金の支援にも活かしています。
なお、労働保険の年度更新そのものの電子申請は、個人事業主には義務ではありません。厚生労働省の案内では、2020年4月から電子申請が必須になるのは資本金1億円超の法人などに限られると説明されています。顧問先に「義務だから」と説明すると誤りになるため、電子化の理由は義務ではなく工数削減で説明してください。
まとめ: 士業も対象、使い道と順番で決まる
社労士事務所はAI導入補助金の対象です。除外されるのは業種ではなく、要件を満たさない規模と、対象外の使い道のほう。資本金5,000万円以下または従業員100人以下であれば、まず土俵に乗ります。
対象になるのは、自事務所が契約して自事務所で使うソフトの費用です。顧問先に使わせる分は顧問先自身が申請者になるという線引きだけは、最初に押さえておいてください。
申請の順番も同じくらい大切です。GビズIDを先に取り、交付決定を待ってから契約する。この2つを守るだけで、避けられる失敗のほとんどを避けられます。
年度更新の賃金集計に毎年どれだけ時間を取られているか、まず1週間測ってみてください。その数字が、申請の根拠にも導入の判断材料にもなります。制度の詳細は公募回ごとに変わるため、迷ったときは自己判断で進めず、登録支援事業者に相談することをおすすめします。

