個人事業主が使える「給付金」は数が少なく、ツール導入の場面で実際に使えるのはIT導入補助金など審査を経て採択される「補助金」であるケースがほとんどです。給付金は要件を満たせば原則支給される仕組みですが、補助金は事業計画書を提出し、採択されて初めて対象になります。この違いを知らないまま「給付金」で検索すると、対象外の制度を探して時間を失います。本記事では、個人事業主が対象になる給付金・補助金・助成金の違いと種類、AI・IT導入補助金の具体的な申請方法を2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 給付金・補助金・助成金の違い
- 個人事業主が対象になる主な制度
- 給付金と補助金で申請方法がどう違うか
- AI・IT導入補助金を申請する5ステップ
個人事業主が使える「給付金」とは?補助金・助成金との違い
「給付金」は要件を満たせば原則支給される仕組みで、審査で採択者を選ぶ「補助金」とは性質が異なります。同じ「もらえるお金」でも、申請の進め方はまったく違います。
一方で補助金は、事業計画書を提出し、審査を経て採択された事業者だけが受け取れます。助成金は雇用関係の要件を満たすと支給される点で給付金に近いものの、多くは従業員を雇う事業者向けの制度です。
傷病手当金や失業給付(基本手当)は雇用保険や健康保険の被保険者向けの制度です。個人事業主本人は原則対象外になります。
私たちはAI導入補助金の登録支援事業者として、個人事業主から「使える給付金はないか」という相談を数多く受けてきました。実際には給付金より、審査制の補助金のほうが選択肢が多いというのが実情です。
助成金の中には、賃金引き上げに取り組む事業者向けの業務改善助成金のように、従業員を1人でも雇っていれば個人事業主も対象になる制度があります。従業員を雇わず1人で事業を営む場合は、対象になる助成金がほとんどないという点も押さえておいてください。
個人事業主が対象になる給付金・補助金・助成金の一覧
個人事業主が実際に使える制度の中心は、IT導入補助金・小規模事業者持続化補助金・ものづくり補助金・事業再構築補助金の4つです。業種や導入したい内容によって選ぶ制度が変わります。
関連して、事業再構築補助金で個人事業主が出す事業化状況報告|5年間の流れもあわせてご確認ください。

| 制度名 | 対象になりやすい内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| IT導入補助金(AI導入補助金2026) | 会計ソフト・受発注ソフト・AIツール | ITツール導入に特化。個人事業主も対象 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓・チラシ・ホームページ | 従業員5人以下の個人事業主向き |
| ものづくり補助金 | 設備投資・新サービス開発 | 補助上限額が大きく審査は厳しめ |
| 事業再構築補助金 | 事業転換・業態転換 | 要件がやや複雑で個人事業主の採択例は少なめ |
かつては新型コロナウイルス対応の「持続化給付金」という制度もありました。中小企業庁の資料によると、この制度は2020〜2021年度限りの緊急支援で、2026年時点では新規に申請できません。「給付金」という言葉のイメージが強く残っているため、いまだに検索で探す方が少なくない制度です。
IT導入補助金(AI導入補助金2026)の通常枠は、補助上限額が最大450万円です。個人事業主も法人と同じ上限額から選べます。小規模事業者(商業・サービス業は常時使用する従業員5人以下が目安)に該当すると、枠によっては補助率がさらに優遇されます。
このほか、自治体によっては独自の給付金・応援金制度を設けている場合があります。国の補助金と違い内容や実施の有無は自治体ごとに異なるため、事業所のある市区町村のホームページで確認してください。全国一律の制度ではない点が、国の補助金との大きな違いです。
中小企業庁が運営するミラサポplusでは、業種や目的から使える補助金・助成金を横断で検索できます。制度は毎年見直されるため、申請前に最新の公募要領を必ず確認してください。
個人事業主がAI導入補助金の対象になるかどうかの詳しい条件は、個人事業主のAI導入補助金|開業1年未満は対象外?条件を解説で解説しています。
4つの制度は併用できないわけではありません。ただし同一の経費に対して複数の補助金を重ねて申請することはできないため、1つの投資に対してどの制度を使うかを先に決める必要があります。開業から間もない個人事業主は、確定申告書の控えなど提出できる書類が限られる場合があるため、制度ごとの必要書類を早めに確認しておくと安心です。
給付金と補助金で申請方法はどう違うか
給付金は要件確認だけで支給される一方、補助金は事業計画書の提出から交付決定まで複数の手続きを踏みます。この順番を誤ると、補助対象から外れてしまいます。
給付金の多くは、必要書類を揃えて申請すれば要件確認のみで支給されます。審査による採択という工程がないため、比較的短期間で結果が分かります。
補助金は、事業計画書を提出したうえで審査を受け、採択されて初めて「交付決定」の通知が届きます。交付決定より前にツールを発注・契約・支払いすると、補助対象から外れるため注意してください。この順番は法人でも個人事業主でも共通です。
たとえば会計ソフトを導入したい場合、給付金のイメージのまま「先に契約して後から申請すればよい」と考えると、補助金では対象外になります。補助金は「これから使う経費」に対する支援であり、「すでに使った経費」を後から補填する制度ではありません。この前提を先に理解しておくと、発注のタイミングで迷わなくなります。
審査にかかる期間も、給付金より長めに見ておく必要があります。事業計画書の提出から交付決定までは、制度や公募回によって数週間から数ヶ月かかることもあります。ツールを使い始めたい時期から逆算し、余裕を持って申請の準備を始めてください。
AI・IT導入補助金の申請方法|個人事業主が進める5ステップ
個人事業主がAI・IT導入補助金を申請する流れは、GビズID取得、支援事業者選定、交付申請、交付決定後の発注、実績報告の5ステップです。法人と同じ流れで進められます。
実際の進め方を先に押さえるなら、e-Gov電子申請とは|個人事業主が使う場面と4ステップが参考になります。
実際の進め方を先に押さえるなら、開業届の電子申請|個人事業主がe-Taxで出す5ステップが参考になります。

最初のGビズIDプライムは発行までに約2〜3週間かかります。給付金と違い、補助金は準備の段階から時間がかかるため、早めの着手が全体スケジュールを左右します。
事務局が公開している申請手続きフローでは、SECURITY ACTIONの宣言も交付申請の必須条件とされています。ステップごとの詳しい期間の目安はAI導入補助金の申請のやり方|受給までの5ステップを解説にまとめています。
補助額がいくらになるかは枠ごとに異なります。契約金額から自社の補助額を試算したい場合は、AI導入補助金はいくらもらえる?3つの枠の上限額と計算例を参考にしてください。
最後の実績報告は、ツール導入後に領収書・契約書・利用状況の証拠書類をまとめて提出する手続きです。給付金には無い工程で、報告を怠ると交付決定が取り消されることもあります。個人事業主は経理担当者がいないケースが多いため、領収書は届いた時点でフォルダにまとめておくと、報告時期になって慌てずに済みます。
実績報告のあとも、一定期間はツールの利用状況を報告する義務が続く制度があります。申請時点だけでなく、導入後の運用まで見据えて制度を選ぶと、報告漏れによるトラブルを避けやすくなります。書類の保管期間は制度によって異なるため、交付決定通知に記載された期間を確認しておいてください。
個人事業主の給付金・補助金申請でよくある失敗と対策
個人事業主がつまずきやすいのは、対象外の給付金を探して時間を失うことと、交付決定前に発注してしまうことの2つです。制度の性質を理解していれば、どちらも避けられます。

「給付金」という言葉のイメージから、審査なしですぐもらえる制度を探し続けてしまう相談は少なくありません。実際には個人事業主が使える給付金の選択肢は限られており、補助金のほうが現実的な選択肢になります。まず補助金を軸に検討することが、遠回りを避ける近道です。
もう一つの失敗は、交付決定の通知を待たずにツールを契約してしまうことです。中小企業庁が公開する制度概要でも、交付決定前の発注は補助対象外になると明記されています。私も相談の現場で、決定を待てずに契約してしまい対象外になった個人事業主の方を見てきました。
中小企業庁が公開した制度概要を事前に確認しておくと、こうした失敗を防ぎやすくなります。失敗の傾向をさらに詳しく知りたい場合は、AI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策もあわせて確認してください。
3つ目の失敗は、複数の制度情報を比較せず、最初に見つけた情報だけで判断してしまうことです。同じ「補助金」でも年度によって公募回や要件が変わるため、古い情報のまま申請書類を準備すると差し戻しの原因になります。申請の直前には必ず公式サイトの最新情報を確認する習慣をつけてください。
個人事業主が給付金・補助金を使うべきタイミングと選び方
個人事業主が制度を選ぶ基準は、導入したい内容がツール購入なのか販路開拓なのかで決まります。目的が明確なほど、制度選びで迷わなくなります。
会計ソフトや受発注ソフトを導入したい場合は、IT導入補助金(AI導入補助金2026)が最も使いやすい制度です。個人事業主向けの会計ソフトの対象範囲はIT導入補助金の会計ソフト|個人事業主が使える2つの枠と補助率で解説しています。
チラシやホームページ制作など販路開拓が目的なら、小規模事業者持続化補助金のほうが採択されやすい傾向があります。導入予定のツールが決まったら、対象ツールかどうかをITツール検索で確認してから支援事業者に相談する順番が確実です。
制度は年度ごとに公募回や要件が変わります。「今すぐ申請できるか」だけでなく「次の公募がいつか」も合わせて確認すると、スケジュールに余裕を持って準備できます。
タイミングの見極めも選び方の一部です。繁忙期に申請の準備を始めると、必要書類を集める時間が取れず後回しになりがちです。確定申告を終えた直後や、閑散期に入るタイミングで着手すると、書類集めとツール選定に集中できます。
複数の候補で迷う場合は、補助上限額の大きさだけで選ばないことも大切です。上限額が大きい制度ほど審査は厳しく、事業計画書の作成にも時間がかかります。個人事業主が1人で対応する場合は、必要書類が少なく実績報告までの負担が軽いIT導入補助金から検討すると、初めての申請でも進めやすくなります。
まとめ: 「給付金」より使える補助金を軸に探す
個人事業主が使える給付金は限られており、ツール導入の場面で現実的な選択肢になるのはIT導入補助金など審査制の補助金です。給付金は要件確認のみで支給されますが、補助金は事業計画書の提出と採択を経て、交付決定後に発注する流れになります。
まずは「給付金」ではなく「自分が導入したい内容に合う補助金」を軸に探すことが、最短ルートです。会計ソフトや受発注ソフトならIT導入補助金、販路開拓なら小規模事業者持続化補助金というように、目的から逆算すると迷いません。
私たちは登録支援事業者として、法人だけでなく個人事業主・フリーランスの申請にも数多く伴走してきました。制度選びや申請の進め方で迷ったときは、1人で判断せず早めに支援事業者へ相談してください。制度の細部は年度ごとに変わるため、申請の直前には最新の公募要領も必ず確認してください。
給付金という言葉から検索を始めた場合でも、たどり着く先は多くの場合、審査を経て採択される補助金です。「給付金がないか探す時間」を「使える補助金の準備」に切り替えるだけで、申請までのスピードは大きく変わります。開業年数や必要書類に不安がある場合も、まずは対象になるかどうかを確認することから始めてください。
