小規模事業者持続化補助金は、飲食店の販路開拓や生産性向上につながる経費に使える補助金です。店舗改装やホームページ制作、厨房設備の導入まで幅広く対象になりますが、「改装や設備投資であれば何でも通る」わけではありません。本記事では、飲食店で対象になりやすい4つの投資、対象になる経費とならない経費の違い、補助率・上限額を2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- 飲食店で対象になる経費の範囲
- 対象になりやすい4つの投資
- 対象になる経費とならない経費の違い
- 補助率・補助上限額の目安
飲食店で対象になる経費のカテゴリー
小規模事業者持続化補助金は、飲食店の販路開拓・業務効率化につながる経費であれば幅広く対象になります。業種を問わず申請できる制度です。

対象になる経費は、店舗改装費、ウェブサイト関連費、機械装置等費、広報費、展示会等出展費など幅広いカテゴリーに分かれています。飲食店の場合、客席の改装や厨房設備の導入、ホームページ制作費として活用するケースが目立ちます。
制度の基本的な対象条件や中小企業との使い分けは、小規模事業者持続化補助金は中小企業も対象|3制度の使い分けで解説しています。まずは自店舗が対象になる従業員規模かどうかを確認してください。
飲食店の場合、商業・サービス業の区分に入るため、常時雇用の従業員が5人以下であれば対象です。個人経営の小さな飲食店でも申請できる制度だと考えてください。
対象経費の区分はほかにも、チラシ作成やSNS広告に使う広報費、物産展や商談会への出展費、外部専門家への謝金など多岐にわたります。飲食店の場合、開業して間もない店舗が「まず知ってもらう」ための広報費から申請するケースも少なくありません。
開業1年未満でも、確定申告書の控えがなければ開業届や事業計画書で事業の実態を示す方法があります。書類が足りないとあきらめる前に、まずは管轄の商工会・商工会議所へ相談してみてください。
複数の経費区分にまたがる投資も珍しくありません。例えば店舗改装とホームページ制作を同時に行う場合、両方の経費区分を1つの事業計画書にまとめて申請できます。区分ごとに個別の上限があるわけではなく、全体の補助上限額の範囲内でどう組み合わせるかを考える形になります。
店舗改装が対象になる条件|バリアフリー化・客席レイアウト変更
店舗改装は、新しい客層を開拓する目的が明確な場合に対象になります。単なる老朽化対応との違いを理解しておく必要があります。
客席のレイアウト変更や入口の段差解消といったバリアフリー化は、目的が明確なため対象になりやすい投資です。車椅子利用者やベビーカー連れの客層を取り込みたいと明記すると、目的がより伝わりやすくなります。
同じ客席改装でも、書き方次第で評価が変わります。「老朽化したので直す」ではなく、「バリアフリー化でこれまで来店が難しかった客層を取り込む」と書けば、販路開拓の文脈で評価されます。改装の先にどんな客層・売上があるのかを、事業計画書で具体的に説明してください。
ホームページ・EC制作が対象になる条件|ネット予約・通販機能
ホームページやECサイトの制作は、来店前の販路を広げる機能があれば対象になります。見た目を新しくするだけの制作は対象になりにくい傾向です。
ネット予約機能やテイクアウト通販機能を新設する投資は、来店前の販路を広げる取り組みとして評価されます。「見た目を新しくする」ではなく、「ネット予約導入で電話対応の負担を減らし、新規客の予約障壁を下げる」といった具体的な効果まで書き込むと、審査員に伝わりやすくなります。
制作会社への発注前に、どの機能を新設するのかを事業計画書に落とし込んでおくと、見積もりの内容とも整合しやすくなります。既存サイトのリニューアルだけを目的にすると、販路開拓との関連が説明しにくくなるため注意してください。テイクアウトやデリバリーの注文導線を新設する場合も、来店前の顧客との接点を増やす取り組みとして説明できます。
厨房設備・POSレジ導入が対象になる条件
厨房設備やPOSレジの導入は、提供力の向上や客単価の改善につながる場合に対象になります。単純な入替とは区別されます。
省スペースの調理機器や換気設備の入替は、提供力の向上と客単価の改善につながる投資として扱われます。POSレジや受発注システムの導入では、会計データを販促や仕入れ管理に活用する目的があると対象になりやすくなります。
4つの投資に共通するのは「投資の先に新しい客層・売上がある」と説明できるかどうかです。単に古い設備を新しくするだけでは、この説明が成り立ちません。厨房設備の場合、提供時間の短縮でランチ客の回転率を上げる、といった数字を交えた説明があると評価されやすくなります。POSレジも同様に、導入後にどんなデータを何に使うのかまで書いておくと説得力が増します。
対象にならない経費の判定基準|修繕・単純な入替との違い
対象になるかどうかを分けるのは、経費が販路開拓という目的につながっているかどうかです。改装や設備投資そのものが目的化していると対象外になります。

| 経費の種類 | 対象になるか | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 老朽化した設備の単純な修繕 | 対象外 | 販路開拓との関連が説明できない |
| テーブル・椅子の入替のみ | 対象外 | 現状維持のための購入とみなされる |
| 新客層開拓のための客席改装 | 対象 | 事業計画書に開拓の目的を明記 |
| ネット予約機能つきHP制作 | 対象 | 来店前の販路拡大につながる |
同じ「店舗改装」でも、目的の書き方次第で判定が変わります。中小企業庁の公募情報でも、対象経費は「販路開拓の取り組みに要する経費」と定義されています。改装や購入の理由を、事業計画書で数字や客層の変化とあわせて説明してください。
見積書の取り方にも注意が必要です。工事費や設備費は、原則として税抜50万円を超える契約は相見積もりが必要になります。1社だけの見積もりで申請してしまい、実績報告の段階で指摘を受けるケースが見られるため、契約前の段階で複数の業者から見積もりを取っておくと安心です。
厨房設備中心の投資であればものづくり補助金、レジや予約システムなどソフトウェアの機能だけが目的ならIT導入補助金のほうが向く場合もあります。詳しくはものづくり補助金は飲食店で使える?採択事例3パターンと飲食店のIT導入補助金|名称変更後の3つの確認点で解説しています。3制度は併願できないため、投資の中心が何かで最初に決めておくと迷いません。
補助率・補助上限額とインボイス特例
補助上限額は通常枠で50万円、賃金引上げ枠等の特例を使うと最大200万円まで広がります。枠によって上限が変わるため、自店舗の状況に合う枠を選ぶことが重要です。
| 申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 50万円 | 3分の2 |
| 賃金引上げ枠等の特例 | 200万円 | 3分の2(一部条件で4分の3) |
| インボイス特例(併用可) | 上記に+50万円 | 同上 |
小規模事業者持続化補助金の公式サイトによると、賃金引上げ枠は一定の賃上げ計画を伴う場合に選べる特例です。飲食店は人手不足への対応として賃上げ計画を組み込みやすく、特例の対象になりやすい業種のひとつです。
インボイス特例は、免税事業者からインボイス発行事業者に転換した小規模事業者が対象です。個人経営の飲食店ではインボイス転換を機に申請を検討するケースも多く、通常枠や賃金引上げ枠と併用すれば上限額をさらに引き上げられます。どの枠を選ぶかによって必要な計画の内容が変わるため、申請前に自店舗がどの特例に該当するか商工会で確認しておいてください。
飲食店が交付決定を待つ間に準備しておきたいこと
交付決定を待つ間は、事業計画書の見直しと見積もりの再確認をしておくのが得策です。発注のタイミングを誤ると補助対象から外れてしまいます。

事業計画書の作成前に、必ず管轄の商工会・商工会議所へ相談してください。経営計画書には事業支援計画書という商工会側の書類が必要で、これがないと申請自体ができません。
電子申請システムjGrantsから申請し、採択発表後に交付決定通知が届いてから発注・契約に進みます。私たちは登録支援事業者として、この順番を誤って自己負担になってしまった相談を何度も見てきました。
公募開始から採択発表までは、おおむね公募開始から2〜3か月後が締切、そこから1〜2か月後に採択発表という流れが一般的です。飲食店は繁忙期・閑散期の波があるため、工事や設備入替の時期を逆算しておくと、交付決定後の動きがスムーズになります。
採択後の実績報告で飲食店がつまずきやすい点
採択後は、交付決定前に発注しないことと、実績報告用の証憑を整理しておくことの2点が重要です。この2つを守れば実績報告の負担が大きく減ります。
交付決定の通知が届く前に契約・発注・支払いをすると、その経費は補助対象から外れます。
飲食店は仕入れや設備の入替を急ぎたくなる場面が多いですが、通知が届くまでは着手しないでください。実績報告では見積書・契約書・領収書・振込明細をセットで提出するため、採択が決まった時点で書類を整理する習慣をつけておくと安心です。実績報告の具体的な進め方はAI導入補助金の実績報告の書き方|必要書類と提出の4ステップを参考にしてください。制度が違っても書類管理の考え方は共通しています。
当社はAI導入補助金の登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。飲食店の相談でも、証憑管理でつまずくケースを繰り返し見てきました。
実績報告でよく指摘されるのは、見積書と実際の請求書・領収書の品目が一致していないケースです。工事の途中で仕様を変更した場合は、変更内容を商工会や事務局に事前に相談してから進めてください。事後に報告するだけでは、変更部分が補助対象から外れてしまうことがあります。
見積書の取り方でつまずく飲食店が多い
補助金の申請では、見積書の書き方そのものが審査対象になります。金額だけが書かれた見積書は差し戻されます。
必要なのは、次の3点が読み取れる見積書です。
- 何を買うのかが型番・仕様まで書かれている(「厨房設備一式」は不可)
- 数量と単価が分かれている
- 補助対象の経費と、対象外の経費が分けて書かれている
とくに3つ目です。厨房機器の見積に設置工事費や運搬費が混ざっていると、その部分は対象外になります。業者に「補助金申請に使うので、対象経費と対象外を分けて書いてほしい」と最初に伝えてください。
相見積もりが必要な金額基準は制度と年度で変わります。申請前に公募要領で確認し、必要なら同じ仕様で2社以上から取ります。仕様が違う見積を並べても比較になりません。
まとめ: 飲食店の持続化補助金は「目的の明確さ」が採択を分ける
小規模事業者持続化補助金は、飲食店の店舗改装からホームページ制作、厨房設備、POSレジ導入まで幅広く使える制度です。ただし改装や設備投資そのものが目的化していると対象外になります。
「何を買うか」ではなく「何のために買うか」を事業計画書で明確にすることが、採択への一番の近道です。4つの投資を参考に、自店舗の計画がどの目的に当てはまるか整理してみてください。
私たちは登録支援事業者として、法人だけでなく個人経営の飲食店の申請にも数多く伴走してきました。交付決定前の発注や証憑管理でつまずく相談が多いため、早めの準備が結果的に一番の近道になります。
