ものづくり補助金は、飲食店も申請できる補助金です。ただし対象経費の中心は店舗の内装改装ではなく、厨房設備や食品製造機械への投資です。「飲食店 ものづくり補助金」で検索すると店舗改装の話が混ざりがちですが、この制度が後押しするのは生産性向上につながる設備投資です。本記事では、飲食店が対象にできる経費、採択されやすい3つの事例パターン、対象外になりやすい経費との違いを2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。第23次公募の情報を基準にしています。
この記事でわかること
- 飲食店で対象になる経費の中心
- 採択されやすい3つの事例パターン
- 対象にならない経費との違い
- 補助率・補助上限額の目安
ものづくり補助金は飲食店でも申請できるのか
結論として、飲食店もものづくり補助金の対象ですが、審査の軸は店舗の見た目ではなく設備投資の中身です。制度上は全業種が対象で、業種を理由に申請が却下されることはありません。ラーメン店・居酒屋・カフェ・惣菜販売を伴う店舗など、業態を問わず同じ基準で審査されます。
他業種の状況が気になる場合は、ものづくり補助金の農業分野における採択事例も、専用設備への投資が評価される点は共通しています。
対象になる範囲はものづくり補助金は運送業で使える?対象設備と車両の線引きでも扱っています。
実際の例はものづくり補助金|建設業の採択事例3業種と上限9,000万円でも扱っています。
対象になる範囲を先に押さえるなら、ものづくり補助金は小売業に使えない?対象になる投資の見極め方が参考になります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の公式サイトでも、対象は特定の業種に限定されていないと明記されています。ただし対象経費の中心が機械装置費であるため、「飲食店だから使えない制度」と思い込んでいる経営者に何度も出会ってきました。
飲食店は中小企業基本法上「小売業」に区分され、資本金5,000万円以下または従業員50人以下が中小企業者の基準です。業種区分ごとの詳しい基準はものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で解説しています。
飲食店で対象になる経費の中心は厨房設備・食品製造機械
飲食店で対象になる経費の中心は、厨房設備や食品製造機械の導入費です。全申請枠で機械装置・システム構築費の計上が必須になっているため、この経費を主軸にした計画が前提になります。
| 経費区分 | 飲食店での具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 全自動調理機器、急速冷凍機、食品製造ライン | 全申請枠で計上が必須 |
| 技術導入費・専門家経費 | メニュー開発の外部専門家謝金 | 機械装置費と組み合わせて計上 |
| クラウド利用費 | 生産管理システムの利用料 | 単独では主経費にできない |
補助金ポータルが整理した対象経費の一覧によると、運搬費や知的財産権関連経費なども対象になりますが、いずれも機械装置費と組み合わせて申請する位置づけです。厨房機器そのものへの投資が計画の核になります。
業態によって主軸になる機械装置は変わります。製麺・製パンを自社で行う店舗なら製麺機や自動発酵機が候補です。居酒屋であれば真空パック機や急速冷凍機、惣菜販売を伴う店舗なら食品乾燥機や充填包装機が候補になります。
共通しているのは、人の手作業を機械に置き換えることで提供数量や品質を安定させる投資である点です。既存メニューの延長ではなく、新しい提供形態を可能にする機器かどうかも判断材料になります。問われるのは、機器のスペックではなく導入後の生産性の変化。単に新しい機器に入れ替えるだけでなく、数値で説明できる計画かどうかが審査を分けます。
飲食店が採択されやすい3つの事例パターン
飲食店では、セントラルキッチン化・厨房自動化・非対面提供の仕組み化という3つの投資パターンが採択されやすい傾向にあります。単なる設備更新ではなく、生産性向上の根拠を示しやすい投資だからです。

1つ目は、店舗提供に加えて小売・卸販売にも展開するためのセントラルキッチン化です。冷凍食品や惣菜として販路を広げる計画は、新たな付加価値を数値で説明しやすくなります。
2つ目は、全自動調理機器や急速冷凍機による厨房の自動化・省人化です。人手不足対策として、限られた人員で提供数量を維持・拡大する計画に向いています。
3つ目は、券売機や配膳ロボットと厨房設備を組み合わせた非対面提供の仕組み化です。注文から提供までの工程を見直し、どこを機械に置き換えるかを具体的に示せると審査で伝わりやすくなります。
多店舗展開している事業者と、1店舗のみを経営する事業者とでは、選びやすいパターンが変わります。多店舗であればセントラルキッチン化で各店舗への供給を効率化しやすく、1店舗のみであれば厨房自動化や非対面提供の省力化のほうが投資規模に見合いやすい傾向があります。店舗数や現在の人員配置に合わせて、無理のない投資規模から検討するのが現実的です。
店舗改装費・什器購入費はなぜ対象にならないのか
内装改装費や什器の単独購入は、生産性向上に直結する機械装置とみなされないため対象外です。テーブル・椅子・看板の入替だけを目的にした投資も同様です。

「店舗をリニューアルしたいから」という理由だけで申請すると、対象経費が組み立てられず審査以前の段階で行き詰まります。投資の目的を「集客の見た目」ではなく「生産性の向上」に据え直す必要があります。
内装改修や広告費、小規模な什器購入を中心に考えているなら、小規模事業者持続化補助金のほうが制度の趣旨に合います。レジや会計ソフトなどITツール中心の投資は、飲食店のIT導入補助金|名称変更後の3つの確認点で対象範囲を解説しています。
補助率・補助上限額はいくらか
補助上限額は通常最大3,000万円で、大幅な賃上げ特例を適用すると最大4,000万円まで上がります。補助率は申請枠や事業者規模によって2分の1または3分の2、補助下限額は100万円です。
| 項目 | 通常の上限 | 大幅賃上げ特例 |
|---|---|---|
| 補助上限額 | 最大3,000万円 | 最大4,000万円 |
| 補助率 | 1/2(小規模事業者は2/3) | 枠により2/3 |
| 補助下限額 | 100万円 | 100万円 |
中小企業経営支援事務所が整理した第23次公募の要件では、製品・サービス高付加価値化枠の補助上限額が3,000万円と説明されています。飲食店の申請もこの枠が中心になります。
例えば、急速冷凍機とセントラルキッチン用の製造ラインで契約額1,800万円の投資を行う場合、補助率1/2なら900万円、賃上げ特例で2/3が適用されれば1,200万円が補助される計算です。自己負担額を早めに試算しておくと資金計画が立てやすくなります。
飲食店の審査で重視される付加価値額の根拠
審査で最も重視されるのは、設備投資によって付加価値額がどれだけ伸びるかという数値の根拠です。機器のスペックを並べるだけでは、審査側に生産性向上の実感が伝わりません。
私も相談の現場で、「新しい厨房機器を入れれば効率化する」とだけ説明し、提供数量や人時生産性の変化を数字で示せていない飲食店経営者を見てきました。導入前後で提供数量・作業時間・廃棄率がどう変わるかを、事業計画書に具体的に落とし込む必要があります。
セントラルキッチン化であれば、卸・小売への販路拡大による売上増加分を、根拠となる契約見込みとあわせて示せると説得力が増します。設備のスペックではなく、投資後の変化を数字で語れるかどうかが分かれ目です。
数値目標は「導入前後で何が何倍になるか」という形で示すと審査側に伝わりやすくなります。例えば、手作業で1時間に50食だった仕込みが、機器導入後に1時間120食まで増える見込みだったとします。
その根拠となる稼働時間や人員配置もあわせて記載してください。出発点は、現状の作業時間を実際に計測した数字。感覚値ではなく実測値から積み上げると、根拠のブレが少なくなります。付加価値額の算出には、労働生産性の向上分だけでなく、廃棄ロス削減による原価率の改善も加味できます。
飲食店が申請するまでの4ステップ
飲食店がものづくり補助金を申請するには、GビズID取得から交付決定後の発注まで4ステップで進みます。交付決定前に発注してしまうと補助対象外になる点に注意が必要です。

GビズIDを取得したら、生産性向上の数値目標を含めた事業計画書を作成し、電子申請システムから提出します。採択後もすぐに発注せず、交付決定の通知を受け取ってから機械装置の発注に進んでください。
当社は登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。飲食店特有の経費区分に迷う場合は、無料相談で投資内容を伝えてください。
飲食店が申請でつまずきやすい失敗3つ
よくある失敗は、店舗改装を主目的にすること、数値目標があいまいなこと、交付決定前に発注してしまうことの3つです。いずれも計画段階の見直しで防げます。
採択されても、交付決定の通知を受け取る前に機械装置を発注・契約してしまうと、その経費は補助の対象になりません。見積もりの取得までにとどめ、契約は交付決定後に進めてください。
1点目は、内装改装や什器購入を主目的にしたまま申請してしまうケースです。2点目は、「効率化する」とだけ書いて提供数量や作業時間の目標値を示せていないケースです。3点目は、採択の連絡を受けてすぐに発注してしまい、対象経費から外れてしまうケースです。
補助金全般に共通する失敗パターンはAI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策でも整理しています。制度は違っても書類準備の考え方に重なる部分が多いので参考にしてください。
まとめ: 店舗改装ではなく厨房設備・食品製造ラインへの投資を軸に検討する
ものづくり補助金は、飲食店も申請できる制度ですが、対象経費の中心は店舗の内装改装ではなく厨房設備や食品製造機械です。セントラルキッチン化・厨房自動化・非対面提供の仕組み化という3パターンは、生産性向上の根拠を示しやすく採択につながりやすい投資です。
内装改装費や什器の単独購入は対象外になるため、「店舗をリニューアルしたい」という動機だけで申請を進めると、経費区分の段階で行き詰まります。投資の目的を生産性向上の数値目標に置き換えて計画を作ることが欠かせません。
多店舗展開なのか1店舗経営なのかによっても、セントラルキッチン化・厨房自動化・非対面提供のどれが投資規模に見合うかは変わります。自店舗の人員配置や提供数量の現状を先に整理してから、どの経費区分に当てはまるかを検討する順序がおすすめです。
交付決定前の発注は補助対象外になるため、採択後のスケジュール管理も含めて早めに準備してください。私たちは2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点に登録支援事業者として申請支援に携わってきました。経費区分の切り分けに迷う場合は、無料相談で投資内容を伝えてください。
