ものづくり補助金は運送業の設備投資にも使え、2026年度からは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という名称で運用されています。動態管理システムの構築やAGV・自動倉庫の導入など、庫内作業の自動化に使われる事例があります。本記事では、運送業で対象になる設備投資3分野、トラック本体が対象外になる理由、3つの申請枠の補助率・上限額を2026年9月時点の情報で整理します。
※ 2026年9月時点の情報です。第1回公募の申請受付は2026年8月31日に開始予定です。
この記事でわかること
- 運送業で対象になる設備投資3分野
- トラック本体・汎用車両が対象外になる理由
- 3つの申請枠の補助率・補助上限額
- IT導入補助金との使い分け
2026年の統合で「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は運送業も対象に
ものづくり補助金は、生産性向上につながる機械装置やシステムへの投資を支援する制度で、運送業も対象です。全業種が対象ですが、対象経費の中心が機械装置・システム構築費であるため、庫内設備の刷新を検討する運送業との相性が良い制度です。
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私たちセブンセンシズ株式会社(大阪市東成区・2020年3月創業)は、登録支援事業者として補助金の相談を受けています。「ものづくり補助金は工場を持つ製造業向け」という思い込みを運送業の経営者からもよく聞きます。
実際には、庫内作業の自動化や新しい物流サービスの立ち上げでも活用できます。中小企業者の判定基準はものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で解説しているので、あわせて確認してください。
中小企業庁が公開した第1回公募要領では、申請受付が2026年8月31日に始まり、締切は2026年9月30日18時と案内されています。採択はゴールではなく、実績報告を終えて初めて交付額が確定する点も忘れずに押さえておいてください。
「生産性向上促進補助金」という名前で探している場合
正式名称は年度で変わっており、いま探すべきは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。
過去に「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称で公募されていたため、その名前で検索される方が多くいます。同じ制度の系譜ですが、名称と枠組みが変わっています。
| 探している名称 | 現在の扱い |
|---|---|
| ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 名称変更。現在は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 |
| ものづくり補助金 | 通称。上記を指すことが多い |
| 新事業進出補助金 | 2026年の統合で組み込まれた枠 |
古い名称のまま公募要領を探さないでください。年度の違う要領を読むと、対象経費も上限額も実際と食い違います。運送業の場合、対象になる設備の線引きが年度で変わっているため、ここを間違えると計画ごと作り直しになります。
私たちが相談を受ける中でも、前年度の要領を読んで準備を進めていたという例が実際にあります。名称で検索するときは、必ず年度を添えて確認してください。
運送業で対象になる設備投資3分野
運送業の対象設備は、動態管理・点呼労務管理システム、庫内自動化設備、新サービス向けのAI運行管理システムの3分野に整理できます。同じ機械装置費でも、狙う効果によって選ぶ設備が変わります。

運送業の対象設備を整理した解説記事によると、デジタコと連携する動態管理システムや点呼・労務管理システムの構築費が対象になります。庫内では、AGV(自動搬送ロボット)や自動倉庫、仕分け・ピッキング効率化設備、コンベヤ、倉庫管理システム(WMS)が対象設備として挙げられています。
フォークリフトは用途によって扱いが分かれるため、事業計画で使い道を具体的に説明できるかが判断の分かれ目になります。判定を左右するのは、汎用的な庫内移動用途で終わるか、自動化ラインの一部として組み込む計画かの違い。後者であれば、対象として認められやすくなります。
もう一つの分野が、AI運行管理システムを自社で開発し外部に販売する取り組みです。既存の配送業務を効率化するだけでなく、新しいサービスとして外販する計画であれば、後述する新事業進出枠の対象になります。
私たちが相談を受けた運送事業者の中にも、庫内の仕分け作業を人手だけで回していて、繁忙期に出荷が遅れるという悩みを持つ会社がありました。仕分け・ピッキング効率化設備を導入すれば、繁忙期でも一定の処理能力を確保しやすくなります。設備投資の規模感は事業計画によって大きく変わるため、まずは自社のボトルネックがどの工程にあるかを洗い出すところから始めてください。
トラック本体・汎用車両が対象外になる理由
公道を走る一般的なトラックや営業車は、原則として補助対象になりません。対象になるのは、あくまで事業計画に紐づく専用の機械装置・システムです。

| 区分 | 対象になる例 | 対象外になる例 |
|---|---|---|
| 車両・輸送機器 | 事業計画に紐づく特殊な輸送用機器 | 公道を走る汎用的なトラック・営業車 |
| システム | 動態管理・WMSの構築費 | 日常業務で使う汎用パソコン単体 |
| 発注時期 | 交付決定後に発注した経費 | 交付決定前に発注した経費 |
他の用途にも使える一般的なトラック・営業車は対象外です。庫内自動化設備やシステム構築費など、事業計画の効果に直結する専用の機械装置を中心に計上してください。
パソコン・タブレットなど日常業務で使う汎用品も対象外です。事業計画で説明する効果に特化した機器かどうかが、審査の分かれ目になります。
運送業はものづくり補助金のどの枠を選ぶか|新事業進出枠と上限9,000万円
申請枠は革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つで、上限額は2,500万円から最大9,000万円まで幅があります。投資の規模と目的に合う枠を選ぶ必要があります。
| 申請枠 | 補助率 | 補助上限額 | 実施期間 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 1/2(特例2/3) | 2,500万円(特例3,500万円) | 交付決定から10か月 |
| 新事業進出枠 | 1/2(特例2/3) | 7,000万円(特例9,000万円) | 交付決定から14か月 |
| グローバル枠 | 2/3 | 7,000万円(特例9,000万円) | 交付決定から14か月 |
庫内設備を刷新して既存業務の効率を上げる程度なら、革新的新製品・サービス枠が候補になります。新しい物流サービスへの参入を伴う投資なら、新事業進出枠のほうが上限額に余裕があります。
新事業進出枠の運送業採択事例を紹介した記事によると、軽貨物運送業者向けにAI運行管理システムを開発・販売する取り組みや、ドローンを活用した物流・監視サービスへの参入、デジタル対応レンタル倉庫の整備が採択されています。既存業務の延長にとどまらない新規性が、新事業進出枠では評価されやすい傾向です。
例えば、庫内自動化設備を1,200万円で導入する場合、補助率1/2なら600万円、特例の2/3が適用されれば800万円が補助される計算です。新サービスの立ち上げに数千万円規模の投資を計画するなら、新事業進出枠での申請を検討してください。
海外向けの輸出入貨物を扱う運送業者や、海外拠点の物流機能を強化したい会社は、補助率2/3のグローバル枠も選択肢に入ります。国内向けの設備投資と補助率の水準が異なるため、輸出比率や海外展開の計画がある場合は、グローバル枠の対象要件を先に確認しておくと申請枠を選び直す手間を減らせます。

何から着手すればよいか迷う場合は、まずGビズIDプライムの取得から始めてください。取得には郵送で2〜3週間、マイナンバーカードによるオンライン申請なら最短即日〜1週間かかります。事業計画書の作り込みには一定の時間がかかるため、繁忙期を避けて早めに準備を進めるのが安全策です。
資本金3億円・従業員300人|運輸業の対象ライン
運送業(運輸業その他)の中小企業者は、資本金3億円以下または従業員300人以下で判定されます。小規模事業者は従業員20人以下が目安です。
| 区分 | 資本金の額 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 中小企業者(運輸業その他) | 3億円以下 | 300人以下 |
| 小規模事業者(運輸業その他) | — | 20人以下 |
応募時点で常時使用する従業員が1人以上いることが前提条件で、従業員0名の事業者は全ての申請枠で対象外です。一人で開業した軽貨物ドライバーが単独で申請できない点は見落とされがちです。
中小企業者の詳しい判定基準や、みなし大企業に該当するかどうかの考え方はものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で解説しています。従業員を雇用してから改めて検討する必要があります。
具体例で考えてみます。資本金5,000万円・従業員45名の運送会社を想定します。基準は資本金3億円以下または従業員300人以下です。資本金・従業員数のどちらも基準内のため、中小企業者に該当します。従業員が20人を超えているため、小規模事業者向けの優遇は対象外になる点も併せて確認してください。
ソフト導入と設備投資、運送業はどちらから始めるか
運行管理ソフトの導入が中心ならIT導入補助金、庫内設備への投資が中心ならものづくり系が向いています。対象経費の性質が異なるため、投資内容によって選ぶ制度が変わります。
| 項目 | IT導入補助金(通常枠) | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 運行管理・帳票ソフトの導入 | 庫内設備・新サービスへの投資 |
| 補助上限額 | 最大450万円 | 2,500万円〜9,000万円 |
| 対象経費の例 | 運行管理・配送ルート最適化ソフト等 | AGV・自動倉庫・動態管理システム構築費等 |
既存のクラウドサービスを契約するだけならIT導入補助金のほうが手続きは軽く済みます。庫内設備を丸ごと入れ替える、あるいは新サービスを立ち上げるといった規模の投資なら、ものづくり系の上限額が生きてきます。運行管理システムの対象範囲や車載器の扱いは運送業のIT導入補助金|デジタコ・運行管理の対象範囲で詳しく解説しています。
対象経費が重複していなければ、同一年度に両方へ申請すること自体は可能です。ただし公募スケジュールや実績報告の期限は別管理になるため、申請枠ごとにチェックリストを分けて管理してください。
自己資金だけで両方の投資を同時に進めるのは負担が大きいはずです。運行管理ソフトの導入をIT導入補助金、庫内自動化設備の刷新をものづくり系に振り分ければ、年度をまたいで段階的に投資を進められます。どちらも交付決定前の発注は対象外になるため、契約時期だけは必ず先に確認してください。
汎用車両の計上で審査落ちしないために
運送業でよくある失敗は、汎用車両を対象経費に含めること、従業員0名で申請してしまうこと、交付決定前に発注することの3つです。いずれも準備段階で防げるミスです。
私も相談の現場で、営業車の入れ替え費用をそのまま計上しようとして、汎用性を理由に対象外と指摘された事業者を見てきました。事業計画で説明する効果に機器を絞り込むことが重要です。
元請・傭車が混在する運行体制では、契約や実績報告の名義をどちらの会社にするか事前に整理しておく必要があります。名義の混乱は交付決定後のトラブルにつながりやすいため、早めの整理をおすすめします。申請全体でよくある失敗パターンはAI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策でも整理しているので、あわせて確認してください。
私たちが相談を受けた運送事業者でも、稼働実績を示すデータが不十分で実績報告に苦労したケースがありました。実績報告の通りやすさを左右するのは、日頃からの稼働ログの残し方次第。導入した設備の稼働ログは、早い段階から記録する運用にしておくと安心です。
まとめ: 汎用車両を外し、専用設備に絞った計画を
ものづくり補助金は、2026年度から新事業進出・ものづくり商業サービス補助金として、運送業の設備投資にも使える制度です。動態管理システムや庫内自動化設備、新サービス向けのAI運行管理システムが対象になり、公道を走る汎用車両は対象外です。
申請枠は革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つで、上限額は2,500万円から最大9,000万円まで幅があります。庫内設備の刷新なら革新的新製品・サービス枠、新サービスへの参入を伴うなら新事業進出枠が候補になります。
汎用性の高いトラックや営業車を対象経費に含めてしまうと、審査で削られる原因になります。自社の設備投資がどの枠に合うか、対象経費の切り分けに迷う場合は、無料相談で状況を伝えてください。私たちは2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点に登録支援事業者として申請支援に携わってきました。
