「IT導入補助金」という名称の制度は、2026年現在「デジタル化・AI導入補助金2026」として運用されており、飲食店も引き続き対象です。名称は変わりましたが、モバイルオーダーや会計ソフトなどITツール導入費用の一部を補助する仕組みは変わっていません。中小企業基本法上、飲食店は「小売業」に区分されるため、対象になるかどうかの基準は他業種と少し違います。本記事では、名称変更で何が変わったのか、飲食店が対象になる条件、補助率、申請の流れを整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。
この記事でわかること
- IT導入補助金からデジタル化・AI導入補助金2026への変更点
- 飲食店が中小企業の基準に該当するかどうか
- 飲食店の補助率・上限額の目安
- 以前の制度を使った店舗が注意すべき点
「IT導入補助金」はまだ使えるのか
IT導入補助金は名称が変わっただけで、飲食店向けの支援内容は今も続いています。検索で使われる「IT導入補助金」という言葉自体が古い名称になっただけで、制度そのものが終了したわけではありません。
つまずきやすい点を先に押さえるなら、歯科医院のIT導入補助金が参考になります。
関連する内容については、製造業のIT導入補助金にまとめています。
つまずきやすい点は、美容室のIT導入補助金で解説しています。
IT導入補助金の変更点を整理した解説記事によると、2026年度から「IT導入補助金」は正式に「デジタル化・AI導入補助金」へ改称されました。最大450万円という補助上限額の骨格自体は変わっておらず、通常枠・インボイス対応類型・電子取引類型の3つに整理されています。

私たちが飲食店から相談を受ける際も、「IT導入補助金はもう終わったのか」と聞かれることがよくあります。名称が変わったタイミングで制度自体がなくなったと誤解している経営者は少なくありません。
呼び方が数年おきに整理されてきたのは事実ですが、ITツール導入費用の一部を国が補助するという骨格は開始当初から一貫しています。焦って古い情報を鵜呑みにするのではなく、まずは現行の枠組みの確認から。
検索エンジンに「it導入補助金」と入力する人の多くは、以前この制度名を見聞きした経験がある層です。古い制度名で情報収集を始めても、現行の公募要領にたどり着けば内容自体は正しく理解できます。名称の違いに戸惑って手が止まってしまうことのほうが、実際の申請よりも大きなハードルになりがちです。
飲食店は中小企業の基準に該当するのか
飲食店は中小企業基本法上「小売業」に区分され、資本金5000万円以下または従業員50人以下が基準です。製造業やサービス業とは基準が異なるため、自店の規模で確認しておく必要があります。
あわせて宿泊業のIT導入補助金は有利?もご覧ください。
参議院法制局が整理した中小企業基本法の業種別基準では、製造業その他は資本金3億円以下・従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下・従業員100人以下と定められています。サービス業は資本金5000万円以下・従業員100人以下、小売業は資本金5000万円以下・従業員50人以下です。
中小企業診断士試験の過去問解説サイトでは、飲食店の扱いについて「飲食店は小売業と同じ扱いとなります」と説明されています。統計上は「宿泊業、飲食サービス業」に分類される飲食店ですが、中小企業基本法上の類型では小売業として扱われる点に注意してください。

多店舗展開で従業員数が増えてきた飲食店ほど、この基準を早めに確認しておく価値があります。資本金と従業員数はどちらか一方を満たせばよいため、法人化の際に資本金を抑えておくことで対象を維持しやすくなるケースもあります。詳しい業種区分の全体像はIT導入補助金の中小企業とは?業種別4区分の資本金・従業員数で整理しています。
対象になるITツールをおさらいする
対象ツールは受発注・モバイルオーダー・AI需要予測の3分野が中心で、この分類は名称変更前後で変わっていません。業務のどこがボトルネックかによって、優先して導入すべきツールが変わります。
| 分野 | 具体例 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 受発注システム | FAX・電話発注のアプリ化 | 発注ミスと確認作業の削減 |
| モバイルオーダー・POSレジ | 卓上タブレット注文 | 注文ミスと会計時間の削減 |
| AI需要予測・自動シフト | 来客予測ツール | 食品ロスと過剰発注の削減 |
レジや券売機などのハードウェアは、インボイス対応類型で対象ソフトと同時導入する場合に限り対象です。単体でハードウェアだけを申請することはできません。分野ごとの対象・対象外の線引きはAI導入補助金の対象ツール6分野|対象外との見分け方で解説しています。
飲食店の補助率・上限額はいくらか
通常枠は補助率1/2以内・上限450万円、インボイス対応類型は上限350万円で、賃上げ要件を満たすと補助率が上がります。枠によって数字が変わるため、自店がどの枠に当てはまるかを先に確認してください。
通常枠の補助率・補助上限額のページによると、賃上げ要件を満たすと通常枠の補助率は1/2から2/3に引き上がり、導入するプロセス数に応じて上限額も段階的に上がります。
| 申請枠 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 1/2以内(賃上げ要件達成で2/3以内) | 5万円〜450万円 |
| インボイス対応類型 | 50万円以下は3/4〜4/5、超過分は2/3 | 350万円以下 |
例えば客単価3,000円・席数20席の居酒屋が、モバイルオーダーと会計ソフトを合わせて年間60万円で契約したとします。補助率1/2でも30万円、賃上げ要件を満たして2/3なら40万円が補助される計算です。
小規模なカフェの場合も考え方は同じです。席数10席・客単価800円の店舗が、POSレジと予約システムを年間25万円で導入するとします。
インボイス対応類型なら50万円以下の部分に3/4〜4/5の高い補助率が適用され、実質負担は5〜6万円程度に収まる試算になります。自店の契約額に補助率を掛け合わせるだけで、実質負担額を試算できます。
契約額別の試算例はAI導入補助金はいくらもらえる?3つの枠の上限額と計算例で詳しく紹介しています。
個人経営・小規模店舗でも申請できるのか
個人経営の飲食店でも、GビズIDとSECURITY ACTIONの宣言があれば法人と同じ条件で申請できます。開業したばかりで実績が浅い店舗でも、必要書類さえ揃えば申請自体は可能です。
経理・総務の専任担当がいない個人店ほど、書類作成を外部のIT導入支援事業者にどこまで任せられるかが申請のスムーズさを左右します。契約前に相談範囲を確認しておくと、後の手戻りを防げます。
当社はAI導入補助金の登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。申請の全体フローを最初から知っておきたい場合はAI導入補助金の申請のやり方|受給までの5ステップを解説を先に読んでおくと迷いにくくなります。
なお、飲食店を含む商業・サービス業は従業員5人以下で「小規模事業者」にも該当します。個人経営の飲食店の多くはこの基準を満たすため、インボイス対応類型の高い補助率をあわせて確認しておく価値があります。業種区分の詳しい基準はIT導入補助金の中小企業とは?業種別4区分の資本金・従業員数で解説しています。
「IT導入補助金」時代に使った店舗が注意したい4つの実務ポイント
過去にIT導入補助金を利用した店舗も再申請できますが、2026年度から追加された要件を確認しておく必要があります。制度自体は継続していますが、細部の手続きは更新されています。
旧制度の案内資料や様式は、現行のインボイス対応類型・電子取引類型とは項目が異なります。必ず最新の公募要領を確認してから申請書類を準備してください。
1点目は、2回目以降の申請で「3年間の事業計画の策定」と「賃上げ計画の表明」が必須になったことです。以前は求められなかった書類のため、初めて申請する店舗より準備に時間がかかります。
2点目は、「みなし同一法人ルール」が削除されたことです。以前は代表者が同じ複数法人は1社としてしか申請できませんでしたが、現行制度ではそれぞれの法人が個別に申請できます。多店舗をそれぞれ別法人で運営しているオーナーには追い風です。
3点目は、交付決定前購入がNGという原則は変わっていないことです。以前の感覚で先に発注してしまうと、補助対象から外れます。
4点目は、GビズIDやSECURITY ACTIONの宣言が失効していないかの確認です。しばらく利用していない店舗ほど見落としがちな盲点。再取得や更新の手間を早めに確認しておくと安心です。
私も過去の相談事例で、以前の枠の記憶のまま申請書類を準備し、必要書類の増加に気づかず差し戻しになったというケースを確認しています。複数法人で店舗を運営している場合は、それぞれの法人で個別に要件を確認してください。
よくある失敗パターン全般はAI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策でも整理しているので、あわせて確認してください。
IT導入補助金と他の補助金との使い分け
ITツール導入中心ならIT導入補助金、店舗改装や広告費中心なら小規模事業者持続化補助金が向いています。目的が異なるため、対象経費が重ならないよう切り分ける必要があります。
関連する内容として小規模事業者持続化補助金も公開しています。
| 項目 | IT導入補助金(通常枠) | 小規模事業者持続化補助金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | ITツール導入による業務効率化 | 販路開拓・店舗改装等の経費 |
| 補助上限額 | 最大450万円 | 50万円〜200万円程度 |
| 飲食店での使いどころ | モバイルオーダー・受発注の刷新 | 新メニューのチラシ・SNS広告 |
対象経費が重複していなければ、同一年度に両方へ申請すること自体は可能です。ただし公募スケジュールと実績報告の期限は別管理になるため、申請枠ごとにチェックリストを分けて管理してください。
飲食店がIT導入補助金を申請する流れ
申請から入金までは、要件準備→ツール選定→交付申請→実績報告の4ステップで進みます。採択はゴールではなく、実績報告を終えて初めて交付額が確定します。

繁忙期に導入を始めると、スタッフが操作に慣れないまま現場が混乱しやすくなります。閑散期に交付申請から導入・研修までを終わらせ、繁忙期には運用が安定した状態で臨むのが理想的な逆算です。
実績報告の必要書類まで含めた手順はAI導入補助金の実績報告の書き方|必要書類と提出の4ステップで整理しています。
まとめ: 名称変更よりも「小売業区分」の基準確認を優先する
IT導入補助金は名称が変わっただけで、飲食店向けの支援内容は今も続いています。まずは自店が中小企業基本法上の小売業区分(資本金5000万円以下または従業員50人以下)に該当するかを確認してください。
以前この制度を使ったことがある店舗も再申請でき、対象ツールや補助率の骨格は大きく変わっていません。ただし枠の名称や様式は更新されているため、古い資料をそのまま使い回さず、最新の公募要領で確認することが手戻りを防ぐ近道です。
制度の全体像や申請の細かい手順に不安がある場合は、登録支援事業者への早めの相談も選択肢のひとつ。一店舗で申請から実績報告までの流れをつかめれば、多店舗展開時にも同じ手順を横展開しやすくなります。
