建設業が使える助成金は、人材開発支援助成金・業務改善助成金・キャリアアップ助成金・トライアル雇用助成金の4制度が中心です。いずれも要件を満たせば審査なしで受給でき、競争審査のある補助金より着手しやすいのが特徴です。本記事では、各制度の対象者と助成額の目安、建設業特有の申請の注意点、補助金との使い分けの順番を2026年9月時点の情報で整理します。
※ 2026年9月時点の情報です。
この記事でわかること
- 建設業で使える主要な助成金4制度
- 各制度の対象者と助成額の目安
- 補助金との違いと使う順番
- 申請でつまずきやすいポイント
建設業が使える助成金とは|補助金との違いを先に整理
助成金は、要件さえ満たせば審査を経ずに受給できる、建設業にとって着手しやすい制度です。厚生労働省が所管し、雇用の安定や人材育成に関する取り組みが対象になります。採択数が限られ競争審査のある補助金とは、この「要件充足型」という性質が異なります。
助成金と補助金の基本的な違いや探し方は、中小企業の助成金とは?補助金との違いと探し方4ステップで解説しています。本記事では建設業に絞り、使える制度と金額を具体的に見ていきます。
| 項目 | 助成金(厚生労働省系) | 補助金(経済産業省・中小企業庁系) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 雇用の安定・人材育成 | 生産性向上・販路開拓・設備投資 |
| 審査の有無 | 要件を満たせば原則受給 | 競争審査があり不採択もある |
| 建設業の例 | 人材開発支援助成金・業務改善助成金など | AI導入補助金・持続化補助金など |
厚生労働省の助成金の財源は、事業主が納める雇用保険料(雇用保険二事業)です。保険料を納めている事業主なら申請できるという点も、税金を原資とする補助金との大きな違いです。
私たちがAI導入補助金の登録支援事業者として建設業の相談を受ける中でも、助成金の存在を知らないまま補助金だけを探している経営者が少なくありません。共通点は、要件充足型という受給のしやすさ。まず自社が使える助成金を洗い出すところから始めてください。
建設業向け助成金の一覧|人材確保・育成に使える4制度
建設業で使いやすい助成金は、人材の確保・育成・定着に関わる4制度に絞り込めます。制度ごとに対象になる取り組みが異なるため、まず全体像をつかんでください。
建設業以外の業種で美容室の助成金がどう当てはまるかは、美容室が使える助成金の基本と金額の目安でも解説しています。

1つ目は人材開発支援助成金(建設業訓練コース)です。認定訓練の費用と受講中の賃金を助成します。2つ目は業務改善助成金で、最低賃金の引き上げと設備投資をセットで支援します。
3つ目はキャリアアップ助成金(正社員化コース)です。有期雇用の職人を正社員に転換すると支給されます。4つ目はトライアル雇用助成金で、未経験者を試用雇用で採用する際に使えます。
| 制度 | 対象 | 助成額の目安 |
|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 認定訓練を実施した中小建設事業主 | 経費1/6・賃金日額3,800円 |
| 業務改善助成金 | 最低賃金を引き上げた中小企業 | 助成率3/4〜4/5、上限600万円 |
| キャリアアップ助成金 | 有期雇用者を正社員化した事業主 | 1人40万円(重点支援対象者は80万円) |
| トライアル雇用助成金 | 未経験者を試用雇用した事業主 | 月額4万円×最長3か月 |
金額はいずれも目安です。年度ごとに支給要領が見直されるため、申請前には必ず最新の要領を労働局またはハローワークで確認してください。
人材開発支援助成金(建設業訓練コース)とは|対象と助成額
人材開発支援助成金の建設業訓練コースは、都道府県認定訓練の経費と賃金を助成します。対象は、都道府県知事の認定を受けた職業訓練を実施した中小建設事業主等です。
助成額の目安は、経費が6分の1、訓練を受けた日の賃金は1人1日あたり3,800円とされています(補助金ポータルの解説記事)。制度の全体像は厚生労働省の建設事業主等に対する助成金ページで確認できます。
同じコース内には、実技を伴う訓練を対象にした建設労働者技能実習コースもあります。若手の職人を育てながら費用の一部を国に負担してもらえる、建設業特有の制度です。
たとえば、新人の型枠工に3日間の認定訓練を受けさせた場合、経費の6分の1に加えて、訓練を受けた3日分の賃金(1日3,800円)も助成の対象になります。
申請窓口は、本社を管轄する労働局です。認定訓練は開始前の計画届が前提のため、訓練日程が決まった時点で早めに相談してください。
現場が立て込む時期に訓練の申し込みが後回しになりがちです。比較的余裕のある時期から訓練計画を立てておくと、認定手続きに間に合いやすくなります。
業務改善助成金とは|賃上げと設備投資を同時に進める建設業のケース
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げた建設業の設備投資を助成します。対象は中小企業・小規模事業者で、従業員がいない事業者は対象外です。
助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら5分の4、1,050円以上なら4分の3です。助成上限額は引き上げる人数と賃上げ額のコースによって段階的に変わり、最大600万円まで設定されています(厚生労働省の業務改善助成金ページ)。
たとえば、重機オペレーターの最低賃金を引き上げつつ、測量機器や施工管理ソフトの導入費に充てる使い方が考えられます。賃上げと設備投資を同じ計画にまとめられるのが、他の助成金にはない特徴です。
対象になる中小企業の範囲は業種で異なります。建設業は、資本金3億円以下または常時使用する従業員300人以下のいずれかを満たせば対象です。対象経費には、機械設備のほか、就業規則の整備にかかる社会保険労務士費用も含まれます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは|有期雇用の職人を正社員にする
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、有期雇用の職人を正社員化すると支給されます。建設業は日雇い・有期雇用の職人が多く、活用しやすい制度のひとつです。
支給額は中小企業で1人あたり40万円が目安です。過去の正規雇用経験が少ない「重点支援対象者」であれば、2期分で80万円まで増えます。2026年度からは、転換実績をウェブサイト等で公表した場合の情報公表加算(20万円)も新設されました(補助金ポータルの解説記事)。
雇用形態や雇用期間の連続性など、対象者としての要件を満たしているかは転換前に確認してください。要件を誤ると不支給になります。
申請の前提として、正社員転換の規定を含む就業規則の整備と、転換前後の賃金台帳・出勤簿の保存が必要です。書類が整っていないと、転換の事実そのものを証明できません。建設業は現場ごとに勤怠管理が分かれやすいため、本社での一元管理を早めに整えておくと安心です。
トライアル雇用助成金とは|未経験者を試用雇用で採用する
トライアル雇用助成金は、未経験者を試用雇用した建設業に月額最大4万円を支給します。建設業の人手不足対応として使いやすい制度です。
対象者は、ハローワーク等の紹介を経て無期雇用を希望する求職者で、離職を繰り返している等の要件のいずれかに該当する人です。支給額は月額最大4万円(母子家庭・父子家庭は5万円)で、雇い入れの日から最長3か月間受け取れます(厚生労働省のトライアル雇用助成金ページ)。
未経験者をいきなり正社員採用するのは、建設業に限らずハードルが高いものです。試用期間中の負担を国が一部肩代わりしてくれる制度と考えると、活用の判断がしやすくなります。
たとえば、未経験の見習いをトライアル雇用した場合、3か月間で最大12万円(月4万円×3か月)を受け取りながら、適性を見極めたうえで正社員への切り替えを判断できます。
求人はハローワークまたは民間職業紹介事業者を経由したものに限られます。トライアル雇用の期間中に本採用を見送ることも制度上は可能ですが、継続雇用を前提に採用計画を立てることが制度の趣旨に沿います。
助成金と補助金の使い分け|建設業が優先すべき順番
建設業はまず助成金で採用・定着を固め、その後に補助金で設備投資に進むのが基本です。申請の手順自体は、4制度ともおおむね共通しています。

多くの助成金は、取り組みを始める前に計画届を出すことが前提です。実施後、実績報告書を提出して審査を受け、認められてから支給される流れになります。
人材育成と賃上げの土台を整えたら、次はITツール導入や設備投資を補助金で進める段階です。施工管理アプリの導入は建設業の2024年問題をAI導入補助金でどう埋めるか、販路開拓は小規模事業者持続化補助金2025|建設業の対象条件と経費で解説しています。
機械設備への投資規模が大きい場合はものづくり補助金|建設業の採択事例3業種と上限9,000万円、事業の再構築を伴う場合は事業再構築補助金は建設業も対象|3つの事例と今の後継制度も参考にしてください。助成金と補助金は対象経費が重複しなければ、同一年度での併用も可能です。
ただし、同じ従業員の人件費を複数の助成金で重複して申請することはできません。対象期間や対象者が重ならないよう、着手前に整理しておいてください。
申請窓口も制度によって異なります。助成金は労働局やハローワーク、補助金は事務局や商工会議所が窓口になることが多く、同じ「窓口」だと思い込むと相談が空振りになります。次の章で制度ごとの窓口を整理します。
建設業向け助成金の相談窓口|労働局・ハローワーク・社会保険労務士
助成金の相談窓口は、制度によって労働局・ハローワーク・社会保険労務士の3つに分かれます。窓口を取り違えると、同じ内容を何度も説明し直すことになります。
人材開発支援助成金と業務改善助成金は、本社を管轄する労働局が窓口です。キャリアアップ助成金も労働局が窓口ですが、就業規則の整備が絡むため、あわせて社会保険労務士に相談する事業主が多い制度です。
トライアル雇用助成金は、求人票を出すハローワークが窓口になります。採用を検討し始めた段階から相談しておくと、対象者の要件を満たすかどうかを求人票の作成時点で確認できます。
書類作成に不安がある場合は、社会保険労務士へのアウトソースも選択肢のひとつです。就業規則の整備や賃金台帳の様式まで含めて相談できるため、実績報告の段階での証憑不足を防ぎやすくなります。
建設業が申請でつまずきやすい3つの失敗パターン
建設業がつまずくのは、計画届の遅れ・対象者要件の見落とし・証憑不足の3点です。制度の難しさより、建設業特有の事業運営が原因になりがちです。

1つ目は、取り組みを始めてから計画届を提出してしまうケースです。多くの助成金は事前の計画届が前提のため、着手後の届出は対象外になります。
2つ目は、対象者要件を確認せずに採用や転換を進めてしまうケースです。要件を満たさない人を対象にすると不支給になるため、着手前の確認を徹底してください。
3つ目は、訓練や雇用の記録を残さず、実績報告の段階で証憑が足りなくなるケースです。証憑管理の鍵は、着手前からの記録習慣。実績報告の詳しい進め方は建設業の実績報告書|下請け構造でも迷わない3つの証憑ポイントでも扱っています。
当社は2020年3月創業、大阪市東成区を拠点に、AI導入補助金の登録支援事業者として建設業からの相談を数多く受けてきました。助成金の相談でも、計画届の提出タイミングでつまずくケースを繰り返し見ています。
まとめ: 建設業はまず助成金から着手する
建設業が使える助成金は、人材開発支援助成金・業務改善助成金・キャリアアップ助成金・トライアル雇用助成金の4制度が中心です。いずれも要件を満たせば審査なしで受給できるため、補助金より先に着手しやすい制度です。
「何に使えるか」を先に把握し、着手前に計画届を出すことが受給までの一番の近道です。訓練や雇用の記録は取り組みの最初から残しておくと、実績報告での証憑不足を防げます。
人材育成と賃上げの土台を整えたら、次はITツール導入や設備投資を補助金で進める段階です。自社がどの制度から着手すべきか迷う場合は、無料相談で申請要件から一緒に確認できます。
