ものづくり補助金の給与支給総額とは、従業員に支払う給料・賃金・賞与等の合計額で、役員報酬・法定福利費・退職金は含みません。23次公募(現行)では、この総額をもとに従業員1人あたり平均で年3.5%以上増やす計画が基本要件になっています。個人事業主の場合は、青色申告決算書の給料賃金と専従者給与を合計して算定します。本記事では、対象費目の区分・計算の3ステップ・事業計画書への書き方・実績報告で未達だった場合のルールを2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。ものづくり補助金は第23次公募の内容を基準にしています。
この記事でわかること
- 給与支給総額に含む費目・含まない費目
- 個人事業主の給与支給総額の出し方
- 年3.5%増の目標値を計算する3ステップ
- 実績報告で未達だった場合の返還ルール
ものづくり補助金の「給与支給総額」とは
給与支給総額とは、従業員に支払う給料・賃金・賞与等の合計額を指す、賃上げ要件の判定に使う数値です。23次公募では、この総額を従業員数で割った「1人あたり平均額」を年3.5%以上増やす計画が基本要件になっています。
関連する内容については、ものづくり補助金2025年度|個人事業主の申請ガイド決定版にまとめています。
従業員が1人もいない個人事業主は、そもそもこの1人あたり平均額を算出できません。従業員なしの場合の申請可否はものづくり補助金は個人事業主1人だと対象外?23次の結論で詳しく解説しています。本記事は、すでに従業員や専従者を雇っている個人事業主が対象です。
給与支給総額に含む費目・含まない費目
給与支給総額に算入するのは給料・賃金・賞与等で、役員報酬・法定福利費・退職金は除外します。人件費全体とは範囲が異なるため、混同すると目標値の計算がずれます。

| 区分 | 費目 | 給与支給総額への算入 |
|---|---|---|
| 算入する | 給料・賃金 | する |
| 算入する | 賞与等 | する |
| 算入しない | 役員報酬 | しない |
| 算入しない | 法定福利費(社会保険料の事業主負担分) | しない |
| 算入しない | 退職金 | しない |
社会保険料の事業主負担分(法定福利費)は含まない点に注意が必要です。賃上げで給与が増えると法定福利費も連動して増えますが、目標値の算定そのものには含めません。増額分に見合う資金計画は、給与規程の改定と同時に立てておくと安心です。
通勤手当や住宅手当など各種手当の扱いも迷いやすい点です。給与規程で「給与」として支給している手当は、原則として給与支給総額に含めて計算します。判断に迷う手当がある場合は、公募要領の該当箇所を確認するか、事務局サポートセンターに個別に問い合わせておくと、記載後の修正を避けられます。
個人事業主の給与支給総額はどう出すか
個人事業主の給与支給総額は、青色申告決算書の損益計算書にある給料賃金と専従者給与を合計して算定します。法人の人件費科目とは集計元が異なります。
私たちは登録支援事業者として、申請書類の作成から採択後の実績報告まで一貫して支援していますが、この算定元の違いでつまずく相談を多く受けます。決算書の勘定科目をそのまま転記するだけでは、対象外の費目混入が起きがちです。相談の現場でよく見るのは、外注費や雑費まで合算してしまう転記ミスです。
専従者給与も従業員への給与と同じ扱いで、給与支給総額に算入します。青色事業専従者への給与を正式に支払っている実績があれば、その金額も合計に含めて計算します。専従者が「従業員」としての人数カウントに含まれるかどうかは、また別の判定基準になります。その基準はものづくり補助金は個人事業主1人だと対象外?23次の結論で解説していますので、あわせて確認してください。
年3.5%増の目標値を計算する3ステップ
目標値の計算は、基準年の総額を出す、1人あたり平均を出す、目標年の値を計算する、の3ステップで進みます。手順を分けて考えると、途中でどこの数値がずれたか見つけやすくなります。

例えば、従業員2人(専従者1人含む)の給与支給総額が年間480万円だとします。1人あたり平均は240万円です。年3.5%増の目標なら、1人あたり平均を248.4万円まで引き上げる計画が必要になります。事業計画期間が3年〜5年の場合は、その最終年でこの水準に届く計画にします。
途中年度でいったん未達でも、計画は最終年度の到達を基準に評価します。ただし、毎年の実績を賃金台帳で確認しておくと、最終年で慌てずに済みます。
専従者のみ2人を雇っている個人事業主のケースも見てみます。専従者給与の合計が年間360万円なら、1人あたり平均は180万円です。年3.5%増の目標なら、1人あたり平均を186.3万円まで引き上げる計画になります。
専従者給与は毎月一定額を支払う運用が多いため、月額換算で増額幅を決めておくと計画が立てやすくなります。月額に直すと、180万円は月15万円、186.3万円は月15万5,250円が目安です。端数は給与規程の改定タイミングに合わせて調整してください。年の途中で改定する場合は、月割りで年間の合計額を再計算しておくと、期末の集計時に慌てずに済みます。
大幅賃上げ特例を使うかどうかの判断
大幅賃上げ特例を使うと、年3.5%増に加えて追加2.5%、合計6%以上の増加が必要になる代わりに補助上限額が上がります。通常の要件より負担は増えますが、投資規模が大きい場合の選択肢になります。
| 区分 | 必要な増加率 | 補助上限額への影響 |
|---|---|---|
| 通常の賃上げ目標 | 年平均3.5%以上 | 通常は最大3,000万円 |
| 大幅賃上げ特例 | 年平均6%以上 | 特例適用で最大4,000万円 |
個人事業主で従業員・専従者が少人数の場合、6%増の達成は人件費への影響が大きくなります。投資したい設備の金額が通常枠の上限3,000万円に収まるなら、まず通常の3.5%増で計画を立てるほうが現実的です。
事業計画書への記載方法とよくある記載ミス
事業計画書には、基準年の給与支給総額・従業員数・目標年の増加率を、根拠となる算定式とあわせて記載します。数値だけを書いて根拠を示さないと、審査で指摘の対象になります。
青色申告決算書の「給料賃金」「専従者給与」以外の科目(外注費・雑費等)を誤って合算すると、給与支給総額が実際より多く見積もられます。目標達成の判定にも影響するため、科目単位で確認してから記載してください。
事業計画書の作成は、給与支給総額の記載だけでなく、対象経費や事業計画全体の整合性も問われます。公募から交付までの流れを事前に把握しておくと、記載漏れを防ぎやすくなります。全体の流れはものづくり補助金は製造業でどう使う?対象経費3つと上限4,000万円で解説しています。
自分で計算した数値に自信が持てない場合は、提出前に第三者の確認を挟んでください。税理士や登録支援事業者に決算書を見せて算定式を再確認してもらうだけで、転記ミスの大半は防げます。申請直前になって数値の根拠を組み立て直すのは負担が大きいため、事業計画書の作成と並行して確認を進めておくと安心です。
実績報告で目標未達だった場合どうなるか
事業計画期間の最終年に目標未達だった場合、未達成の割合に応じて交付済みの補助金の返還を求められます。目標を立てただけで終わらせず、期間中の実績管理が欠かせません。
従業員等への目標値の表明を行っていない場合は、交付決定そのものが取り消され、補助金の返還につながることもあります。賃上げ目標は社内に周知したうえで、計画的に給与改定を進める必要があります。
実績報告の書類準備は、制度が違っても考え方は共通する部分が多くあります。AI導入補助金の実績報告の書き方|必要書類と提出の4ステップで解説している準備の流れもあわせて確認しておくと、書類不備による差し戻しを防ぎやすくなります。
賃金台帳・給与明細・振込記録は、事業計画期間中はまとめて保管しておいてください。実績報告の段階になって過去分をさかのぼって集めようとすると、記載漏れや金額の食い違いに気づきにくくなります。月ごとに給与支給総額を集計しておくと、最終年の判定もスムーズです。
給与支給総額要件でよくあるNG例と回避策
よくある失敗は、対象外費目の混入・専従者給与の計上漏れ・実績管理不足の3つです。いずれも事前の確認で防げます。

1点目は、給与支給総額に法定福利費や退職金まで含めて計算し、目標値を誤って低く見積もってしまうケースです。人件費全体の感覚で集計すると起きやすい間違いです。2点目は、専従者給与を「家族への支払いだから」と除外してしまい、算定額が実態より少なくなるケースです。専従者給与も従業員給与と同じ扱いで合計します。3点目は、事業計画書に目標だけ記載し、期間中の賃金台帳での実績管理を怠るケースです。
目標を立てた時点では順調に見えても、途中で従業員が退職して人数が減ると、1人あたり平均の前提が崩れることもあります。人数の変動が見込まれる場合は、その影響も事前に試算しておくと安心です。退職者が出た月から新たな従業員を採用するまでの期間は、残った従業員の給与だけで平均を計算し直す必要が出てきます。
当社は2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点に登録支援事業者として申請支援に携わってきました。給与支給総額の算定は決算書の科目確認から始めると、記載ミスを防ぎやすくなります。計算方法に迷う場合は、無料相談で決算書の状況を伝えてください。
すがた税理士事務所の23次賃上げ要件の解説によると、23次公募からは「1人あたり」の成長率判定に一本化され、給与支給総額の総額そのものでの判定はできなくなりました。個人事業主向けの解説記事でも、専従者給与を含めた算定方法が説明されています。制度改正は今後も入る可能性があるため、申請直前には最新の公募要領も確認してください。
未達を避けるために、社内で確認しておく数字
給与支給総額の目標は、申請時の見込みではなく実績で判定されます。申請前に、次の数字を確認してください。
- 基準年度の給与支給総額(何を含めて計算したか、根拠の資料も残す)
- 目標年度までの従業員数の見込み
- 退職が見込まれる人がいるか
3つ目が抜けると計算が狂います。人数が減れば総額も減ります。1人あたりの賃金を上げても、退職で総額が下がれば未達になります。
対策は2つです。採用予定を計画に織り込むか、1人あたりの上げ幅を大きく見ておくかのどちらかです。
役員報酬の扱いは制度の定義を必ず確認してください。含む・含まないを取り違えると、基準年度の数字そのものが変わります。公募要領の定義を、申請時に画面ごと保存しておくと後の実績報告で照合できます。
まとめ: 給与支給総額は算定元と計算手順を先に固める
ものづくり補助金の給与支給総額は、給料・賃金・賞与等の合計額で、役員報酬・法定福利費・退職金は含みません。個人事業主の場合は、青色申告決算書の給料賃金と専従者給与を合計して算定します。
目標値は、基準年の1人あたり平均額を出し、年3.5%以上(大幅賃上げ特例なら6%以上)の増加を計画する形で計算します。事業計画書には算定根拠を明記し、期間中は賃金台帳で実績を管理することが、実績報告での未達を避ける一番の対策です。
給与支給総額の算定を間違えると、目標設定自体がずれて審査や実績報告に影響します。私たちは登録支援事業者として、決算書の確認から実績報告まで一貫して支援しています。計算に不安がある場合は、無料相談で状況を伝えてください。
