ものづくり補助金は、製造業が機械装置やシステムに投資する際に使える設備投資型の補助金です。全業種が対象の制度ですが、対象経費の中心が「機械装置・システム構築費」であるため、実際の活用は製造業に集中しています。IT導入補助金がソフトウェア中心なのに対し、ものづくり補助金は設備そのものへの投資を後押しする点が最大の違いです。本記事では、製造業が対象にできる経費、補助率・上限額、直近の公募実績を2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。第23次公募の採択発表は2026年8月上旬を予定しています。
この記事でわかること
- 製造業で対象になる経費3分野
- 補助率・補助上限額の目安
- 直近公募の採択率と申請枠の違い
- IT導入補助金との使い分け
ものづくり補助金は製造業でどう使えるのか
ものづくり補助金は、生産性向上につながる機械装置やシステムへの投資を支援する制度です。中小企業庁が実施する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の愛称で、革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善を目的にしています。
対象になる範囲を先に押さえるなら、ものづくり補助金は小売業に使えない?対象になる投資の見極め方が参考になります。
実際の例はものづくり補助金は飲食店で使える?採択事例3パターンでも扱っています。
つまずきやすい点は、ものづくり補助金は個人事業主1人だと対象外?23次の結論で解説しています。
実際の進め方を先に押さえるなら、ものづくり補助金の給与支給総額とは?個人事業主の計算3ステップが参考になります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の公式サイトでは、革新的な製品・サービス開発を支援する枠と、海外展開を支援するグローバル枠の2つが公表されています。どちらの枠でも、機械装置への投資が申請の土台になります。
私たちは登録支援事業者として補助金の相談を受けていますが、「ものづくり補助金は大企業向けの制度だと思っていた」という声をよく聞きます。実際には資本金・従業員数の基準を満たす中小製造業であれば、規模の小さい工場でも申請できます。中小企業者に該当するかどうかの基準はものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で詳しく解説しています。
製造業で対象になる経費3分野
対象経費は機械装置・システム構築費が中心で、この経費はすべての申請枠で計上が必須です。技術導入費や専門家経費など、設備投資を支える周辺費用も対象に含まれます。

| 経費区分 | 具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | プレス機、協働ロボット、自動整列機等 | 全申請枠で計上が必須 |
| 技術導入費・専門家経費 | 外部専門家への謝金、技術指導料 | 機械装置費と組み合わせて計上 |
| クラウド利用費・原材料費 | システム利用料、試作用の原材料 | 単独では申請の主経費にできない |
補助金ポータルが整理した対象経費の一覧によると、このほかに運搬費・知的財産権等関連経費・海外旅費・広告宣伝費なども対象になりますが、いずれも機械装置費と組み合わせて申請する経費という位置づけです。
製造ラインの自動化を検討している工場ほど、機械装置費を主軸にした計画が立てやすいというのが実感です。老朽化した設備を単純に入れ替えるだけでなく、生産性向上につながる根拠を数値で示せるかどうかが審査のポイントになります。
補助率・上限額はいくらか
補助上限額は通常最大3,000万円で、大幅な賃上げ特例を適用すると最大4,000万円まで上がります。補助率は申請枠や事業者規模によって2分の1または3分の2、補助下限額は100万円です。
| 項目 | 通常の上限 | 大幅賃上げ特例 |
|---|---|---|
| 補助上限額 | 最大3,000万円 | 最大4,000万円 |
| 補助率 | 1/2(小規模事業者は2/3) | 枠により2/3 |
| 補助下限額 | 100万円 | 100万円 |
中小企業経営支援事務所が整理した第23次公募の要件では、製品・サービス高付加価値化枠の補助上限額が3,000万円、海外展開向けのグローバル枠も同水準の上限額と説明されています。
例えば、老朽化したプレス機を協働ロボット付きの自動化ラインへ更新し、契約額2,400万円の設備投資を行ったとします。補助率1/2なら1,200万円、賃上げ特例で2/3が適用されれば1,600万円が補助される計算です。自己負担額を早めに試算しておくと、資金計画が立てやすくなります。
直近公募の採択率はどのくらいか
直近の第21次公募(2025年1月発表)の採択率は約34.1%で、申請枠によって34.8%から21.9%まで差があります。採択のハードルは年々上がっている傾向にあるため、事業計画の作り込みが重要です。
同事務所の公募実績まとめでは、製品・サービス高付加価値化枠の採択率が34.8%、グローバル枠が21.9%だったと報告されています。枠によって採択率が10ポイント以上違う点は見落とされがちです。
第23次公募は2026年2月6日に公募開始し、5月8日17時に申請を締め切っています。採択発表は2026年8月上旬が予定されており、この記事を読んでいる時点で結果が出ている可能性もあります。次回公募に向けて準備する場合は、最新の公募要領を必ず確認してください。
製造業ならではの活用シーン
製造業での活用は、老朽設備の更新・自動化による人手不足対策・技能継承の3つの文脈に集中しています。同じ機械装置費でも、何のために導入するかで事業計画の書き方が変わります。
公開されている活用事例では、大型ミキサーや包餡機のような食品加工機械、プレス機、協働ロボットによる自動化設備など、具体的な機械装置への投資が中心です。ベテラン職人の手作業をセンサー付き設備に置き換え、若手でも一定の品質を再現できるようにする、といった技能継承の文脈での活用も目立ちます。
「人手が足りないから自動化したい」という漠然とした動機だけでは、審査で求められる付加価値額の根拠が弱くなりがちです。導入後に生産量・不良率・作業時間がどう変わるかを、数値目標として事業計画書に落とし込む必要があります。
私も相談の現場で、設備の性能だけを説明して、生産性がどれだけ向上するかの数値を示せていなかった事業者を見てきました。機械のスペックではなく、導入後の変化を数字で語れるかどうかが、審査を通過できるかの分かれ目になります。
技能継承の文脈では、ベテラン職人が感覚で調整していた工程を、センサーやカメラで数値化・自動化する投資が増えています。属人化していた工程を数値基準に置き換えると、若手作業者でも同じ品質を再現しやすくなるという効果を、事業計画書の中で具体的に説明できると審査側にも伝わりやすくなります。
人手不足対策としての活用では、24時間稼働できる設備への投資で、限られた人員でも生産量を維持する狙いが中心です。「人が足りないから機械に置き換える」だけでなく、空いた人員をどの工程に再配置するかまで計画に盛り込むと、生産性向上の根拠がより明確になります。
申請枠の種類と製造業に合うのはどちらか
申請枠は主に、革新的な製品開発向けの「製品・サービス高付加価値化枠」と、海外展開向けの「グローバル枠」に分かれます。自社の投資目的がどちらに近いかで選ぶ枠が変わります。
| 申請枠 | 主な対象 | 製造業での使いどころ |
|---|---|---|
| 製品・サービス高付加価値化枠 | 国内向けの新製品・生産性向上投資 | 設備更新・自動化ラインの導入 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓・海外拠点投資 | 輸出向け製品の生産設備投資 |
国内の生産ラインを更新する製造業の多くは、製品・サービス高付加価値化枠を選択しています。海外拠点での生産や輸出比率が高い事業者は、グローバル枠のほうが補助対象経費の範囲が広がる場合があります。迷う場合は、事務局サポートセンターや登録支援事業者に自社の投資計画を伝えたうえで確認するのが確実です。
申請から交付までの5ステップ
申請から交付までは、公募要領の確認から交付決定後の着手まで5ステップで進みます。採択されただけでは終わらず、交付決定を受けてから初めて発注できる点に注意してください。

事業計画書の作成には、自社の課題整理から数値目標の設定まで一定の時間がかかります。繁忙期にかかると計画書の作り込みが疎かになりやすいため、次回公募の情報が出た時点で早めに着手するのが安全です。申請全体の考え方はAI導入補助金の申請のやり方|受給までの5ステップを解説でも整理しているので、あわせて確認してください。
採択された時点ではまだ発注できません。交付決定の通知を受け取ってから契約・発注を行わないと、補助対象から外れてしまいます。
申請でよくある失敗3つ
よくある失敗は、機械装置費を計上しないこと、数値目標の根拠を示さないこと、交付決定前に発注してしまうことの3つです。いずれも準備段階で防げるミスです。

1点目は、周辺経費だけで申請してしまい、必須経費である機械装置費を計上し忘れるケースです。2点目は、生産性向上の根拠を数値で示せず、審査で説得力が弱くなるケースです。3点目は、採択を交付決定と勘違いし、発注を急いでしまうケースです。
補助金全般に共通する失敗パターンはAI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策でも整理しています。ものづくり補助金と重なる注意点も多いので、申請前に一度目を通しておくと安心です。
IT導入補助金との使い分け
設備投資が中心ならものづくり補助金、ITツール導入が中心ならIT導入補助金が向いています。対象経費の性質が異なるため、投資内容によって選ぶ制度が変わります。
製造業がIT導入補助金を使う場合は、生産管理システムや品質管理ソフトなど、ソフトウェア中心の投資が対象になります。詳しい対象ツールや技能継承・人手不足への活かし方は製造業のIT導入補助金|技能継承と人手不足への活かし方で解説しています。
機械そのものを入れ替えたいのか、既存設備を活かしてソフトウェアで効率化したいのかを最初に整理すると、どちらの制度が向いているか判断しやすくなります。両制度を同一経費で重複申請することはできないため、投資計画を先に固めてから制度を選んでください。
まとめ: 機械装置費を軸に、数値で語れる計画を
ものづくり補助金は、製造業が機械装置やシステムに投資する際の代表的な選択肢です。対象経費は機械装置・システム構築費が中心で、この経費の計上がすべての申請枠で必須になっています。
補助上限額は通常最大3,000万円、大幅賃上げ特例では最大4,000万円まで上がります。採択率は直近で34.1%程度と決して高くないため、生産性向上の根拠を数値で示せる事業計画が欠かせません。
機械のスペックではなく、導入後に生産量・不良率・作業時間がどう変わるかを数字で語れるかどうかが、審査を通過できるかの分かれ目です。自社の投資計画がどちらの申請枠に合うか、機械装置費を軸にした計画の作り方に迷う場合は、無料相談で状況を伝えてください。私たちは2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点に登録支援事業者として申請支援に携わってきました。
