ものづくり補助金は宿泊業(ホテル・旅館・民宿)も対象で、中小企業者の判定では「旅館業」として従業員200人以下という独自の基準が使えます。サービス業の一般的な基準(従業員100人以下)より緩やかなため、規模の大きい旅館でも対象になりやすい業種です。本記事では、宿泊業だけの基準の違い、採択されやすい3つの投資パターン、対象外になりやすい経費との線引きを2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。第1回公募の情報を基準にしています。
この記事でわかること
- 宿泊業だけに認められた中小企業者基準の違い
- 採択されやすい3つの投資パターン
- 対象になる経費・対象外になる経費
- 補助率・補助上限額と申請の流れ
宿泊業もものづくり補助金の対象になる理由
結論として、ものづくり補助金は宿泊業も対象で、中小企業者の判定では「旅館業」という独自区分が使われます。全業種が対象の制度ですが、業種ごとに資本金・従業員数の基準が細かく分かれており、宿泊業はその中でも有利な部類に入ります。
対象になる範囲を先に押さえるなら、ものづくり補助金|建設業の採択事例3業種と上限9,000万円が参考になります。
私たちセブンセンシズ株式会社(大阪市東成区・2020年3月創業)は、登録支援事業者として補助金の相談を受けています。「ものづくり補助金は工場を持つ製造業向け」という思い込みを宿泊業の経営者からもよく聞きます。
実際には、老舗旅館のIT活用による高付加価値化や、厨房設備の刷新による収益構造改善など、宿泊業でも活用の余地があります。中小企業者の判定基準の全体像はものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で解説しています。
宿泊業(旅館業)は中小企業者の基準がサービス業より緩い
宿泊業の中小企業者は、資本金5,000万円以下または従業員200人以下という「旅館業」の基準で判定します。一般的なサービス業の基準(従業員100人以下)とは異なり、より多くの宿泊施設が対象に含まれます。

| 業種区分 | 資本金の額 | 従業員数 |
|---|---|---|
| サービス業(一般) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
私たちが宿泊業のオーナーから相談を受ける際、客室数の多いホテルほど「うちは規模が大きいから対象外だろう」と思い込んでいるケースを何度か見てきました。判断材料は従業員数だけではありません。業種区分が「サービス業」ではなく「旅館業」で判定される点を、先に確認する価値があります。
なお、この基準はあくまで中小企業者としての判定です。小規模事業者の優遇(賃上げ特例での補助率引き上げなど)は、別の従業員数基準で判定されます。両方の基準を確認しておくと、自社が使える優遇を見落としません。業種区分の全体像はものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で整理しています。
収益改善につながる宿泊業の投資パターン3つ
宿泊業では、厨房設備の生産性向上・館内設備の高付加価値化・新分野展開という投資が採択されやすい傾向にあります。単なる設備更新ではなく、収益構造の改善という一点。この軸から外れない投資が選ばれています。

1つ目は厨房設備の生産性向上です。ものづくり補助事業公式サイトの成果事例検索によると、京都府の旅館が急速冷凍機を導入し、料理部門の収益構造を改善する計画で採択された事例があります。仕込みや調理の工程を機械に置き換え、限られた人員での提供数量を安定させる投資が該当します。
2つ目は館内設備の高付加価値化です。宿泊業の採択事例を整理した解説記事によると、登録有形文化財に指定された老舗旅館が、ITを活用して効率化・高付加価値化を図った事例があります。ほかにも、温泉施設をITの力で多目的に利用できる場へ変える事例が報告されています。館内設備そのものの刷新とシステム構築を組み合わせる投資が中心です。
3つ目は新分野展開です。個人旅行やワーケーション需要への対応を目的に、既存の客室運用を見直して新しいサービス形態へ転換する計画が該当します。コロナ禍以降の旅行需要の変化に合わせ、システム化と自動化でサービス提供の仕組みそのものを作り直す投資です。
選びやすい投資パターンは施設によって変わります。文化財としての制約がある老舗旅館と、設備を一から設計できる新築のスマートホテルでは、前提条件が異なるためです。自施設の建物の制約と、どの部門の収益性が伸び悩んでいるかを先に整理してから、投資規模を検討するのが現実的です。
客室改装ではなく生産性向上に直結する経費を選ぶ
対象になるのは厨房設備・温泉設備の機械装置費と館内DXのシステム構築費で、内装改装費や什器の単独購入は対象外です。この線引きを誤ると、申請段階で経費を削られる原因になります。

| 経費区分 | 宿泊業での具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 急速冷凍機、温泉設備の制御システム、館内DXの構築費 | 全申請枠で計上が必須 |
| 対象外の例 | 客室・ロビーの内装改装費、什器・備品の単独購入 | 生産性向上と直結しない投資 |
「客室をリニューアルしたいから」という理由だけで申請すると、対象経費が組み立てられず審査以前の段階で行き詰まります。投資の目的を「見た目の刷新」ではなく「生産性の向上」に据え直す必要があります。宿泊業のソフトウェア導入に近い投資は宿泊業のIT導入補助金は有利?20人以下特例と対象ツールで対象範囲を解説しています。
補助率・上限額は申請枠でどう変わるか
申請枠は革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つで、上限額は最大9,000万円まで幅があります。投資の規模と目的に合う枠選び。これが自己負担額を左右する最初の分かれ道です。
| 申請枠 | 補助率 | 補助上限額 | 実施期間 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 1/2(特例2/3) | 2,500万円(特例3,500万円) | 交付決定から10か月 |
| 新事業進出枠 | 1/2(特例2/3) | 7,000万円(特例9,000万円) | 交付決定から14か月 |
| グローバル枠 | 2/3 | 7,000万円(特例9,000万円) | 交付決定から14か月 |
中小企業庁が公開した第1回公募要領によると、この枠組みは業種を問わず共通です。厨房設備や温泉設備を刷新して既存の収益構造を改善する程度なら、革新的新製品・サービス枠が候補になります。ワーケーション対応など新しいサービス形態への転換を伴う投資なら、新事業進出枠のほうが上限額に余裕があります。
例えば、厨房の急速冷凍機と関連システムを1,500万円で導入するとします。補助率1/2なら750万円、特例の2/3が適用されれば1,000万円が補助される計算です。インバウンド向けに海外市場開拓を伴う投資であれば、補助率2/3のグローバル枠のほうが自己負担を抑えやすくなります。
第1回公募はいつ始まりいつ締め切るか
第1回公募の申請受付は2026年8月31日に始まり、締切は2026年9月30日18時です。採択はゴールではなく、実績報告を終えて初めて交付額が確定します。

中小企業基盤整備機構の制度公式サイトでは、事業計画書の作成に電子申請システム(jGrants)のGビズIDプライムが必須と案内されています。取得には郵送で2〜3週間、マイナンバーカードによるオンライン申請なら最短即日〜1週間かかります。
何から着手すればよいか迷う場合は、まずGビズIDプライムの取得から始めてください。繁忙期の対応に追われて準備が後回しになりがちな業種だからこそ、閑散期のうちに事業計画書の作り込みを進めておくと締切間際に慌てずに済みます。
ソフトはIT導入補助金、ハードはものづくり補助金
PMSなどソフト中心の投資はIT導入補助金、厨房・温泉設備などハード中心の投資はものづくり補助金が向いています。対象経費の性質の違い。ここを見誤ると、選ぶ制度自体を間違えます。
| 項目 | IT導入補助金(通常枠) | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | PMS・多言語対応・収益管理ソフトの導入 | 厨房・温泉設備、館内DXの構築 |
| 補助上限額 | 最大450万円 | 2,500万円〜9,000万円 |
| 対象経費の例 | サイトコントローラー、CRM等 | 急速冷凍機、温泉設備の制御システム等 |
予約・チェックイン・多言語対応のソフト導入を検討している場合は、宿泊業のIT導入補助金は有利?20人以下特例と対象ツールで詳しく解説しています。厨房や温泉設備そのものを刷新したいのか、既存設備を活かしてソフトウェアで効率化したいのか。最初にこの点を整理すると、どちらの制度が向いているか判断しやすくなります。
予約管理のソフト導入をIT導入補助金、厨房設備の刷新をものづくり補助金に振り分ければ、年度をまたいで段階的に投資を進められます。どちらも交付決定前の発注は対象外になるため、契約時期だけは必ず先に確認してください。
交付決定前の発注などよくあるつまずき
宿泊業でよくある失敗は、客室改装を主目的にすること、繁忙期に導入作業が重なること、交付決定前に発注することの3つです。いずれも計画段階の見直しで防げます。
採択されても、交付決定の通知を受け取る前に厨房設備や温泉設備を発注・契約すると、その経費は補助の対象になりません。見積もりの取得までにとどめ、契約は交付決定後に進めてください。
私も相談の現場で、「客室を新しくすれば集客が伸びる」という発想のまま、生産性向上の数値目標を示せていない宿泊業の経営者を見てきました。導入前後で提供数量・作業時間・稼働率がどう変わるかを、事業計画書に具体的に落とし込む必要があります。
繁忙期にシステムや設備を切り替えると、スタッフが操作に慣れないまま現場が混乱しやすくなります。閑散期のうちに導入・研修まで終えておくと、繁忙期は運用が安定した状態で迎えられます。補助金全般に共通する失敗パターンはAI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策でも整理しているので、あわせて確認してください。
当社は登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。宿泊業特有の経費区分に迷う場合は、無料相談で投資内容を伝えてください。
まとめ: 旅館業200人以下基準と生産性向上の根拠がカギ
ものづくり補助金は、宿泊業も対象になる制度です。中小企業者の判定では「旅館業」として従業員200人以下という、サービス業の一般基準より緩やかな基準が使えます。規模の大きい旅館やホテルほど、この基準の違いを知っているかどうかで自己判断の精度が変わります。
厨房設備の生産性向上・館内設備の高付加価値化・新分野展開という3パターンは、収益構造の改善を数値で示しやすく採択につながりやすい投資です。客室・ロビーの内装改装費や什器の単独購入は対象外になるため、投資の目的を生産性向上の数値目標に置き換えて計画を作ることが欠かせません。
交付決定前の発注は補助対象外になるため、繁忙期のスケジュールも見据えて早めに準備してください。私たちは2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点に登録支援事業者として申請支援に携わってきました。経費区分の切り分けに迷う場合は、無料相談で投資内容を伝えてください。
