※ (確認日: 10月17日)。締切と金額は公募要領・支給要領で確かめた日付を本文に添えています。
この記事でわかること
- 助成金と補助金の4制度を、不動産会社の困りごとで分ける方法
- 各制度の金額と、2026年秋の締切の並び
- 歩合給の多い会社が賃上げ要件でつまずく理由
- 今日のうちに確かめておく3つのこと
不動産会社の助成金と補助金は何が違うのか?
助成金は人の雇い方と待遇に、補助金は設備やシステムへの投資にお金が出る制度です。不動産会社が「助成金」と探すとき、実際には両方を見比べる必要があります。

この記事で扱うのは、次の4制度です。助成金が2つ、補助金が2つという内訳になります。
- キャリアアップ助成金(正社員化コース)
- 業務改善助成金
- デジタル化・AI導入補助金(2026年度に旧IT導入補助金から改称)
- 小規模事業者持続化補助金
助成金と補助金の一般的な違いは、中小企業の助成金とは?で詳しく扱っています。ここからは不動産会社の業務に当てはめて見ていきます。
不動産会社の困りごとから、使う制度をどう選ぶか?
使う制度は、何にお金を使いたいかで決まります。人の待遇なら助成金、システムや販促なら補助金です。

| 困りごと | 合う制度 | 所管 | 2026年度の主な金額 |
|---|---|---|---|
| 契約社員の事務員・営業を正社員にしたい | キャリアアップ助成金 | 厚生労働省 | 有期から正規で1人40万円(中小企業) |
| 事務スタッフの時給を上げ、設備も入れたい | 業務改善助成金 | 厚生労働省 | 上限40万〜450万円(30人未満の事業者) |
| 物件管理・顧客管理・電子契約を入れたい | デジタル化・AI導入補助金 | 中小企業庁系 | 通常枠5万〜450万円・補助率1/2 |
| チラシ・看板・ホームページで集客したい | 持続化補助金 | 中小企業庁系 | 補助率2/3 |
表のとおり、同じ「お金をもらう」でも、出どころと審査の仕方がまったく違います。分け方を一言で言えば、次のとおりです。
契約社員を正社員にする予定があるなら、まずキャリアアップ助成金です。管理ソフトや電子契約を入れるなら、デジタル化・AI導入補助金を先に検討してください。どちらも当てはまる会社は、両方を並べて進められます。
逆に、物件そのものの取得や、賃貸物件のリフォーム費用に使う制度ではありません。この4制度はどれも、雇用・設備・ソフト・販促のいずれかが対象です。
キャリアアップ助成金は不動産会社でいくら受け取れるか?
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、中小企業が有期の社員を正社員にすると1人40万円です。2026年4月8日付けのご案内で確認しました。
厚生労働省のキャリアアップ助成金のページでは、支給要領とご案内の最新版が令和8年4月8日付けです。10月17日時点で、年度途中の改正版は掲載されていませんでした。
| 転換の形 | 中小企業の支給額 | 重点支援対象者 |
|---|---|---|
| 有期雇用 → 正規雇用 | 40万円 | 80万円(40万円×2期) |
| 無期雇用 → 正規雇用 | 20万円 | 40万円 |
加算もあります。正社員転換の制度を新しく作ると20万円、多様な正社員の制度で40万円が上乗せされます。
不動産会社では、入社時は契約社員で様子を見て、宅建士の資格を取ったら正社員にするという運用をとる会社があります。この運用は、そのまま正社員化コースの形に乗せられます。
ただし、転換の前にキャリアアップ計画を労働局へ出しておく必要があります。資格を取った翌月に正社員にしてから計画を出しても、対象になりません。
業務改善助成金は今年度まだ申請できるか?
業務改善助成金は都道府県ごとに期限が違い、最も遅い所でも2026年11月30日までです。多くの地域では、10月17日時点ですでに受付を終えています。
厚生労働省の令和8年度のご案内によると、受付は2026年9月1日に始まりました。期限は、その地域の新しい最低賃金が発効する日の前日か、11月30日の早い方です。
この制度は、事業場内で一番低い時給を引き上げ、あわせて生産性を上げる設備を入れると、費用の一部が出る仕組みです。
- 引き上げ幅は50円・70円・90円の3コース
- 上限は30人未満の事業者で40万〜450万円
- 助成率は、事業場内最低賃金1,050円未満なら4/5、以上なら3/4
不動産会社で当てはまりやすいのは、最低賃金に近い時給で働くパートの事務スタッフがいる会社です。正社員の営業だけの会社は、引き上げる対象の時給がそもそも無いことが多くなります。
自社の都道府県がまだ受付中かは、厚生労働省の地域別最低賃金の一覧で発効日を見れば分かります。すでに終わっていれば、来年度の公募に向けて設備の見積りを集めておく判断になります。
物件管理や電子契約の導入費は、いくら補助されるか?
デジタル化・AI導入補助金は、登録されたソフトやクラウドの導入費の1/2を補う制度です。不動産会社なら、物件管理・顧客管理・電子契約・問い合わせ対応のAIなどが候補になります。
通常枠の公募要領(2026年8月28日改訂版)では、金額は業務の数で分かれます。
| 対象になる業務の数 | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 1〜3の業務プロセス | 5万円〜150万円未満 | 1/2(最低賃金に近い事業者は2/3) |
| 4以上の業務プロセス | 150万円〜450万円 | 1/2(同上) |
2022年5月18日施行の宅建業法の改正で、重要事項説明書や契約書は電子で渡せるようになりました。電子契約の仕組みを入れる理由が、法律の面でも整っています。ツールの選び方そのものは、デジタル化・AI導入補助金のツールの選び方にまとめています。
申請にはgBizIDプライム、SECURITY ACTIONの宣言、事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であることが要ります。提出書類は不動産会社のAI導入補助金の提出書類で、順番とあわせて整理しています。
歩合給の多い不動産会社が賃上げ要件でつまずく理由
歩合給の比重が大きい会社は、売上が落ちた年に給与の総額も下がり、賃上げの目標を割りやすくなります。申請の前に、ここを一番に確かめてください。
デジタル化・AI導入補助金で150万円以上を申請すると、1人当たり給与支給総額を年平均3%以上増やす計画が要ります。事業場内最低賃金を地域別より30円以上高くすることも条件です。
不動産の営業は、成約件数で月の給与が大きく動きます。固定給を上げていても、成約が減った年は1人当たりの総額が前年を下回ることがあります。
- 失敗例: 繁忙期の好調な年を基準に3%の計画を立て、翌年の成約減で総額が下がった
- 原因: 給与支給総額に歩合が含まれ、会社が操作できない部分が大きかった
- 避け方: 150万円未満の申請に抑えるか、固定給の引き上げで3%に届く計画にする
150万円未満の申請なら、この給与総額の要件はかかりません(ただし2022〜2025年に交付決定を受けた事業者は別の条件が付きます)。歩合中心の会社は、まず業務を絞って150万円未満で組むほうが安全です。
2026年秋の締切はどう並んでいるか?
10月30日から12月15日までに、4制度のうち3つの締切が集中しています。賃貸仲介は一般に1〜3月が繁忙期なので、導入と準備は年内に寄せるのが現実的です。

| 日付 | 内容 | 確かめた先 |
|---|---|---|
| 10月30日 17:00 | デジタル化・AI導入補助金 6次締切 | 事務局のスケジュール |
| 11月30日 | 業務改善助成金の最終期限(地域でさらに早い) | 厚生労働省 |
| 12月10日 | 6次の交付決定予定 | 事務局のスケジュール |
| 12月15日 17:00 | 持続化補助金 第20回の締切(受付は11月5日から) | J-Net21 |
日付はデジタル化・AI導入補助金のスケジュールとJ-Net21の持続化補助金 第20回の案内で確かめました。
gBizIDプライムをまだ持っていないなら、10月30日の6次には間に合わないと考えてください。発行に2〜3週間かかるため、今から申請しても締切を越えます。その場合は、ID取得と見積り集めを先に済ませ、次の締切に合わせます。
持続化補助金は、従業員の少ない小規模事業者が対象です。従業員数の上限は業種で異なるため、持続化補助金の対象になる中小企業の条件で自社の区分を確かめてください。
申請の前にそろえる書類と、準備が遅れる会社の特徴
助成金も補助金も、出勤簿・賃金台帳・決算書が締まっていないと書類がそろいません。申請の早さは、日々の経理の締めの早さに左右されます。
助成金の支給申請では、取り組みの前後の賃金台帳と出勤簿を出します。補助金では決算書や納税証明書が要ります。月次の締めが遅い会社ほど、締切の直前に書類集めで止まります。
当社の一次データでは、経理BPOを導入した10社の集計で、月次決算が締まるまでの日数が中央値で15日から7日に短くなりました(2024年4月〜2026年8月・10社の中央値。個社差が大きい。出典: 経理BPO導入前後の月次決算の所要日数)。締めが早い会社は、前月の数字を使った申請書類をその月のうちに用意できます。
自社が中小企業の区分に入るかも、書類の前に確かめておきます。デジタル化・AI導入補助金の判定はIT導入補助金の中小企業の定義、助成金の個人事業主の条件は個人事業主の助成金の申請条件にまとめています。
不動産会社が助成金で失敗しやすい3つの場面
失敗の多くは、制度の順番を守らなかったことで起きます。先に動いてしまうと、取り戻せません。
| 場面 | 起きたこと | 原因 | 避け方 |
|---|---|---|---|
| 正社員への転換 | 転換したのに支給されない | 計画を出す前に転換した | 転換の前にキャリアアップ計画を労働局へ出す |
| システムの導入 | 補助の対象から外れた | 交付決定の前に契約した | 交付決定の通知を受けてから契約・支払いをする |
| 賃上げの計画 | 補助金の返還を求められた | 歩合込みの総額で3%を約束した | 固定給の引き上げで届く計画にする |
どの場面も、「先に始めてから申請する」順番が原因です。不動産の仕事は動きが速く、良い人材やソフトが見つかるとすぐ決めたくなります。それでも、申請と計画の提出を先に済ませてください。
私たちが登録支援事業者として相談を受けるときも、最初に確かめるのは契約や転換の予定日です。契約書の日付が交付決定より1日早いだけで、その経費は対象から外れます。
従業員を雇っていない個人の賃貸業は、雇用保険の被保険者がいないため助成金の対象になりにくいです。2026年に開業した個人事業主は、2026年度のデジタル化・AI導入補助金に申請できません。
まとめ: 今日のうちに確かめる3つのこと
不動産会社の助成金選びは、人の待遇かシステム投資かを分けるところから始まります。4制度は対象も締切も違うため、並べて見ることが近道です。
今日のうちに、次の3つを確かめてください。
- 正社員にしたい契約社員がいるか(いればキャリアアップ計画を先に出す)
- gBizIDプライムを持っているか(無ければ今日申請する)
- 自社の都道府県で業務改善助成金がまだ受付中か
制度の金額と締切は、公募回と年度で変わります。申請の前には、必ず最新の公募要領と支給要領を確かめてください。

