事業再構築補助金は農業でも申請でき、有機野菜農家の食品製造業への転換や、養鶏場の規格外卵を使ったスイーツ事業への新分野展開など、6次産業化の投資が数多く採択されてきました。ただし2025年3月26日の第13回公募をもって新規申請の受付を終了しています。「事業再構築補助金 農業」で検索して情報を探している場合、まず押さえるべきは制度が終了している事実です。本記事では、農業が採択されてきた活用事例3パターン、対象外になりやすいケース、今使える後継制度で対象にできる経費を2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。後継制度は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募情報を基準にしています。
この記事でわかること
- 農業で採択されてきた活用事例3パターン
- 対象外になりやすいケースの見分け方
- 今使える後継制度の対象経費
- 後継制度の補助上限額と申請ステップ
6次産業化の投資で動いた農業への支援
結論として、事業再構築補助金は農業も対象で、加工・直売への転換や新分野展開といった6次産業化の投資が数多く採択されてきました。制度上、農業だからという理由で除外されることはなく、個人農家から農業生産法人まで幅広く申請していました。
宿泊業の事例は、宿泊業のインバウンド投資を支えた事業再構築補助金、今の姿はで紹介しています。
建設業のケースは事業再構築補助金は建設業も対象|3つの事例と今の後継制度で解説しています。
事業再構築補助金の事務局公式サイトには「本補助金の公募は終了しております」と明記されています。過去形の制度であることを前提に、事例を参考情報として読み進めてください。
私たちはAI導入補助金の登録支援事業者として、日々さまざまな補助金の相談を受けています。農業の経営者から「事業再構築補助金を使いたい」という相談は今も届きますが、まず制度の現状を正確に伝えるところから始めています。
有機野菜からスイーツまで|採択事例3つ
農業の採択事例は、加工・直売への転換、新分野展開、地域商社化という3つのパターンに大別できます。単なる増産ではなく、既存事業の延長線上にある新しい売り先づくりが採択の軸でした。

1つ目は加工・直売への転換です。有機野菜を栽培していた農家が、キッチンカーを使う食品製造業へ業態転換し、試行販売で需要を確認したうえで設備投資に踏み切った事例が公開されています。栽培だけで完結せず、加工と販売まで自社で担う点が転換の核でした。
2つ目は新分野展開です。養鶏場が、廃棄していた規格外の鶏卵を使ったスイーツを開発し、店舗販売とEC販売の両方に参入した事例が公開されています。既存のパティシエと組んで規格外卵の活用自体を差別化要因にした点が特徴です。
3つ目は地域商社化です。農業生産法人が空き倉庫を加工工場へ改修し、地域の農産物を集めて加工・販売する地域商社へ転換する計画が採択されていました。自社の生産だけに頼らない売上の柱を作る投資です。
例えば、養鶏場がスイーツ製造への新分野展開で、契約額1,000万円の設備投資を行うとします。補助率2/3が適用されれば約667万円が補助される計算です。投資規模と自己負担額を早めに試算しておくと、事業計画書の説得力が増します。
農業が対象外になるケース|1次産業のままの転換はNG
事業再構築補助金では、新たに取り組む事業が農業・林業・漁業そのものである場合は対象外です。加工や販売という2次・3次産業への広がりがあるかどうかが判断の分かれ目でした。
野菜農家が新しく別の作物を作る、飲食店が新しく漁業を始めるといった、1次産業の枠内にとどまる投資は補助対象になりません。加工・直売・EC販売など、2次・3次産業への広がりを事業計画に明記できるかが審査の分かれ目でした。
「農業の設備投資だから当然対象になる」と思い込んで計画を進めるのは危険です。採択後に対象外と判明すると、事業計画そのものを組み直すことになります。私も相談の現場で、栽培規模の拡大だけを主目的にした計画書を提出し、対象外と指摘された農業経営者を見てきました。
同一構内で専従の従業員を配置し、製造・加工まで自社で行う場合は2次・3次産業に該当し、対象になる可能性が高まります。栽培だけで完結させず、加工・販売までの流れを事業計画に組み込むことが、対象内に収める鍵になります。
加工施設を建てるなら農地転用許可が先
農地に加工施設や直売所を建設する場合は、農地法上の転用許可が必要になることがあります。宿泊業の許可区分と同じく、事業計画とあわせて確認すべき法令要件です。
補助金専門メディアが公開する農業分野の解説でも、農地への施設整備は農地転用の許可要件と切り離せない論点として扱われています。農地転用許可の審査には一定の期間がかかるため、事業計画の作成と並行して農業委員会へ相談しておくことが望ましいとされています。
許可の見落としは、採択後に着工が遅れる典型的な落とし穴です。加工施設を建てる場所が農地かどうかは、計画の初期段階で必ず確認してください。
支援の入口は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ移った
2026年8月時点で農業が使えるのは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。事業再構築補助金から2段階先の制度にあたります。

事業再構築補助金は2025年6月に中小企業新事業進出補助金へ引き継がれ、この制度も2026年6月19日の第4回公募で終了しました。第1回公募要領は2026年6月29日に公開され、申請受付は2026年8月31日に始まっています。
中小企業基盤整備機構の制度公式サイトでは、新市場・高付加価値事業への進出や海外市場開拓に向けた設備投資が対象と説明されています。制度名が短期間で変わっているため、古い記事の情報を鵜呑みにしないことが大切です。
精米ラインや環境制御設備など、農業でものづくり補助金を活用した事例は精米ラインで売上2倍|農業のものづくり補助金採択事例にまとめています。
加工設備は対象、汎用の農業機械は対象外
後継制度で農業が対象にできるのは、加工・直売のための建物費や検査・パッケージング設備の導入費です。汎用のトラクターなど、他の用途にも使える農業機械は対象になりません。

| 経費区分 | 農業での具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 建物費 | 加工場・直売所の新設、キッチンカーの改修 | 2次・3次産業への転換が前提 |
| 機械装置費 | 検査・パッケージング設備、冷蔵・冷凍設備 | 事業計画に紐づく専用設備が対象 |
| 対象外の例 | 汎用トラクター等の農業機械、土地・農地の取得費 | 生産性向上と直結しない投資 |
倉庫や貯蔵設備を中心に検討している場合は、農業の倉庫投資は建物費NG|ものづくり補助金の対象は設備費で対象範囲を解説しています。
審査で重視されるのは、設備のスペックではなく投資後にどれだけ販路や付加価値が広がるかという数値の根拠です。「6次産業化を進める」とだけ書いて、売上構成の変化を数字で示せていない事業計画書は、審査側に伝わりにくくなります。加工品の想定販売単価や販路をどう広げるか、具体的に落とし込む必要があります。
750万円から2500万円|枠と従業員数で変わる上限額
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助上限額は、枠と従業員規模により750万円〜2,500万円が目安です。農業法人の規模だと、革新的新製品・サービス枠か新事業進出枠が候補になります。
| 枠 | 従業員規模 | 補助上限額の目安 | 補助率 | |:--|:--|:--| | 革新的新製品・サービス枠 | 1〜5人 | 750万円 | 中小1/2・小規模2/3 | | 新事業進出枠 | 1〜20人 | 2,500万円 | 中小1/2 |
中小企業庁が公開した第1回公募要領では、申請に電子申請システムでのGビズIDプライムの取得が必要と説明されています。取得までに2〜3週間かかるため、締切ぎりぎりでは間に合いません。
小規模な投資であれば、小規模事業者持続化補助金は中小企業も対象|3制度の使い分けのほうが向いている場合もあります。
制度名の思い込みで手続きを間違えた農業の例
よくある失敗は、終了した制度の情報のまま準備すること、栽培規模の拡大だけを主目的にすること、交付決定前に発注してしまうことの3つです。いずれも情報収集の段階で防げます。
採択されても、交付決定の通知を受け取る前に加工設備等を発注・契約すると、その経費は補助対象になりません。見積もりの取得までにとどめ、契約は交付決定後に進めてください。
1点目は、「事業再構築補助金」の名前のまま古い公募要領を参考にしてしまうケースです。現行の後継制度とは対象経費や必要書類の要件が食い違います。2点目は、栽培規模の拡大や汎用機械の更新を主目的にしたまま申請してしまうこと。3点目は、採択の連絡を受けてすぐに設備を発注し、対象経費から外れてしまうことです。
当社は登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。農業特有の農地転用要件や経費区分に迷う場合は、無料相談で投資内容を伝えてください。
事業計画書の作成では、加工・直売への転換で売上構成や販路がどう変わるかを、根拠となる数値とあわせて示す必要があります。過去の事業再構築補助金の審査でも、数値目標があいまいな計画書は採択されにくい傾向がありました。現状の生産量・単価を実測値として整理してから計画に落とし込むと、根拠のブレが少なくなります。
加工品を作る前に、販路を決めておく
設備を入れてから売り先を探すと、稼働率が上がりません。申請の計画段階で販路を決めてください。
農産加工で現実的な販路は、次の4つです。
| 販路 | 立ち上がり | 気をつけること |
|---|---|---|
| 直売所・道の駅 | 早い | 数量が読めず、日持ちが課題になる |
| ふるさと納税 | 中 | 自治体の返礼品登録の手続きと時期がある |
| ECサイト | 中 | 送料と梱包の設計が利益を左右する |
| 卸(小売・飲食) | 遅い | ロットと納期の約束ができるかで決まる |
卸を主力に置く計画は慎重に見てください。安定した数量を継続して出せることが前提で、天候に左右される農産物では約束しにくい面があります。
加工品の表示(原材料、アレルゲン、賞味期限)は保健所の確認が要ります。設備の設計と同時に進めてください。あとから容器を変えることになると費用が二重にかかります。
まとめ|6次産業化は今の制度でも狙える
事業再構築補助金は、農業も加工・直売への転換や新分野展開の事例で数多く採択されてきた制度でした。ただし2025年3月26日の第13回公募をもって新規申請の受付を終了しました。今から申請することはできません。
農業経営者が今すぐ確認すべきは、後継制度である新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象経費と、農地転用許可が必要かどうかです。過去の事例は参考にしつつ、申請の手続きは現行制度に沿って進めてください。「事業再構築補助金」という言葉で検索を始めた場合でも、たどり着く先は現行の後継制度です。
私たちは登録支援事業者として、農業を含む多くの事業者の申請に伴走してきました。制度の切り替わりで何を使えばよいか分からないときは、1人で判断せず早めに相談してください。公募要領は毎回見直されるため、申請の直前には必ず最新情報を確認してください。
