事業再構築補助金は宿泊業(旅館・ホテル・簡易宿泊所)でも申請でき、インバウンド需要の回復を見込んだ投資が数多く採択されてきました。ただし2025年3月26日の第13回公募をもって新規申請の受付を終了しています。「事業再構築補助金 宿泊業」で検索して情報を探している場合、まず押さえるべきは制度が終了している事実です。本記事では、宿泊業が採択されてきた活用事例3パターン、旅館業法の許可区分との関係、今使える後継制度で対象にできる経費を2026年8月時点の情報で整理します。
※ 2026年8月時点の情報です。後継制度は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募情報を基準にしています。
この記事でわかること
- 宿泊業で採択されてきた活用事例3パターン
- 旅館業法の許可区分で確認すべきこと
- 今使える後継制度の対象経費
- 後継制度の補助上限額と申請ステップ
インバウンド需要の回復で動いた宿泊業への支援
結論として、事業再構築補助金は宿泊業も対象で、インバウンド需要の回復を見込んだ業態転換や新分野展開の投資が数多く採択されてきました。制度上、業種による除外はなく、旅館・ホテル・簡易宿泊所・民泊事業者まで幅広い事業者が申請していました。
関連して、小規模事業者持続化補助金|クリニックは対象外と代替2制度もあわせてご確認ください。 他業種の事例は、事業再構築補助金 クリニックは医療法人不可|個人開業医の採択3事例で紹介しています。
飲食店の転換事例は事業再構築補助金の飲食店活用事例3選と今の申請方法にまとめました。
建設業のケースは事業再構築補助金は建設業も対象|3つの事例と今の後継制度で解説しています。
事業再構築補助金の事務局公式サイトには「本補助金の公募は終了しております」と明記されています。第13回公募の採択結果は、応募3,100者に対し採択1,101者で、採択率は26.5%でした。過去形の制度であることを前提に、事例を参考情報として読み進めてください。
私たちはAI導入補助金の登録支援事業者として、日々さまざまな補助金の相談を受けています。宿泊業の経営者から「事業再構築補助金を使いたい」という相談は今も届きますが、まず制度の現状を正確に伝えるところから始めています。
温泉旅館の客単価倍増から民泊参入まで|採択事例3つ
宿泊業の採択事例は、業態転換・新分野展開・異業種参入という3つのパターンに大別できます。単なる客室リニューアルではなく、既存事業からの転換を伴う投資が採択の軸でした。

1つ目は業態転換です。地方の温泉旅館が、温泉資源を生かしたヘルスツーリズム特化型ホテルへ転換し、客単価を4万円台から8万円台へ引き上げた事例が公開されています。都市型のビジネスホテルがデザイン・体験訴求型の宿泊施設へ転換する事例もありました。
2つ目は新分野展開です。ホテル運営会社が空き施設を使い、法人向けサブスクリプション型のワーケーション事業に参入する計画が採択されていました。既存の観光需要に頼らない売上の柱を作る投資です。
3つ目は異業種参入です。不動産賃貸管理業のノウハウを生かして宿泊施設を新設した事例や、京都府内で地域産品を提供する一棟貸し別荘・簡易宿泊所を開設した事例が公開されています。いずれも「今の客室の延長」ではなく、新しい事業の形への転換が条件でした。
例えば、旅館がグランピング施設への新分野展開で、契約額1,300万円の設備投資を行うとします。補助率2/3が適用されれば約867万円が補助される計算です。投資規模と自己負担額を早めに試算しておくと、事業計画書の説得力が増します。
客室を減らして一棟貸しにするなら保健所への相談が先
宿泊業が業態転換する際は、旅館業法上の営業許可区分(旅館・ホテル営業/簡易宿所営業)の変更届出が必要になる場合があります。建設業の許可業種と同じく、事業計画とあわせて確認すべき法令要件です。許可区分の見落としは、着工後に判明しやすい落とし穴。
客室数を大きく減らして一棟貸し施設へ転換したり、簡易宿泊所として運営を始めたりする場合、既存の許可のままで営業を続けられるとは限りません。管轄の保健所へ計画段階で相談してください。
「今の許可のまま新業態を始められる」と思い込んで計画を進めるのは危険です。採択後に許可区分の不備が判明すると、事業の立ち上げ自体が遅れます。私も相談の現場で、許可区分の確認を後回しにして、採択後に慌てて保健所へ相談し直した宿泊業の経営者を見てきました。
補助金専門メディアが公開する宿泊業の解説でも、業態転換時の許可要件は事業計画と切り離せない論点として扱われています。
支援の入口は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ移った
2026年8月時点で宿泊業が使えるのは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。事業再構築補助金から2段階先の制度にあたります。
関連して、農業の補助金の申請方法|制度の選び方と5ステップ【2026年】もあわせてご確認ください。 つまずきやすい点は事業再構築補助金で農業が使えたのは6次産業化|対象外の境界線でも扱っています。

事業再構築補助金は2025年6月に中小企業新事業進出補助金へ引き継がれ、この制度も2026年6月19日の第4回公募で終了しました。第1回公募要領は2026年6月29日に公開され、申請受付は2026年8月31日に始まっています。
中小企業基盤整備機構の制度公式サイトでは、新市場・高付加価値事業への進出や海外市場開拓に向けた設備投資が対象と説明されています。制度名が短期間で変わっているため、古い記事の情報を鵜呑みにしないことが大切です。
関連する後継制度の詳しい要件は事業再構築補助金は個人事業主もいつまで?後継3制度の使い方でも整理しています。
予約システムや客室改修は対象、原状回復だけの工事は対象外
後継制度で宿泊業が対象にできるのは、客室改修やグランピング設備などの建物費、予約サイト構築の外注費です。老朽化対応のみの原状回復工事費は対象になりません。

| 経費区分 | 宿泊業での具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 建物費 | グランピング施設・ワーケーション用個室の新設 | 新業態への転換が前提 |
| 外注費・専門家経費 | 多言語対応の予約サイト構築、事業計画策定支援 | 建物費と組み合わせて計上 |
| 対象外の例 | 老朽化対応のみの原状回復工事、土地・建物の購入 | 生産性向上と直結しない投資 |
ITツール中心の投資を検討している場合は、宿泊業のIT導入補助金は有利?20人以下特例と対象ツールで対象範囲を解説しています。
審査で重視されるのは、設備のスペックではなく投資後にどれだけ客単価や稼働率が向上するかという数値の根拠です。「インバウンドを取り込む」とだけ書いて、客単価や稼働率の変化を数字で示せていない事業計画書は、審査側に伝わりにくくなります。転換前後の売上構成をどう変えるか、具体的に落とし込む必要があります。
不動産賃貸管理業からの異業種参入事例では、既存の入居者管理ノウハウを宿泊施設の運営体制にそのまま転用する計画が評価されていました。畑違いの業種であっても、既存事業の強みを新分野展開の理由として説明できれば採択の可能性は残ります。逆に、既存事業との関連性を説明できない投資は、審査側に唐突な印象を与えやすくなります。
750万円から2500万円|枠と従業員数で変わる上限額
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助上限額は、枠と従業員規模により750万円〜2,500万円が目安です。宿泊業の規模だと、革新的新製品・サービス枠か新事業進出枠が候補になります。
| 枠 | 従業員規模 | 補助上限額の目安 | 補助率 | |:--|:--|:--| | 革新的新製品・サービス枠 | 1〜5人 | 750万円 | 中小1/2・小規模2/3 | | 新事業進出枠 | 1〜20人 | 2,500万円 | 中小1/2 |
中小企業庁が公開した第1回公募要領では、申請に電子申請システムでのGビズIDプライムの取得が必要と説明されています。取得までに2〜3週間かかるため、締切ぎりぎりでは間に合いません。
小規模な投資であれば、小規模事業者持続化補助金は中小企業も対象|3制度の使い分けのほうが向いている場合もあります。
制度名の思い込みで手続きを間違えた宿泊業の例
よくある失敗は、終了した制度の情報のまま準備すること、客室改修を主目的にすること、交付決定前に発注してしまうことの3つです。いずれも情報収集の段階で防げます。
採択されても、交付決定の通知を受け取る前にグランピング設備等を発注・契約すると、その経費は補助対象になりません。見積もりの取得までにとどめ、契約は交付決定後に進めてください。
1点目は、「事業再構築補助金」の名前のまま古い公募要領を参考にしてしまうケースです。現行の後継制度とは対象経費や必要書類の要件が食い違います。2点目は、老朽化した客室の原状回復を主目的にしたまま申請してしまうこと。3点目は、採択の連絡を受けてすぐに設備を発注し、対象経費から外れてしまうことです。
当社は登録支援事業者として、対象ツールの選定から申請書類の作成、採択後の実績報告まで一貫して支援しています。宿泊業特有の許可要件や経費区分に迷う場合は、無料相談で投資内容を伝えてください。
事業計画書の作成では、新業態への転換で客単価や稼働率がどう変わるかを、根拠となる数値とあわせて示す必要があります。過去の事業再構築補助金の審査でも、数値目標があいまいな計画書は採択されにくい傾向がありました。現状の稼働率・客単価を実測値として整理してから計画に落とし込むと、根拠のブレが少なくなります。
改修中の売上をどう埋めるか
工事期間中は客室が使えません。この期間の資金繰りを見ずに着工すると、補助金が入る前に資金が尽きます。
見ておくのは3点です。
- 工事期間中に止まる客室数と、その分の売上
- 補助金の入金時期(実績報告のあと。着工から半年以上先になることもある)
- その間の固定費(人件費、借入返済、光熱費)
補助金は後払いです。工事費はいったん全額を自社で支払います。この立て替え期間の資金を、金融機関と先に相談しておいてください。
工事の分け方でも変わります。全館を一度に止めるより、フロアごとに区切って営業を続けるほうが売上は残ります。ただし工期は延び、工事費も上がるのが通常です。
どちらが有利かは、稼働率と工期で変わります。設計事務所と工務店に、両方の見積を出してもらってから判断してください。
まとめ|インバウンド需要は今の制度でも狙える
事業再構築補助金は、宿泊業も業態転換や新分野展開の事例で数多く採択されてきた制度でした。ただし2025年3月26日の第13回公募をもって新規申請の受付を終了しました。今から申請することはできません。
宿泊業が今すぐ確認すべきは、後継制度である新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象経費と、旅館業法上の許可区分に変更が必要かどうかです。過去の事例は参考にしつつ、申請の手続きは現行制度に沿って進めてください。「事業再構築補助金」という言葉で検索を始めた場合でも、たどり着く先は現行の後継制度です。
私たちは登録支援事業者として、宿泊業を含む多くの事業者の申請に伴走してきました。制度の切り替わりで何を使えばよいか分からないときは、1人で判断せず早めに相談してください。公募要領は毎回見直されるため、申請の直前には必ず最新情報を確認してください。
