事業再構築補助金の新規公募は、第13回(2025年3月締切)で終了しています。新しく申請する場合の後継は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です(制度のまとめ)。すでに採択された事業者の事業化状況報告などの手続きは続きます。
※ 後継制度は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募情報を基準にしています。
この記事でわかること
- 宿泊業と農業で採択されてきた活用事例3パターン
- 農業が対象外になりやすいケースの見分け方
- 旅館業法の許可区分・農地転用許可で確認すべきこと
- 今使える後継制度の対象経費
- 後継制度の補助上限額と申請ステップ
インバウンド需要と6次産業化で動いた支援
結論として、事業再構築補助金は宿泊業も農業も対象で、業態転換や6次産業化の投資が数多く採択されてきました。制度上、業種による除外はなく、旅館・ホテル・簡易宿泊所・民泊事業者から、個人農家・農業生産法人まで幅広い事業者が申請していました。
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業種によって、採択の軸も対象経費も確認すべき法令も変わります。先に全体像を押さえてください。
| 項目 | 宿泊業 | 農業 |
|---|---|---|
| 採択の軸 | インバウンド需要を見込んだ業態転換・新分野展開 | 加工・直売へ広げる6次産業化 |
| 代表的な事例 | 温泉旅館のヘルスツーリズム転換、ワーケーション事業への参入 | キッチンカーでの食品製造業への転換、規格外卵のスイーツ事業 |
| 対象になる経費 | 客室改修・グランピング設備の建物費、予約サイト構築の外注費 | 加工場・直売所の建物費、検査・パッケージング設備の導入費 |
| 対象外になる例 | 老朽化対応のみの原状回復工事費 | 汎用トラクター等の農業機械、別の作物を作るだけの投資 |
| 確認すべき法令 | 旅館業法の営業許可区分(保健所) | 農地法の転用許可(農業委員会) |
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事業再構築補助金の事務局公式サイトには「本補助金の公募は終了しております」と明記されています。第13回公募の採択結果は、応募3,100者に対し採択1,101者で、採択率は26.5%でした。過去形の制度であることを前提に、事例を参考情報として読み進めてください。
私たちはAI導入補助金の登録支援事業者として、日々さまざまな補助金の相談を受けています。宿泊業や農業の経営者から「事業再構築補助金を使いたい」という相談は今も届きますが、まず制度の現状を正確に伝えるところから始めています。
温泉旅館の客単価倍増から規格外卵のスイーツまで|業種別の採択事例
宿泊業も農業も、採択事例は3つのパターンに大別できます。単なる客室リニューアルや増産ではなく、既存事業からの転換を伴う投資が採択の軸でした。
宿泊業|業態転換・新分野展開・異業種参入
宿泊業では、インバウンド需要の取り込みを軸にした3パターンが中心でした。

1つ目は業態転換です。地方の温泉旅館が、温泉資源を生かしたヘルスツーリズム特化型ホテルへ転換し、客単価を4万円台から8万円台へ引き上げた事例が公開されています。都市型のビジネスホテルがデザイン・体験訴求型の宿泊施設へ転換する事例もありました。
2つ目は新分野展開です。ホテル運営会社が空き施設を使い、法人向けサブスクリプション型のワーケーション事業に参入する計画が採択されていました。既存の観光需要に頼らない売上の柱を作る投資です。
3つ目は異業種参入です。不動産賃貸管理業のノウハウを生かして宿泊施設を新設した事例や、京都府内で地域産品を提供する一棟貸し別荘・簡易宿泊所を開設した事例が公開されています。いずれも「今の客室の延長」ではなく、新しい事業の形への転換が条件でした。
例えば、旅館がグランピング施設への新分野展開で、契約額1,300万円の設備投資を行うとします。補助率2/3が適用されれば約867万円が補助される計算です。投資規模と自己負担額を早めに試算しておくと、事業計画書の説得力が増します。
農業|加工・直売への転換・新分野展開・地域商社化
農業では、栽培だけで完結させず、新しい売り先をつくる3パターンが中心でした。
1つ目は加工・直売への転換です。有機野菜を栽培していた農家が、キッチンカーを使う食品製造業へ業態転換し、試行販売で需要を確認したうえで設備投資に踏み切った事例が公開されています。加工と販売まで自社で担う点が転換の核でした。
2つ目は新分野展開です。養鶏場が、廃棄していた規格外の鶏卵を使ったスイーツを開発し、店舗販売とEC販売の両方に参入した事例が公開されています。既存のパティシエと組み、規格外卵の活用そのものを差別化の要因にした点が特徴です。
3つ目は地域商社化です。農業生産法人が空き倉庫を加工工場へ改修し、地域の農産物を集めて加工・販売する地域商社へ転換する計画が採択されていました。宿泊業のワーケーション参入と同じく、自社の生産だけに頼らない売上の柱を作る投資です。
例えば、養鶏場がスイーツ製造への新分野展開で、契約額1,000万円の設備投資を行うとします。補助率2/3が適用されれば約667万円が補助される計算になります。
1次産業のままの転換は対象外|農業の境界線
事業再構築補助金では、新たに取り組む事業が農業・林業・漁業そのものである場合は対象外でした。加工や販売という2次・3次産業への広がりがあるかどうかが、判断の分かれ目です。
野菜農家が新しく別の作物を作る、飲食店が新しく漁業を始めるといった、1次産業の枠内にとどまる投資は補助対象になりません。加工・直売・EC販売など、2次・3次産業への広がりを事業計画に明記できるかが審査の分かれ目でした。
「農業の設備投資だから当然対象になる」と思い込んで計画を進めるのは危険です。採択後に対象外と判明すると、事業計画そのものを組み直すことになります。私も相談の現場で、栽培規模の拡大だけを主目的にした計画書を提出し、対象外と指摘された農業経営者を見てきました。
同一構内で専従の従業員を配置し、製造・加工まで自社で行う場合は2次・3次産業に該当し、対象になる可能性が高まります。栽培だけで完結させず、加工・販売までの流れを事業計画に組み込むことが、対象内に収める鍵になります。
客室を減らして一棟貸しにするなら保健所への相談が先
宿泊業が業態転換する際は、旅館業法上の営業許可区分(旅館・ホテル営業/簡易宿所営業)の変更届出が必要になる場合があります。建設業の許可業種と同じく、事業計画とあわせて確認すべき法令要件です。許可区分の見落としは、着工後に判明しやすい落とし穴。
客室数を大きく減らして一棟貸し施設へ転換したり、簡易宿泊所として運営を始めたりする場合、既存の許可のままで営業を続けられるとは限りません。管轄の保健所へ計画段階で相談してください。
「今の許可のまま新業態を始められる」と思い込んで計画を進めるのは危険です。採択後に許可区分の不備が判明すると、事業の立ち上げ自体が遅れます。私も相談の現場で、許可区分の確認を後回しにして、採択後に慌てて保健所へ相談し直した宿泊業の経営者を見てきました。
補助金専門メディアが公開する宿泊業の解説でも、業態転換時の許可要件は事業計画と切り離せない論点として扱われています。
加工施設を農地に建てるなら農地転用許可が先
農地に加工施設や直売所を建設する場合は、農地法上の転用許可が必要になることがあります。宿泊業の許可区分と同じく、事業計画とあわせて確認すべき法令要件です。
補助金専門メディアが公開する農業分野の解説でも、農地への施設整備は農地転用の許可要件と切り離せない論点として扱われています。農地転用許可の審査には一定の期間がかかるため、事業計画の作成と並行して農業委員会へ相談しておくことが望ましいとされています。
許可の見落としは、宿泊業の許可区分と同様に、採択後の着工が遅れる典型的な落とし穴です。加工施設を建てる場所が農地かどうかは、計画の初期段階で必ず確認してください。
支援の入口は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ移った
2026年8月時点で宿泊業と農業が使えるのは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。事業再構築補助金から2段階先の制度にあたります。

事業再構築補助金は2025年6月に中小企業新事業進出補助金へ引き継がれ、この制度も2026年6月19日の第4回公募で終了しました。第1回公募要領は2026年6月29日に公開され、申請受付は2026年9月30日に始まりました。締切は当初の9月30日から変更された2026年10月30日18時です(2026年10月20日に公式サイトで確認)。
中小企業基盤整備機構の制度公式サイトでは、新市場・高付加価値事業への進出や海外市場開拓に向けた設備投資が対象と説明されています。制度名が短期間で変わっているため、古い記事の情報を鵜呑みにしないことが大切です。
客室改修や加工設備は対象、原状回復と汎用機械は対象外
後継制度で対象になるのは、新しい業態に直結する建物費と専用設備の費用です。老朽化対応のみの原状回復工事費や、他の用途にも使える汎用機械は対象になりません。
宿泊業|客室改修とグランピング設備は対象
後継制度で宿泊業が対象にできるのは、客室改修やグランピング設備などの建物費、予約サイト構築の外注費です。老朽化対応のみの原状回復工事費は対象になりません。

| 経費区分 | 宿泊業での具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 建物費 | グランピング施設・ワーケーション用個室の新設 | 新業態への転換が前提 |
| 外注費・専門家経費 | 多言語対応の予約サイト構築、事業計画策定支援 | 建物費と組み合わせて計上 |
| 対象外の例 | 老朽化対応のみの原状回復工事、土地・建物の購入 | 生産性向上と直結しない投資 |
審査で重視されるのは、設備のスペックではなく投資後にどれだけ客単価や稼働率が向上するかという数値の根拠です。「インバウンドを取り込む」とだけ書いて、客単価や稼働率の変化を数字で示せていない事業計画書は、審査側に伝わりにくくなります。転換前後の売上構成をどう変えるか、具体的に落とし込む必要があります。
不動産賃貸管理業からの異業種参入事例では、既存の入居者管理ノウハウを宿泊施設の運営体制にそのまま転用する計画が評価されていました。畑違いの業種であっても、既存事業の強みを新分野展開の理由として説明できれば採択の可能性は残ります。逆に、既存事業との関連性を説明できない投資は、審査側に唐突な印象を与えやすくなります。
農業|加工設備は対象、汎用の農業機械は対象外
後継制度で農業が対象にできるのは、加工・直売のための建物費や検査・パッケージング設備の導入費です。汎用のトラクターなど、他の用途にも使える農業機械は対象になりません。
| 経費区分 | 農業での具体例 | 備考 |
|---|---|---|
| 建物費 | 加工場・直売所の新設、キッチンカーの改修 | 2次・3次産業への転換が前提 |
| 機械装置費 | 検査・パッケージング設備、冷蔵・冷凍設備 | 事業計画に紐づく専用設備が対象 |
| 対象外の例 | 汎用トラクター等の農業機械、土地・農地の取得費 | 生産性向上と直結しない投資 |
農業でも、審査で見られるのは投資後にどれだけ販路や付加価値が広がるかという数値の根拠です。「6次産業化を進める」とだけ書いて、売上構成の変化を数字で示せていない事業計画書は、審査側に伝わりにくくなります。加工品の想定販売単価や販路をどう広げるか、具体的に落とし込む必要があります。
750万円から2500万円|枠と従業員数で変わる上限額
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助上限額は、枠と従業員規模により750万円〜2,500万円が目安です。宿泊業や農業法人の規模だと、革新的新製品・サービス枠か新事業進出枠が候補になります。
| 枠 | 従業員規模 | 補助上限額の目安 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 1〜5人 | 750万円 | 中小1/2・小規模2/3 |
| 新事業進出枠 | 1〜20人 | 2,500万円 | 中小1/2 |
中小企業庁が公開した第1回公募要領では、申請に電子申請システムでのGビズIDプライムの取得が必要と説明されています。取得までに2〜3週間かかるため、締切ぎりぎりでは間に合いません。
制度名の思い込みで手続きを間違えた例
よくある失敗は、終了した制度の情報のまま準備すること、客室改修や栽培規模の拡大を主目的にすること、交付決定前に発注してしまうことの3つです。いずれも情報収集の段階で防げます。
採択されても、交付決定の通知を受け取る前にグランピング設備や加工設備等を発注・契約すると、その経費は補助対象になりません。見積もりの取得までにとどめ、契約は交付決定後に進めてください。
1点目は、「事業再構築補助金」の名前のまま古い公募要領を参考にしてしまうケースです。現行の後継制度とは対象経費や必要書類の要件が食い違います。2点目は、宿泊業なら老朽化した客室の原状回復、農業なら栽培規模の拡大や汎用機械の更新を主目的にしたまま申請してしまうこと。3点目は、採択の連絡を受けてすぐに設備を発注し、対象経費から外れてしまうことです。
当社は登録支援事業者として、対象ツールの選定から、申請に向けた相談・助言、採択後の実績報告まで一貫して支援しています(申請書類はお客様が作成し、当社は内容の確認と助言を行います)。宿泊業特有の許可要件や、農業の農地転用要件、経費区分に迷う場合は、無料相談で投資内容を伝えてください。
事業計画書の作成では、新業態への転換で客単価や稼働率、売上構成や販路がどう変わるかを、根拠となる数値とあわせて示す必要があります。過去の事業再構築補助金の審査でも、数値目標があいまいな計画書は採択されにくい傾向がありました。宿泊業なら現状の稼働率・客単価、農業なら生産量・単価を実測値として整理してから計画に落とし込むと、根拠のブレが少なくなります。
改修中の売上をどう埋めるか|宿泊業の資金繰り
工事期間中は客室が使えません。この期間の資金繰りを見ずに着工すると、補助金が入る前に資金が尽きます。
見ておくのは3点です。
- 工事期間中に止まる客室数と、その分の売上
- 補助金の入金時期(実績報告のあと。着工から半年以上先になることもある)
- その間の固定費(人件費、借入返済、光熱費)
補助金は後払いです。工事費はいったん全額を自社で支払います。この立て替え期間の資金を、金融機関と先に相談しておいてください。
工事の分け方でも変わります。全館を一度に止めるより、フロアごとに区切って営業を続けるほうが売上は残ります。ただし工期は延び、工事費も上がるのが通常です。
どちらが有利かは、稼働率と工期で変わります。設計事務所と工務店に、両方の見積を出してもらってから判断してください。
加工品を作る前に、販路を決めておく|農業の販路設計
設備を入れてから売り先を探すと、稼働率が上がりません。申請の計画段階で販路を決めてください。
農産加工で現実的な販路は、次の4つです。
| 販路 | 立ち上がり | 気をつけること |
|---|---|---|
| 直売所・道の駅 | 早い | 数量が読めず、日持ちが課題になる |
| ふるさと納税 | 中 | 自治体の返礼品登録の手続きと時期がある |
| ECサイト | 中 | 送料と梱包の設計が利益を左右する |
| 卸(小売・飲食) | 遅い | ロットと納期の約束ができるかで決まる |
卸を主力に置く計画は慎重に見てください。安定した数量を継続して出せることが前提で、天候に左右される農産物では約束しにくい面があります。
加工品の表示(原材料、アレルゲン、賞味期限)は保健所の確認が要ります。宿泊業の許可区分と同じく、設備の設計と同時に進めてください。あとから容器を変えることになると、費用が二重にかかります。
まとめ|インバウンド需要も6次産業化も今の制度で狙える
事業再構築補助金は、宿泊業も農業も、業態転換や新分野展開の事例で数多く採択されてきた制度でした。ただし2025年3月26日の第13回公募をもって新規申請の受付を終了しました。今から申請することはできません。
今すぐ確認すべきは、後継制度である新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象経費と、宿泊業なら旅館業法上の許可区分、農業なら農地転用許可に変更や手続きが必要かどうかです。過去の事例は参考にしつつ、申請の手続きは現行制度に沿って進めてください。「事業再構築補助金」という言葉で検索を始めた場合でも、たどり着く先は現行の後継制度です。
私たちは登録支援事業者として、宿泊業や農業を含む多くの事業者の申請に伴走してきました。制度の切り替わりで何を使えばよいか分からないときは、1人で判断せず早めに相談してください。公募要領は毎回見直されるため、申請の直前には必ず最新情報を確認してください。

