ものづくり補助金は、自動車整備業のリフト・タイヤチェンジャー・塗装ブースなど設備投資にも使える制度で、2026年度からは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という名称で運用されています。老朽化した整備機器の入れ替えや、電子制御装置整備に対応した設備の導入を検討する整備工場との相性が良い制度です。本記事では、自動車整備業で対象になる設備5分野、スキャンツール・診断機の扱い、3つの申請枠の補助率・上限額を2026年9月時点の情報で整理します。
※ 2026年9月時点の情報です。第1回公募の申請受付は2026年8月31日に開始、締切は2026年9月30日18時です。
この記事でわかること
- 自動車整備業で対象になる設備投資5分野
- スキャンツール・診断機がものづくり補助金の対象になるか
- 3つの申請枠の補助率・補助上限額
- IT導入補助金との使い分け
自動車整備業も対象|「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の概要
ものづくり補助金は、機械装置やシステムへの投資を支援する制度で、自動車整備業を含む全業種が対象です。対象経費の中心が機械装置費であるため、老朽化したリフトや塗装ブースの入れ替えを検討する整備工場との相性が良い制度です。
中小企業庁が公開した第1回公募要領によると、申請受付は2026年8月31日に始まり、締切は2026年9月30日18時と案内されています。採択はゴールではなく、実績報告を終えて初めて交付額が確定します。
過去に「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称で呼ばれていたため、今もその名前で探す経営者が多くいます。制度の系譜や中小企業者の判定基準は、ものづくり補助金は資本金オーバーでも対象?中小企業者7区分で解説しています。
私たちセブンセンシズ株式会社(大阪市東成区・2020年3月創業)は、登録支援事業者として自動車整備業からの補助金相談を受けています。「ものづくり補助金は製造業向け」という思い込みを整備工場の経営者からもよく聞きますが、実際は業種を問わず設備投資であれば対象になり得ます。
リフト・タイヤチェンジャー・塗装ブースなど対象設備5分野
自動車整備業の対象設備は、リフト・タイヤチェンジャー・ホイールバランサー・塗装ブース・洗車機の5分野に整理できます。どの設備を優先するかは、自社のボトルネックによって変わります。

中小企業診断士事務所が整理した解説記事によると、2柱・4柱の自動車リフト、タイヤチェンジャー、アライメントテスター、塗装ブース、洗車機が主な活用設備として挙げられています。
共通するのは、人手や時間に頼っていた整備工程を機械に置き換えるという発想。古いリフトを1基のまま使い続けている工場では、稼働台数そのものが頭打ちになりやすい点に注意してください。
私も相談の現場で、タイヤ交換の待ち時間が長く、繁忙期に受け入れ台数を絞らざるを得ないという整備工場の声を聞いたことがあります。タイヤチェンジャーやホイールバランサーの増設は、こうした受け入れ台数の頭打ちを解消する投資のひとつです。
塗装ブースや洗車機は、板金塗装や仕上げ工程を扱う工場ほど投資効果を実感しやすい設備です。既存ブースが小型で大型車に対応できない、換気性能が古く塗装品質にばらつきが出る、といった課題を抱える工場では、入れ替えの優先度が上がります。どの設備から着手するかは、自社の入庫台数と作業工程のどこに時間がかかっているかを洗い出すところから決めてください。
スキャンツール・診断機はものづくり補助金なら対象になるか
IT導入補助金では対象外のスキャンツール本体も、ものづくり補助金なら機械装置費として対象になり得ます。制度の性質が異なるため、同じ機器でも扱いが変わります。

電子制御装置整備の認証に義務づけられたスキャンツールは、自動車整備業のIT導入補助金2026|スキャンツールは対象外になる理由で解説した通りです。ソフトウェア導入を主眼とするIT導入補助金では、この機器単体は対象外という扱いになります。
IT導入補助金はソフトウェアの導入費用が中心のため、スキャンツール本体は原則対象外です。ものづくり補助金は機械装置費そのものが対象になり得る制度のため、診断業務の生産性向上効果を事業計画で具体的に示せるかが判断の分かれ目になります。
同じスキャンツールでも、申請する制度によって扱いが正反対になる点は見落とされがちです。ソフト中心の投資ならIT導入補助金、機器そのものへの投資ならものづくり補助金と考えると選びやすくなります。
汎用車両・日常工具が対象外になる線引き
公道を走る一般的な車両や、日常業務で使う汎用工具は原則として補助対象になりません。対象になるのは、あくまで事業計画に紐づく専用の機械装置です。
| 区分 | 対象になる例 | 対象外になる例 |
|---|---|---|
| 設備 | リフト・塗装ブースなど専用機械装置 | 日常使う汎用工具・事務用品 |
| 車両 | 事業計画に紐づく特殊な作業車両 | 公道を走る一般的な社有車 |
| 発注時期 | 交付決定後に発注した経費 | 交付決定前に発注した経費 |
他の用途にも使える一般的な工具や社有車は対象外です。整備の生産性向上に直結する専用の機械装置を中心に計上してください。
事業計画で説明する効果に機器を絞り込むことが、審査を通す上での分かれ目になります。「あると便利」ではなく「この設備がないと生産性が上がらない」という理由づけが必要です。
3つの申請枠|整備工場の投資規模に合う選び方
申請枠は革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つで、上限額は2,500万円から最大9,000万円まで幅があります。投資の規模と目的に合う枠を選んでください。
| 申請枠 | 補助率 | 補助上限額 | 実施期間 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 1/2(特例2/3) | 2,500万円(特例3,500万円) | 交付決定から10か月 |
| 新事業進出枠 | 1/2(特例2/3) | 7,000万円(特例9,000万円) | 交付決定から14か月 |
| グローバル枠 | 2/3 | 7,000万円(特例9,000万円) | 交付決定から14か月 |
枠ごとの詳細を整理した解説記事によると、対象経費は機械装置・システム構築費が共通で、建物費は新事業進出枠とグローバル枠のみ対象です。
既存工場でのリフト・塗装ブース入れ替え程度なら、革新的新製品・サービス枠が候補になります。板金塗装への事業転換など、新しいサービスへの参入を伴う投資なら新事業進出枠のほうが上限額に余裕があります。同じ制度を運送業で解説したものづくり補助金は運送業も対象|使える設備3分野と車両の線引きでも、枠の選び方は共通の考え方です。
投資750万円〜1,400万円の補助額シミュレーション
想定される設備投資額に補助率を掛け合わせれば、実質負担額をおおまかに試算できます。規模の近いモデルケースでイメージをつかんでください。
| 想定投資額 | 主な設備例 | 補助率1/2の補助額 | 特例2/3の補助額 |
|---|---|---|---|
| 750万円 | アライメントテスター+タイヤチェンジャー | 375万円 | 500万円 |
| 500万円 | 塗装ブースまたは洗車機単体 | 250万円 | 333万円 |
| 1,400万円 | 大型塗装ブース一式 | 700万円 | 933万円 |
前出の解説記事が紹介する採択事例でも、これに近い投資額と補助額の組み合わせが確認できます。契約額に補助率を掛け合わせるだけで、実質負担額を試算できる点は他制度と共通です。試算の考え方はAI導入補助金はいくらもらえる?3つの枠の上限額と計算例も参考にしてください。
投資額が大きいほど実質負担額も大きくなるため、まず自社の設備で優先順位をつけてから見積もりを取るのが試算の近道です。複数設備をまとめて申請すると、1件あたりの手続き負担を減らせる利点もあります。
資本金5,000万円・従業員100人以下|整備業の中小企業者ライン
自動車整備業(サービス業)の中小企業者は、資本金5,000万円以下または従業員100人以下で判定されます。小規模事業者は従業員5人以下が目安です。
| 区分 | 資本金の額 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 中小企業者(サービス業) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小規模事業者(サービス業) | — | 5人以下 |
応募時点で常時使用する従業員が1人以上いることが前提条件で、従業員0名の個人事業主は全ての申請枠で対象外です。一人で開業した整備士が単独で申請できない点は見落とされがちです。
具体例で考えます。資本金1,000万円・従業員8名の整備工場を想定すると、どちらの基準も満たすため中小企業者に区分されます。従業員が5人を超えているため、小規模事業者向けの優遇は対象外になる点も併せて確認してください。従業員5人以下の整備工場が使える看板・HP制作費中心の制度は、小規模事業者持続化補助金|自動車整備業の経費3区分と対象外ラインで解説しています。
交付決定前の発注はNG|制度概要から実績報告までの4ステップ
申請から入金までは、制度概要の確認→設備投資計画の策定→GビズID取得→交付決定後の発注の4ステップで進みます。採択後すぐに発注してよいわけではありません。

何から着手すればよいか迷う場合は、まずGビズIDプライムの取得から始めてください。郵送申請なら2〜3週間、マイナンバーカードによるオンライン申請なら最短即日〜1週間で発行されます。
車検の繁忙期(3月・9月)に大型設備を入れ替えると、工場の稼働が止まり受け入れ台数に響きます。閑散期に発注・設置・研修までを終わらせ、繁忙期には運用が安定した状態で臨むのが理想的な逆算です。
交付決定前に発注した経費は、理由を問わず補助対象になりません。私も相談の現場で、採択通知を受けてすぐ設備を発注し、交付決定前だったため対象外と指摘された整備工場を見てきました。申請全体でよくある失敗パターンはAI導入補助金の申請に失敗する5つの原因と対策でも整理しているので、あわせて確認してください。
まとめ: リフト・塗装ブースは対象、汎用工具は対象外という線引きで整理する
ものづくり補助金は、2026年度から新事業進出・ものづくり商業サービス補助金として、自動車整備業の設備投資にも使える制度です。リフト・タイヤチェンジャー・塗装ブース・洗車機・ホイールバランサーが対象になり、日常使う汎用工具や社有車は対象外です。
スキャンツール・診断機は、IT導入補助金では対象外でも、ものづくり補助金では事業計画次第で機械装置として計上できる可能性があります。申請枠は投資規模に応じて3つから選び、交付決定前の発注は理由を問わず対象外になる点に注意してください。対象になるのは、あくまで生産性向上に直結する専用の機械装置。
自社の設備投資がどの枠に合うか、対象経費の切り分けに迷う場合は、無料相談で状況を伝えてください。私たちは2020年3月の創業以来、大阪市東成区を拠点に登録支援事業者として申請支援に携わってきました。
